映画『ジェロニモ 愛と灼熱のリズム』(2014)を紹介&解説。
映画『ジェロニモ 愛と灼熱のリズム』概要
映画『ジェロニモ 愛と灼熱のリズム』は、トニー・ガトリフ監督(『ガッジョ・ディーロ』『愛より強い旅』)が、南フランスの街を舞台に、異なるコミュニティに属する若い男女の恋と、それによって激化する二つの集団の対立を描くドラマ。強制された結婚から逃げ出したトルコ系の少女ニルが、ロマの恋人ラッキーのもとへ向かったことで双方の家族の争いが勃発し、若者たちを支える教育者ジェロニモが事態を収めようと奔走する。出演はセリーヌ・サレット、ラシッド・ユセフ、ダヴィッド・ミュルジア、ナイリア・アルズーンら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ジェロニモ 愛と灼熱のリズム』 |
|---|---|
| 原題 | Geronimo |
| 製作年 | 2014年 |
| 本国公開日 | 2014年10月15日 |
| 日本公開日 | 2014年6月29日(フランス映画祭2014上映) |
| ジャンル | ドラマ/音楽 |
| 製作国 | フランス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 104分 |
| 監督・脚本 | トニー・ガトリフ |
|---|---|
| 製作 | トニー・ガトリフ/デルフィーヌ・マントゥーレ |
| 撮影 | パトリック・ギリンゲッリ |
| 編集 | モニック・ダルトンヌ |
| 作曲 | デルフィーヌ・マントゥーレ/ヴァレンティン・ダマニ |
| 出演 | セリーヌ・サレット/ラシッド・ユセフ/ダヴィッド・ミュルジア/ナイリア・アルズーン/ヴァンサン・エネーヌ/アドリアン・ルイス/アクセル・ユストゥン/ティム・セイフィ |
| 製作 | Princes Production/Rhône-Alpes Cinéma/Princes Films |
| 配給 | Les Films du Losange(フランス) |
あらすじ
夏の南フランス。若者たちの社会教育に携わるジェロニモは、サン・ピエール地区で異なるコミュニティの間に生じる緊張を和らげようと奔走していた。
そんな中、トルコ系の少女ニルが家族から決められた結婚を拒み、愛するロマの青年ラッキーのもとへ逃げ出す。ふたりの行動をきっかけに双方の家族や仲間たちの対立は一気に激化。争いはやがて音楽やダンスによる激しいバトルを伴う衝突へと発展していく。
ジェロニモは若者たちの間に入り、憎しみの連鎖を食い止めようとする。
主な登場人物(キャスト)
ジェロニモ(セリーヌ・サレット):サン・ピエール地区で若者たちを支援する社会教育者。対立する若者たちの間に入り、暴力的な衝突を防ごうと奔走する。
ファジル(ラシッド・ユセフ):ニルの兄。家族の名誉を傷つけたと考え、妹とラッキーの関係を強く拒絶する。
ラッキー(ダヴィッド・ミュルジア):ロマの若者。トルコ系の少女ニルと愛し合い、彼女が強制された結婚から逃げ出したことで二つのコミュニティの対立の中心に置かれる。
ニル(ナイリア・アルズーン):トルコ系の少女。家族から決められた結婚を拒否してラッキーのもとへ逃げ、両者の衝突を引き起こすことになる。
作品の魅力解説
現代の南フランスに置き換えられた「ロミオとジュリエット」
物語の核となるのは、異なるコミュニティに属するニルとラッキーの恋。家族から認められない恋によって双方の集団の敵意が表面化していく構図は、『ロミオとジュリエット』や『ウエスト・サイド物語』を思わせる古典的な悲恋の構造を持っている。
一方で舞台となるのは現代の南フランス。移民やロマなど複数の文化が共存する地域社会を背景に置くことで、古典的な物語を現代ヨーロッパのアイデンティティや共同体の問題へと接続している。
対立そのものを表現する音楽とダンス
トニー・ガトリフ作品らしく、本作でも音楽や身体表現は単なる装飾ではない。
若者たちの対立は、言葉による口論や暴力だけでなく、ヒップホップやフラメンコなどを取り込んだダンスや音楽の「バトル」として噴き出していく。異なる文化を背負った人々が身体とリズムを使って互いを挑発し、感情をぶつけ合う場面が、作品独自のエネルギーを生み出している。
争う若者たちではなく、その間に立つジェロニモの視点
物語の主人公として設定されているのは恋人たちではなく、彼らを取り巻く若者を支援するジェロニモ。
どちらか一方の集団に所属するのではなく、双方の間を動き続ける彼女を中心にすることで、本作は単純な善悪の対立ではなく、憎しみが集団の中で増幅されていく状況と、それでも対話を諦めない人間を描いていく。
