Netflix実写『ONE PIECE』シーズン2&3制作の裏側|ショーランナーが語る撮影体制とキャスティング哲学

Netflix実写『ONE PIECE』シーズン2 制作の裏側|ショーランナーが語る撮影体制とキャスティング哲学 NEWS
実写版シリーズ『ONE PIECE』シーズン1〜2、Netflixにて独占配信中

Netflix実写『ONE PIECE』シーズン2の成功の裏側と制作の舞台裏をショーランナーが語った。


Netflixの実写ドラマ『ONE PIECE』は、これまで成功例の少なかった「アニメ実写化」において例外的なヒット作となった。2023年のシーズン1配信以降、グローバル規模で高い評価を獲得し、シリーズは拡大を続けている。現在シーズン2が配信され、すでにシーズン3の制作も進行中だ。

その成功の背景には、原作者・尾田栄一郎の関与に加え、制作陣による大規模な制作体制と慎重な物語設計がある。ショーランナーのジョー・トレイスは、米『ザ・ハリウッド・リポーター』のインタビューで、本作がどのようにして巨大な原作を映像化し、シリーズとして成立させているのか、その裏側を明かしている。

壮大な実写版『ONE PIECE』を成立させる制作体制の舞台裏とは

『ONE PIECE』の実写化は、一般的なテレビシリーズとは比較にならない規模で進行している。トレイスはその制作環境について、「『ONE PIECE』はふたりのショーランナーが必要な作品なんだよね」と語る。実際の撮影現場では、南アフリカにおいて2つの撮影ユニットが同時に稼働し、複数のエピソードを並行して制作する体制が取られている。

この方式は単なる効率化ではなく、作品のスケールに対応するための必然でもある。トレイスは「たいていの日は2カ所どころか10カ所に同時に存在しなきゃいけない状況なんだよ」とも述べており、通常の制作フローでは成立し得ない規模であることがうかがえる。

こうした体制は、前任のショーランナーであるマット・オーウェンズとスティーヴン・マエダが築いたものであり、トレイスは「この巨大な作品を作り上げる過程で、本当に多くのことを学んだよ」と振り返る。複数人で舵を取ることを前提とした制作体制こそが、本作をシリーズとして成立させる基盤となっている。

原作改変と“ONE PIECEらしさ”の両立

現在撮影中のシーズン2〜3の構成において最も大きな判断のひとつは、原作の人気エピソードであるアラバスタ編をどこまで描くかだった。全体を8エピソードに収めること自体は可能だったが、その場合、多くの要素を削る必要があったという。

トレイスはその判断について、「確かにできるけど、かなりのものを削らないといけなくなる」と語る。物語を駆け足で進めることも選択肢ではあったが、制作陣はあえてそれを選ばなかった。その理由は、本作の本質が単なるストーリー進行ではなく、キャラクター同士の関係性や“余白”にあると考えたためである。

例えば、仲間たちが他愛もないやり取りを交わす場面や、それぞれが個別に試練に向き合う戦闘シーンは、物語の進行だけを見れば削減可能な要素である。しかしトレイスは、「それをカットしたら——『ONE PIECE』を特別にしているものを失ったら——それはまだ『ONE PIECE』と言えるのかな?」と語り、そうした要素こそが作品の核であると強調する。

この考えに基づき、シーズン2ではアラバスタ編まで一気に描き切るのではなく、“グランドライン編”として再構成された。各エピソードを通して異なる島を巡りながら、麦わらの一味それぞれに焦点を当てることで、物語に時間的な余白と感情的な厚みを持たせている。

また、ビビというキャラクターの存在もこの構成に大きく関わっている。トレイスは彼女について「ものすごい物語を持つキャラクター」と述べ、その内面や背景を丁寧に描く必要性を強調する。短期間で出会った人物のために戦う物語ではなく、観客自身が彼女に感情移入できる構造を優先した形だ。

