映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』(2021)を紹介&解説。
映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』概要
映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、ヨハネス・ロバーツ監督(『海底47m』)が、カプコンの人気サバイバルホラーゲーム『バイオハザード』シリーズを新たに実写映画化したホラーアクション。ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の旧実写映画シリーズとは異なる世界観で、原作ゲーム第1作と第2作の物語を再構成したリブート作品となっている。
1998年のラクーンシティを舞台に、巨大製薬企業アンブレラ社の秘密と、謎の感染症によって崩壊していく街でのサバイバルを描く。主演はカヤ・スコデラーリオ。共演にロビー・アメル、ハナ・ジョン=カーメン、アヴァン・ジョーギア、トム・ホッパー、ドナル・ローグ、ニール・マクドノーら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』 |
|---|---|
| 原題 | Resident Evil: Welcome to Raccoon City |
| 製作年 | 2021年 |
| 本国公開日 | 2021年11月24日(アメリカ) |
| 日本公開日 | 2022年1月28日 |
| ジャンル | ホラー/アクション |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | カプコン『バイオハザード』シリーズ(ゲーム) |
| 上映時間 | 107分 |
| 監督・脚本 | ヨハネス・ロバーツ |
|---|---|
| 製作 | ロバート・クルツァー/ジェームズ・ハリス/ハートリー・ゴーレンスタイン |
| 製作総指揮 | ポール・W・S・アンダーソン/ジェレミー・ボルト/ヴィクター・ハディダ/マルティン・モスコヴィッツ |
| 撮影 | マキシム・アレクサンドル |
| 編集 | デヴ・シン |
| 作曲 | マーク・コーヴェン |
| 出演 | カヤ・スコデラーリオ/ロビー・アメル/ハナ・ジョン=カーメン/アヴァン・ジョーギア/トム・ホッパー/ドナル・ローグ/ニール・マクドノー/マリナ・マゼーパ/ホリー・デ・バロス/リリー・ガオ |
| 製作 | コンスタンティン・フィルム・インターナショナル/デイヴィス・ラクーン・フィルムズ |
| 配給 | スクリーン・ジェムズ(アメリカ)/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(日本) |
あらすじ
1998年、アメリカ中西部のラクーンシティ。かつて巨大製薬企業アンブレラ社の拠点として栄えた街は、企業の撤退によって衰退していた。
この街の孤児院で育ったクレア・レッドフィールドは、アンブレラ社による危険な研究と街の異変を告発する情報を受け取り、故郷へと戻ってくる。しかし、警察官となった兄クリスは彼女の警告を信じようとしない。
そんななか、街の住民たちが次々と異常な姿に変貌し、人々を襲い始める。特殊部隊S.T.A.R.S.のクリスやジルは郊外の洋館へ、クレアと新人警官レオンはラクーン市警へと向かい、それぞれが恐ろしい事態に巻き込まれていく。
やがて明らかになるアンブレラ社の秘密。街が壊滅へと向かうなか、生存者たちは絶望的な一夜を生き延びるために戦う。
主な登場人物(キャスト)
クレア・レッドフィールド(カヤ・スコデラーリオ):ラクーンシティの孤児院出身の女性。幼少期からアンブレラ社に不信感を抱いており、街に迫る危険を知って帰郷する。兄クリスとの関係は疎遠になっているが、彼を救おうとする強い意志を持つ。
クリス・レッドフィールド(ロビー・アメル):クレアの兄で、ラクーン市警の特殊部隊S.T.A.R.S.に所属する警察官。アンブレラ社の研究者バーキンを信頼しており、妹の警告には懐疑的。任務で訪れたスペンサー邸で恐ろしい事件に遭遇する。
ジル・バレンタイン(ハナ・ジョン=カーメン):S.T.A.R.S.に所属する女性警察官。優れた射撃技術と大胆な行動力を持つ。クリスやウェスカーと親しい関係にあり、スペンサー邸の捜索任務に参加する。
レオン・S・ケネディ(アヴァン・ジョーギア):ラクーン市警に配属されたばかりの新人警察官。経験不足で頼りない面も目立つが、街が崩壊していくなか、クレアと協力して生き残ろうとする。
アルバート・ウェスカー(トム・ホッパー):S.T.A.R.S.に所属する警察官。仲間たちと親しく接する一方、ある組織から極秘の依頼を受けており、アンブレラ社の研究施設へ向かう別の目的を隠している。
