『ノーカントリー』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・ネタバレ・魅力・トリビアまとめ

『ノーカントリー』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・ネタバレ・魅力・トリビアまとめ Database - Films
ハビエル・バルデム、『ノーカントリー』より

映画『ノーカントリー』を紹介&解説。


映画『ノーカントリー』概要

映画『ノーカントリー』は、コーエン兄弟監督による、アカデミー作品賞を受賞した暴力と運命を描くサスペンススリラー。砂漠で大金を拾った男が冷酷な殺し屋に追われ、保安官も事件を追う中で暴力の連鎖に巻き込まれていく。出演はハビエル・バルデムトミー・リー・ジョーンズジョシュ・ブローリン。原作はコーマック・マッカーシーの同名小説。

作品情報

日本版タイトル:『ノーカントリー』
原題:No Country for Old Men
製作年:2007年
日本公開日:2008年3月15日
ジャンル:クライムサスペンス/サイコスリラー/現代西部劇/ドラマ
製作国:アメリカ
原作:コーマック・マッカーシー『No Country for Old Men』(小説)
上映時間:122分

監督:ジョエル&イーサン・コーエン(コーエン兄弟)
脚本:ジョエル&イーサン・コーエン(コーエン兄弟)
製作:スコット・ルーディン/ジョエル&イーサン・コーエン(コーエン兄弟)
撮影:ロジャー・ディーキンス
編集:ロデリック・ジェインズ
作曲:カーター・バーウェル
出演:トミー・リー・ジョーンズ/ハビエル・バルデム/ジョシュ・ブローリンウディ・ハレルソン/ケリー・マクドナルド/ギャレット・ディラハント
製作:ミラマックス・フィルムズ/マイク・ゾス・プロダクションズ/スコット・ルーディン・プロダクションズ
配給:ミラマックス・フィルムズ/パラマウント・ヴァンテージ

あらすじ

1980年の米テキサス。狩りの最中の男は、麻薬取引の末に残された死体と大金を発見する。危険を承知で金を持ち去ったことから、冷酷な殺し屋と事件を追う老保安官の視線が交錯する。逃走を重ねる男は、荒廃した時代の気配のなかで、抗えない暴力と運命の渦にのみ込まれていく。

主な登場人物(キャスト)

エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ):テキサスで起きた凄惨な事件を追う保安官。急速に激化していく暴力と向き合いながら、変わりゆく時代への戸惑いもにじませる、本作の精神的な軸となる人物。

アントン・シガー(ハビエル・バルデム):大金の行方を追う冷酷な殺し屋。標的を執拗に追跡する不気味な存在で、作品全体の緊張感と暴力性を象徴する。

ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン):狩りの最中に麻薬取引の跡地と大金を見つけ、それを持ち去ったことから事件の中心に巻き込まれていく男。ベトナム戦争帰還兵であり、逃走のなかで過酷な状況に追い込まれていく。

カーソン・ウェルズ(ウディ・ハレルソン):大金を追って事件に関与する賞金稼ぎ。ルウェリン・モスに接触し、シガーとは異なる立場から物語に緊張をもたらす。

カーラ・ジーン・モス(ケリー・マクドナルド):ルウェリン・モスの妻。自ら事件を引き起こすわけではないが、夫が持ち去った大金をめぐる騒動によって危険に巻き込まれていく重要人物。

ウェンデル(ギャレット・ディラハント):エド・トム・ベル保安官を支えながら、ともに事件を追う部下。前面に立つ人物ではないものの、捜査パートを支える存在として登場する。

主な受賞&ノミネート歴

第80回アカデミー賞(Oscars)

作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞を受賞、撮影賞、編集賞、音響編集賞、録音賞にノミネート。

第65回ゴールデングローブ賞

脚本賞、助演男優賞を受賞、作品賞(ドラマ部門)、監督賞にノミネート。

第61回英国アカデミー賞(BAFTA)

監督賞、助演男優賞、撮影賞を受賞、作品賞、脚色賞、編集賞、音響賞、助演男優賞、助演女優賞にノミネート。

第60回カンヌ国際映画祭

コンペティション部門出品。パルムドールにノミネート。

ニューヨーク映画批評家協会賞(2007)

作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞を受賞。

ナショナル・ボード・オブ・レビュー(NBR)(2007)

作品賞、脚色賞、アンサンブル賞を受賞。

第32回日本アカデミー賞

優秀外国作品賞にノミネート。

内容(ネタバレ)

1980年、テキサスで始まる事件

物語の舞台は1980年の西テキサスである。冒頭では、保安官のエド・トム・ベルが、時代の変化と暴力の質の変貌に戸惑う心境をにじませる一方、殺し屋アントン・シガーが逮捕直後に逃走し、その異様な危険性が早々に示される。

ルウェリン・モスが大金を見つける

一方、狩りに出ていたルウェリン・モスは、砂漠で麻薬取引の失敗現場に遭遇する。そこには複数の死体、ヘロインを積んだ車両、そして200万ドルの入ったケースが残されていた。モスはその金を持ち帰るが、この判断が暴力の連鎖の出発点となる。

“持ち帰ったこと”で追跡が始まる

モスは一度その場を離れるものの、夜になって負傷者へ水を届けようと現場へ戻る。しかし、その行動によって自分の存在を気づかれ、武装した男たちに追われることになる。彼は辛うじて逃げ延びるが、事態の深刻さを悟り、妻カーラ・ジーンを実家へ避難させる。

