映画『アントマン』(2015)を紹介&解説。
映画『アントマン』概要
映画『アントマン』は、身長約1.5センチまで小さくなれる特殊スーツを託された元泥棒スコット・ラングの活躍を描くヒーロー・アクション。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第12作で、フェーズ2の最終作に当たる。監督はペイトン・リード。主演のポール・ラッドをはじめ、マイケル・ダグラス、エヴァンジェリン・リリー、コリー・ストール、マイケル・ペーニャらが出演する。
作品情報
| 日本版タイトル | 『アントマン』 |
|---|---|
| 英題 | Ant-Man |
| 製作年 | 2015年 |
| 本国公開日 | 2015年7月17日 |
| 日本公開日 | 2015年9月19日 |
| ジャンル | アクション/スーパーヒーロー/SF/コメディ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | マーベル・コミック |
| 上映時間 | 117分 |
| 監督 | ペイトン・リード |
|---|---|
| 脚本 | エドガー・ライト/ジョー・コーニッシュ/アダム・マッケイ/ポール・ラッド |
| 原案 | エドガー・ライト/ジョー・コーニッシュ |
| 製作 | ケヴィン・ファイギ |
| 製作総指揮 | アラン・ファイン/ヴィクトリア・アロンソ/ルイス・デスポジート/マイケル・グリロ/スタン・リー/エドガー・ライト |
| 撮影 | ラッセル・カーペンター |
| 編集 | ダン・レーベンタール/コルビー・パーカー・Jr. |
| 作曲 | クリストフ・ベック |
| 出演 | ポール・ラッド/エヴァンジェリン・リリー/マイケル・ダグラス/コリー・ストール/ボビー・カナヴェイル/マイケル・ペーニャ/ティップ・“T.I.”・ハリス/デヴィッド・ダストマルチャン/ジュディ・グリア/アビー・ライダー・フォートソン |
| 製作 | マーベル・スタジオ |
| 配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ |
あらすじ
窃盗罪による服役を終えたスコット・ラングは、最愛の娘キャシーとの関係を取り戻すため、犯罪から離れて人生をやり直そうとしていた。しかし、前科のため仕事は長続きせず、養育費も支払えない苦しい状況に追い込まれてしまう。
再び盗みに手を出したスコットは、侵入した屋敷で奇妙なスーツを発見する。それは天才科学者ハンク・ピムが開発した、装着者の身体を約1.5センチまで縮小させるアントマン・スーツだった。ハンクに才能を見込まれたスコットは、彼の娘ホープによる訓練を受け、縮小技術を兵器として利用しようとするダレン・クロスの計画を阻止する任務に挑む。
主な登場人物(キャスト)
スコット・ラング/アントマン(ポール・ラッド):窃盗罪で服役していた過去を持つ元電気技師。最愛の娘キャシーに胸を張れる父親になるため、ハンクからアントマン・スーツを引き継ぎ、危険な任務に挑む。
ハンク・ピム(マイケル・ダグラス):物質の大きさと質量を変化させる「ピム粒子」を発見し、初代アントマンとして活動していた天才科学者。技術の悪用を防ぐためスコットを後継者に選ぶ。
ホープ・ヴァン・ダイン(エヴァンジェリン・リリー):ハンク・ピムの娘で、格闘と科学の両面に優れた人物。父親との間に確執を抱えながら、スコットにアントマンとしての戦い方を指導する。
ダレン・クロス/イエロージャケット(コリー・ストール):ハンクの元弟子で、現在はピム・テックを率いる実業家。縮小技術の再現に成功し、それを軍事兵器として売却しようとする。
ルイス(マイケル・ペーニャ):スコットの刑務所時代からの友人。話が長く脱線しやすい陽気な性格だが、仲間のデイヴ、カートとともに作戦を支える。
キャシー・ラング(アビー・ライダー・フォートソン):スコットの幼い娘。離れて暮らす父親を変わらず慕っており、スコットが人生を立て直そうとする最大の原動力となる。
作品の魅力解説
小さいからこそ成立する唯一無二のアクション
アントマンは身体が小さくなっても人間大の状態に近い力を保つため、相手から見えにくいサイズで強烈な攻撃を加えられる。縮小と復元を瞬時に切り替え、敵の攻撃をかわしながら懐へ入り込む戦闘スタイルは、ほかのMCUヒーローにはない個性を持つ。
浴槽、レコード盤、玩具、子ども部屋といった日常的な場所や物が、縮小したスコットの視点では巨大な戦場へ変わる。本人たちにとっては命懸けの激闘でありながら、通常の大きさから見ると小規模な出来事にすぎないという視点の落差も、アクションと笑いの両方に生かされている。