ウィリアム・バーキン(ニール・マクドノー):アンブレラ社に所属する研究者。孤児院で育ったクリスとも関わりが深く、妻アネットと娘シェリーを持つ。人体実験やウイルス研究に関わっている重要人物。
ブライアン・アイアンズ(ドナル・ローグ):ラクーン市警の署長。街に異変が起きると脱出を試みるが、アンブレラ社による封鎖に阻まれる。その後、クレアやレオンと行動をともにする。
リサ・トレヴァー(マリナ・マゼーパ):アンブレラ社による人体実験の犠牲となった女性。実験によって異形の姿に変貌しており、クレアとは幼少期からの因縁がある。
シェリー・バーキン(ホリー・デ・バロス):ウィリアム・バーキンとアネットの娘。アンブレラ社の研究に関わる父親と暮らしていたが、街の異変によって危険な事態に巻き込まれていく。
エイダ・ウォン(リリー・ガオ):ウェスカーの極秘任務に関係する謎の女性。物語のミッドクレジットシーンに登場する。
作品の魅力解説・レビュー
原作ゲームの世界に入り込むような、陰鬱なホラー演出
『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の最大の特徴は、これまでの実写映画シリーズとは異なり、原作ゲームの恐怖や雰囲気の再現を重視していることだ。
ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリスを主人公にした旧シリーズが、派手なアクションと超人的な戦闘を中心に展開したのに対し、本作が目指すのは、暗闇に潜む脅威を警戒しながら探索するサバイバルホラーの感覚だ。
雨に沈むラクーンシティ、不気味な静けさが漂うスペンサー邸、薄暗いラクーン市警の警察署。いずれも原作ゲームを知る観客なら見覚えのある風景であり、映像全体に陰鬱な空気が漂っている。
特に美術面での原作再現へのこだわりは強い。ヨハネス・ロバーツ監督は、ゲームを手掛けたカプコンからスペンサー邸や警察署の設計資料を入手して制作に活用しており、建物の構造や内装に至るまでゲームの世界観を意識している。
ゾンビ犬やリッカーといったクリーチャーはもちろん、原作ファンが反応できる小ネタも随所に盛り込まれている。
原作の風景をただ背景として利用するだけでなく、「ゲームの中を歩き回っているような感覚」を映画で味わわせようとする姿勢は、実写版『バイオハザード』の中でも本作ならではの魅力といえる。
『1』と『2』の融合が生んだ、駆け足なストーリー
一方、本作が抱える大きな問題は、原作ゲーム2作品の物語を107分の映画にまとめてしまったことだろう。
第1作のスペンサー邸事件と、第2作のラクーンシティでの事件を一夜の出来事として再構成した結果、クリス、ジル、レオン、クレアという主人公級のキャラクターが一度に登場する。
さらに、ウェスカーやバーキン、リサ・トレヴァーなど、原作ではそれぞれに重要な背景を持つ人物たちまで登場するため、限られた上映時間の中で全員を十分に掘り下げることは難しい。
各キャラクターの関係性や行動の動機が駆け足で説明される場面もあり、ゲームを知っている観客なら補完できる部分でも、映画単体では人物像や感情の変化が伝わりにくくなっている。
実際、海外の批評でも、原作への敬意や雰囲気の再現を評価する一方で、登場人物と物語を詰め込みすぎた構成や、急ぎ足の展開を問題視する意見が見られた。
原作の人気要素をできるだけ多く盛り込もうとした結果、それぞれの物語が持っていた緊張感やドラマを十分に育てられなかったことは惜しい。
アリス版とは真逆の方向性が生んだ、映画としての物足りなさ
本作は、原作ゲームへの接近という点では明確な方向性を持っている。しかし、その選択が必ずしも娯楽映画としての面白さにつながっているわけではない。
アリス版の実写シリーズには、原作から大きく離れた展開も多かった反面、ミラ・ジョヴォヴィッチという強烈な主人公の存在感と、大規模なアクション映画としての華やかさがあった。
対して本作は、複数の主人公たちに焦点を分散させ、派手な見せ場よりも恐怖や不穏な雰囲気を重視している。
その結果、ゲームの世界観を再現することには成功していても、映画全体を牽引するスター性や、観客を強く興奮させるクライマックスの盛り上がりは弱くなった印象を受ける。
陰鬱なホラーとしての方向性自体は魅力的だ。しかし、そこに登場人物の掘り下げ不足や展開の慌ただしさが重なることで、恐怖もドラマも十分な余韻を残せない部分がある。
原作ゲームらしい空気を作ることと、一本の映画として観客を楽しませること。その両立の難しさが浮かび上がる作品でもある。
原作への愛情は確か。それでも「惜しい」と感じるリブート
本作を単純な駄作と切り捨てるのは、少し違うように思う。
スペンサー邸や警察署の再現、懐かしいクリーチャーたち、ゲームへの数々のオマージュには、制作陣の強い原作愛が感じられる。原作への回帰という基本的な方向性も、実写シリーズの新たな可能性を探るうえで意義のあるものだった。
