映画『Minotaur(原題)』(2026)を紹介&解説。
映画『Minotaur(原題)』概要
映画『Minotaur(原題)』(ミノタウロス)は、『父、帰る』『裁かれるは善人のみ』『ラブレス』などで知られるロシア出身のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督が、2022年のロシアによるウクライナ侵攻と動員を背景に、夫婦関係の崩壊と社会の腐敗を重ねて描くドラマ。地方都市で会社を経営するグレブが、妻ガリーナの不倫疑惑と、従業員を戦争へ送り出すための選別という重圧に直面し、制御していた人生を暴力的に崩していく。第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、グランプリを受賞した。
作品情報
日本版タイトル:『Minotaur(原題)』
原題:Minotaur
製作年:2026年
ワールドプレミア:2026年5月19日(第79回カンヌ国際映画祭)
本国公開日:2026年10月14日(フランス)
日本公開日:未定(2026年5月時点)
ジャンル:ドラマ
製作国:フランス/ラトビア/ドイツ
原作:無
原案:クロード・シャブロル監督作『不貞の女』(1969)を自由に翻案
上映時間:140分
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
脚本:アンドレイ・ズビャギンツェフ/シモン・リャシェンコ
製作:シャルル・ジリベール/ナタナエル・カルミッツ/マルコ・ペレゴ/ヴィンディア・サガル
撮影:ミハイル・クリチマン
美術:アンドレイ・ポンクラトフ/マーシャ・スラヴィナ
作曲:エフゲニー・ガルペリン/サーシャ・ガルペリン
出演:ドミトリー・マズロフ/イリス・レベデワ/ヴァルヴァラ・シュミコワ/ユリス・ジャガルス/アナトリー・ベリー/ウラジーミル・フリードマン/アナスタシア・ミシェンコ/ユーリー・ザヴァルニュク
製作:MKプロダクションズ/CGシネマ/フォルマ・プロ・フィルムズ/レイザー・フィルム・プロダクション/アルテ・フランス・シネマ
配給:レ・フィルム・デュ・ロザンジュ(フランス)/MUBI(一部地域)
あらすじ
2022年、ロシアの地方都市。会社経営者のグレブは、仕事上の危機と不安定化する社会情勢に追い詰められていた。ロシアによるウクライナ侵攻と動員が進む中、彼は自社の従業員を兵士として差し出す重い決断を迫られる。さらに妻ガリーナの不倫疑惑が浮上し、家庭と職場の両方で保ってきた秩序が崩れ始める。やがてグレブの内側に潜んでいた暴力性があらわになり、個人の破綻は戦時下の社会が抱える歪みと重なっていく。
主な登場人物(キャスト)
グレブ(ドミトリー・マズロフ):ロシアの地方都市で会社を経営する男。社会情勢の悪化と職場の危機に直面する中、妻の不倫疑惑にも苦しみ、少しずつ制御を失っていく。
ガリーナ(イリス・レベデワ):グレブの妻。夫との関係に深い亀裂を抱え、家庭内の緊張を象徴する存在として物語の中心に置かれる。
セリョージャ(ボリス・クードリン):グレブとガリーナの息子。
作品の魅力解説
本作の大きな魅力は、夫婦の不信と戦争による社会不安をひとつの物語として結びつけている点にある。クロード・シャブロル監督作『不貞の女』に着想を得ながら、単なる不倫劇にとどまらず、職場、家庭、国家の圧力がひとりの男を追い詰めていく構造へと発展させている。
また、タイトルの“ミノタウロス”は、ギリシャ神話の怪物であると同時に、人間の内側に潜む暴力性や獣性を示す象徴として機能する。グレブが妻への疑念と従業員を戦争へ送り出す責任の間で崩れていく姿は、個人の道徳的な破綻だけでなく、腐敗した社会が人間関係をどのように変質させるのかを映し出す。
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督にとっては、『ラブレス』以来となる長編劇映画であり、ロシア国外で制作された初の作品でもある。冷徹な構図、重厚な心理描写、政治的な主題を直接的なスローガンではなく家族劇の中に織り込む演出によって、戦争と倫理、沈黙と暴力を見つめる作品となっている。