ヒーロー映画と強盗映画を組み合わせた構成
本作の目的は、圧倒的な敵との正面衝突ではなく、厳重に守られた施設へ侵入し、危険な技術を盗み出すことにある。スコットの窃盗技術、ハンクの科学知識、ホープの戦闘能力、ルイスたちの役割を組み合わせて計画を実行するため、強盗映画らしい準備と作戦遂行の面白さがある。
アントマンの縮小能力も、鍵穴や配管を通り抜け、監視の目を避ける潜入能力として機能する。ヒーローの特殊能力と物語のジャンルが無理なく結びついている点が大きな特徴である。
個性的な脇役が支えるコメディ
ポール・ラッドの親しみやすい演技に加え、マイケル・ペーニャ演じるルイスの長い説明、デヴィッド・ダストマルチャン演じるカートの独特な言動など、スコットを取り巻く仲間たちが軽快な笑いを生み出す。
宇宙規模の危機を描いた作品が続くMCUの中で、失業中の父親と気のよい仲間たちによる作戦へ焦点を絞っているため、シリーズに詳しくない観客でも入り込みやすい。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と並び、コメディ色の強いMCU作品として気軽に楽しめる。
娘のためにやり直す“等身大の父親”
スコットが戦う最大の理由は、世界的な名声や使命ではなく、娘キャシーとの関係を取り戻すことである。能力を手に入れても無鉄砲で失敗が多く、完璧な英雄とは言い難いが、娘のためなら危険へ飛び込めるがむしゃらな父親として描かれる。
ハンクとホープの間にも別の父娘関係が配置されており、二組の家族が抱える後悔と再出発が物語の感情的な軸となる。Rotten Tomatoesでは批評家スコア83%を記録。小さなスケールを逆手に取ったアクション、ユーモア、ポール・ラッドの魅力が評価された、ハートフルなヒーロー映画である。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:娘のために更生したい元泥棒
元泥棒のスコット・ラングは、服役を終えて出所する。しかし仕事は長続きせず、別れた妻マギーからも「養育費を払い、生活を立て直すまでは娘キャシーに会わせられない」と告げられる。愛する娘の父親でありたいスコットは更生を望むが、追い詰められて仲間と再び盗みに入り、謎のスーツを手に入れてしまう。
そのスーツは、身体をアリほどの大きさに縮小できる「アントマン・スーツ」だった。開発者ハンク・ピムは、実はスコットの侵入を仕組んで彼の資質を試していた。
承①:二代目アントマンになるための訓練
ハンクの元弟子ダレン・クロスは、縮小技術を兵器「イエロージャケット」として完成させようとしていた。ハンクはそれを阻止するため、優秀な泥棒であるスコットを二代目アントマンに選ぶ。
ハンクの娘ホープは、頼りなく見えるスコットではなく自分が戦うべきだと反発する。彼女はまた、母ジャネットの死について何も語ろうとしない父にも怒りを抱えていた。やがてハンクは、初代ワスプだったジャネットが任務中に原子より小さくなり、量子世界から戻れなくなったことを告白する。母を失った痛みを共有したことで、長くすれ違っていた父娘はようやく和解する。
承②:イエロージャケットをめぐる潜入作戦
スコットは過酷な訓練を重ね、身体の縮小やアリたちを操る方法を身につける。娘に誇れる父親になるため、ハンクやホープ、かつての泥棒仲間とともに、イエロージャケットを破壊する計画を実行する。
しかしダレンには計画を見抜かれており、ハンクは撃たれ、研究施設は大混乱に陥る。スコットを運んできた羽アリのアントニーも撃ち殺され、スコットは小さな相棒を失ってしまう。
転:キャシーを救うため量子世界へ
イエロージャケットを身につけたダレンは逃走し、スコットの娘キャシーを人質に取る。スコットはキャシーの部屋でダレンと激突するが、通常の攻撃では強力なスーツを破壊できない。
娘を救うため、スコットは帰還不能になる可能性を承知で身体を限界以上に縮小し、敵のスーツ内部へ侵入する。装置を破壊してダレンを倒すものの、自身も原子より小さくなり、量子世界へ落ちていく。
結:娘のもとへ帰還したヒーロー
キャシーの声を頼りに機転を利かせたスコットは、奇跡的に量子世界から帰還する。無事に戻った父をキャシーは抱きしめ、マギーとその婚約者パクストンもスコットを家族の一員として認める。スコットはようやく、娘のそばにいられる父親となった。
一方、スコットが量子世界から生還した事実を知ったハンクは、消えた妻ジャネットも生きているかもしれないと希望を抱く。ホープにも新たなワスプ・スーツが託され、物語はアントマンとワスプの次なる活躍へつながっていく。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