しかし、原作に近づけることと、優れた映画に仕上げることは別の問題だ。
Rotten Tomatoesでは批評家スコア30%に対し、認証済み観客スコアは65%と、評価に大きな差が見られる。批評家からは脚本や構成への厳しい評価が集まる一方、原作ゲームへの敬意や世界観の再現を支持する観客も存在する。
ゲームの世界を忠実に映像化しようとした意欲は認めたい。それだけに、もし第1作と第2作をそれぞれ独立した映画として丁寧に描いていたら、キャラクターの魅力も恐怖演出も、もっと豊かに表現できたのではないだろうか。
原作への愛は十分に伝わるが、その愛情を一本の映画として整理し切れていない。『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、失敗作というよりも、目指した方向性の正しさと完成度の物足りなさが同居する、非常に惜しいリブート作品だ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
【起】孤児院の秘密と、ラクーンシティへの帰還
1980年代、ラクーンシティの孤児院で暮らしていたクレアと兄クリス。クレアは、施設内で人体実験を受けていた異形の少女リサ・トレヴァーと出会い、孤児院を運営するアンブレラ社の不審な活動を知る。その後、クレアは孤児院から逃げ出すが、クリスは街に残り、警察官となっていた。
1998年、アンブレラ社の人体実験やウイルス汚染を疑うクレアは、兄に危険を知らせるためラクーンシティに戻る。しかし、かつて孤児院で世話になった研究者ウィリアム・バーキンを信頼するクリスは、妹の警告をまともに取り合わない。
その頃、街では住民たちが次々と異常な症状を見せ始めていた。
【承①】ゾンビの大量発生と、仲間たちの死
ラクーンシティで感染が拡大するなか、クリスはジル、ウェスカーら特殊部隊S.T.A.R.S.の仲間とともに、消息を絶った警官たちを捜索するためスペンサー邸へ向かう。
しかし、洋館にはゾンビが徘徊しており、隊員のリチャードはゾンビに襲われて食い殺され、ヘリの操縦士ブラッドも感染者に襲撃されて墜落死する。
一方、街に残ったクレアは、新人警官レオンと合流。警察署に収監されていた協力者ベン・ベルトリッチに出会うが、彼も隣の牢から襲ってきたゾンビに首を噛み裂かれ、死亡する。
さらに、警察署長アイアンズは街から逃げ出そうとするものの、アンブレラ社が道路を封鎖しているため失敗。クレアとレオンに合流し、地下通路を求めて孤児院へ向かう。
【承②】ウェスカーの裏切りと、リサとの再会
スペンサー邸では、ウェスカーが金銭と引き換えに、アンブレラ社のウイルス研究を奪おうとしていたことが発覚する。仲間を裏切られたジルはショックを受けるが、ウェスカーは構わず地下研究施設へ向かってしまう。
一方、孤児院に到着したクレアたちは、恐ろしい怪物リッカーに襲われ、アイアンズ署長が殺される。
絶体絶命のレオンを救ったのは、かつてクレアが孤児院で出会ったリサだった。人体実験で異形の姿になりながらも、クレアを覚えていたリサは、二人に地下通路の鍵を渡して協力する。
クレアとレオンは地下研究施設にたどり着き、アンブレラ社が孤児院の子供たちを人体実験に利用していた証拠を発見する。
【転】バーキン一家の悲劇と、兄妹の和解
地下研究施設では、研究成果を持って逃亡しようとするバーキン博士と、その研究を奪おうとするウェスカーが対峙する。
銃撃戦によってバーキンは重傷を負い、妻アネットもウェスカーに射殺される。さらに、娘シェリーに銃を向けたウェスカーを、駆けつけたジルが撃つ。
致命傷を負ったウェスカーは自分の裏切りを悔やみ、街がまもなく破壊されることと、脱出用の地下鉄道が存在することを仲間に伝えて息絶える。
しかし、瀕死のバーキンは自ら開発したG-ウイルスを注射し、怪物へと変貌。クリスに襲いかかるが、駆けつけたクレアが兄を救う。
かつて妹の警告を信じなかったクリスも、アンブレラ社の恐ろしい真実を知り、自分の過ちを謝罪。ようやく兄妹は和解し、ジル、レオン、両親を失ったシェリーと合流する。
【結】ラクーンシティ消滅、そして生存者たち
5人は地下鉄道に乗り込み、アンブレラ社によるラクーンシティの破壊から逃れようとする。
しかし、街の爆破によって列車が停止。さらに、巨大な怪物へと変貌したバーキンが追いつき、クレアたちに襲いかかる。
絶体絶命の瞬間、レオンがロケットランチャーを発射。バーキンを吹き飛ばし、ついに怪物を倒す。
ラクーンシティはアンブレラ社によって完全に破壊され、公式には生存者ゼロと報告される。しかし、クレア、クリス、ジル、レオン、シェリーの5人は生還。崩壊した街を背に、新たな未来へ歩き出す。
そしてミッドクレジットシーンでは、死んだはずのウェスカーが謎の女性エイダ・ウォンによって蘇生される。彼女からサングラスを渡されたウェスカーの姿を映し、物語は幕を閉じる。