シガーとベル、二つの追跡線

その後、モスが持ち去った金を回収するためにシガーが動き始め、同時にベル保安官も麻薬取引現場の捜査に乗り出す。以降の物語は、金を持って逃げるモス、冷酷に追うシガー、そして事態を止めようとするベルという、三者の緊張関係を軸に進んでいく。

中盤にかけて強まる緊張

中盤までには、モスが逃走を続けるなかで追跡はさらに激化し、シガーの執拗さと非情さがはっきりしてくる。ベルは捜査を続けながらも、目の前で広がる暴力のあり方に時代の断絶を見るようになり、本作は単なる追跡劇にとどまらず、暴力、運命、老いをめぐる物語として深みを帯びていく。

モスの逃走とホテルでの攻防

逃走を続けるルウェリン・モスは、金の入ったケースに発信機が仕込まれていたことから居場所を突き止められ、宿泊先のホテルでアントン・シガーの襲撃を受ける。モスも応戦し、両者は銃撃戦の末に負傷するが、モスは現場を離れて逃げ延びる。

カーソン・ウェルズの介入

賞金稼ぎのカーソン・ウェルズは、負傷したモスに接触して協力を持ちかけるが、モスはそれを受け入れない。その後、ウェルズはシガーに先回りされ、モスの居場所を聞き出そうとするシガーによって殺害される。シガーはさらに、モス本人にも電話で接触する。

モスの最期は画面の外で訪れる

モスは国境近くまで移動するが、最終的にはシガーではなく、金を追っていた別のメキシコ人グループに見つかる。そしてモスは、観客の目の前でではなく、画面の外で殺されたことが示される。ベル保安官が現場に到着した時には、すでにモスは死亡しており、この唐突さが作品の大きな特徴のひとつになっている。

シガーは金を回収する

モスの死後、シガーはカーラ・ジーンのもとを訪れる前に、モスが隠していた金を回収する。金のありかはホテルの通気ダクトに隠されており、シガーはそこからケースを取り戻す。追跡劇の発端となった大金は、ここで再びシガーの手に戻る。

カーラ・ジーンとの対峙

その後シガーは、以前モスに告げていた言葉どおり、妻のカーラ・ジーンの前に現れる。彼はいつものようにコイン投げに従うよう促すが、カーラ・ジーンはそれを拒み、選択の責任はコインではなくシガー自身にあると返す。場面は直接的な描写を避けて終わるが、その直後の演出から、シガーが彼女を殺したことが強く示唆される。

シガーもまた偶然から逃れられない

カーラ・ジーンの家を去ったシガーは、交差点で交通事故に巻き込まれ、腕に重傷を負う。それでも彼は現場に居合わせた少年たちを金で黙らせ、その場から立ち去る。人の運命を冷酷に左右してきたシガー自身も、最後には偶然の暴力に襲われる形となる。

ベル保安官の引退と最後の夢

ベル保安官は一連の事件の後、自分が向き合っている暴力の世界に限界を感じ、保安官職を退く。そしてラストでは、父に関する二つの夢を妻ロレッタに語る。最後の夢では、雪山の向こうで父が先に進み、自分のために火を用意して待っているという情景が語られ、本作はその静かな余韻の中で幕を閉じる。

作品トリビア

2024年にアメリカ議会図書館の“National Film Registry”入りを果たした

本作は2024年、米国議会図書館のNational Film Registryに選出された。選定理由は、同機関が毎年用いる基準どおり、“cultural, historic or aesthetic importance(文化的・歴史的・美的に重要)”と認められたためである。公開から十数年を経て、アメリカ映画史の保存対象になった点は大きなトピックといえる。

ほぼ“音楽で煽らない”設計が、逆に緊張感を高めている

本作は、一般的なスリラーのように非劇伴的な音楽で感情を強く誘導する作りではないことで知られる。The New York Timesは、音と沈黙の使い方に注目し、作品の緊張感が静けさそのものから立ち上がっていると紹介している。さらにカーター・バーウェルも、当初は抽象的な音を試したが、結果的に静けさが生む緊張を壊してしまうと判断した旨が後年の検証で伝えられている。

ジョシュ・ブローリンのオーディション映像作りに、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが協力した

ジョシュ・ブローリンは当初の第一候補ではなかったが、役を強く望み、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスの協力を得てオーディション映像を制作したことが知られている。結果として彼はルウェリン・モス役を獲得しており、キャスティングの裏話として非常に有名である。

ハビエル・バルデムは一時、出演が危ぶまれていた

ハビエル・バルデムはスケジュールの都合で降板寸前だった時期があり、代役候補としてマーク・ストロングが待機していたとされる。最終的にスケジュール問題が解消し、バルデムがそのままアントン・シガーを演じた。いまや作品の象徴的存在だけに、かなり興味深い制作裏話である。

“あの髪型”は、本人にとっても衝撃的だった

アントン・シガーの強烈な髪型は本作の象徴のひとつだが、ハビエル・バルデム自身も後年までたびたびその話題に触れている。アカデミー賞の受賞スピーチでは、コーエン兄弟に感謝を述べつつ、“史上最もひどい髪型のひとつ”とユーモアを交えて振り返っている。キャラクター造形が、演技だけでなく外見設計でも強く印象づけられていたことがわかる。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の撮影が、本作の撮影に影響したことで知られる

制作時、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も同時期にテキサス州マーファ周辺で撮影されており、その油井炎上シーンの準備で出た煙のために、本作は丸1日の撮影を断念したことで知られる。このエピソードは映画ファンの間でも有名な“偶然の交差”として語られている。

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む