こうした判断は、単なる“原作再現”ではなく、“原作の精神をどう映像化するか”という問いに対するひとつの答えである。スピードや情報量ではなく、キャラクターと旅の積み重ねを重視する姿勢が、本作の独自性を支えている。

キャスティングに見る哲学とシーズン3への展開

シーズン2では、ジョー・マンガニエロ(Mr. 0/サー・クロコダイル役)やチャリスラ・チャンドラン(ミス・ウェンズデー/ネフェルタリ・ビビ役)、デヴィッド・ダストマルチャン(Mr. 3役)、ケイティ・セイガル(Dr. くれは役)といった知名度の高い俳優陣が新たに参加している。こうしたキャスティングについてトレイスは、「シーズン2の楽しいところは、みんなもうこの作品を知っているということだよ」と語り、作品自体の認知が広がったことによる変化を指摘する。

シーズン1では作品を“売り込む”必要があった一方で、シーズン2では俳優側がすでにファンであるケースも多く、自然な形で参加が実現したという。実際にデヴィッド・ダストマルチャンについては、制作側が当初から起用を望んでいた俳優であり、「彼を念頭に置いてあの脚本を書いていたんだよね」と振り返る。

一方で、本作においては話題性を優先したキャスティング、いわゆる“スタントキャスティング”は意図的に避けられている。トレイスはその方針について、「常に特定の役に最も適した俳優は誰か、それだけを考えている」と明言する。実際、ビビ役のチャリスラ・チャンドランについても、過去の出演作にとらわれずオーディションを通じて選ばれた経緯があり、役柄との適合性が最優先されている。

こうした姿勢はすでにシーズン3にも引き継がれている。ポートガス・D・エース役にショロ・マリデュエニャ、ボン・クレー役にコール・エスコーラが起用されることが発表されており、トレイスはコールについて「ボン・クレーはまさにぴったりの役だよ」と語るなど、キャラクターとの一致に強い手応えを示している。

現在、シーズン3はすでに撮影が進行しており、トレイスは「ほぼキャストは揃っていて、撮影は2ヶ月目に入っているよ」と明かす。シリーズはすでに次の章へと動き出しており、その方向性はシーズン2までに築かれたキャスティングの哲学と地続きにあると言える。

シーズン2の結末が示す“希望”と次なる航路

シーズン2のクライマックスは、物語全体のテーマを象徴する重要な到達点として設計されている。トレイスは、シーズン1のラストに置かれた“樽の誓い”を引き合いに出しながら、シーズン2でも同様に感情的なピークを作る必要があったと語る。

シーズン2ではそれに匹敵するものを作らないといけなかった」と振り返るトレイスが選んだのは、チョッパーとヒルルクの物語を軸とした結末だった。このエピソードの核にあるのは、「不可能なんてない、ということが核心にある」というテーマである。

ヒルルクが生涯をかけて追い求めた“奇跡”は、さくら雪という形で実現し、それは単なる視覚的な演出にとどまらず、登場人物たちの心を動かす象徴的な出来事として描かれる。トレイスはこの瞬間について、壊れたコミュニティに対して“希望のビジョン”を提示するものだったと説明する。

この“希望”は、麦わらの一味にも受け継がれていく。シーズン1の樽の誓いが、仲間としての結束やそれぞれの夢を確認する場であったのに対し、シーズン2のさくら雪は、彼らを再びひとつにし、次なる目的へと導く役割を担っている。すなわち、ビビを救うという新たな使命への出発点である。

また、この印象的なビジュアルについてトレイスは、原作者・尾田栄一郎からの助言として「詩的に考えて」という言葉があったことも明かしている。実写においては、絵のように象徴的な表現をそのまま再現することは難しいが、その“詩的な本質”を捉えることで最適な表現にたどり着いたという。

シーズン2の結末は、単なる物語の区切りではなく、シリーズ全体の方向性を示す重要な節目となっている。そしてその先に続く物語について、トレイスは「語り続けることができるのか、だと思うよ」と語る。作品を愛する制作陣の意志は明確である一方で、その行方は視聴者の支持に委ねられている

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む