イェが反ユダヤ主義的言動を正式謝罪。2025年の躁病エピソードと双極性障害の治療を公表した。
かつてカニエ・ウェストとして知られたイェが、近年の反ユダヤ主義的言動について正式に謝罪した。イェは月曜日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に全面広告を掲載し、自身が2025年に経験した長期の躁病エピソードと、その期間に取った行動について説明。現在は双極性障害の治療を受けていると明かしている。
全面広告で語られた謝罪と「精神病的」行動
広告の中でイェは、昨年にかけて約4か月間続いた躁病エピソードについて振り返り、その期間の自身の振る舞いが「精神病的、妄想的、衝動的な行動で人生を破壊した」ものだったと記した。声明は、イェがこれまでに発した反ユダヤ主義的暴言や、ヒトラー支持発言、鉤十字の受容といった一連の行動に直接言及する内容となっている。
イェは、当時の状態について「現実との接触を失った」ことが原因だったと説明し、「その状態での自分の行動を後悔し、深く恥じている」と述べた。一方で、「それで自分のしたことが許されるわけじゃない」とも書き添え、行為そのものの責任を否定する意図はないと強調している。広告の中ではさらに、「俺はナチスでも反ユダヤ主義者でもない。ユダヤ人を愛しているよ」と明言した。
「人生のどん底」にあった2025年の躁病エピソード
声明の中でイェは、2025年に経験した躁病が、自身の精神状態と判断力に深刻な影響を及ぼしていたことを率直に明かしている。彼は当時を振り返り、「数ヶ月前に人生のどん底に落ちた」と表現し、状況が悪化する中で「もうここにいたくないと思う時もあったよ」と記した。
イェによれば、躁状態の最中には自分が異常な状態にあるという自覚を持つことが難しく、「世界をこれまで以上に明確に見ているような気がするんだけど、実際には完全に正気を失いつつある」感覚に陥っていたという。その状態について彼は、「盲目になるのに、洞察力があると確信してしまう」「自分が強力で、確信に満ち、止められないと感じる」と説明し、結果として「俺は現実との接触を失ったよ」と認めている。
こうした精神状態が続く中で、差別的発言や過激な言動がエスカレートしていったことを、イェ自身が改めて振り返る形となった。
自動車事故と診断の遅れ-双極性障害を受け入れるまで
イェは声明の中で、自身の精神状態の背景として、スーパースターへと駆け上がる直前に遭った自動車事故についても言及している。この事故は約25年前に起きたもので、当時イェは前頭葉に損傷を負ったという。しかし、その影響について長らく適切な診断を受けることができず、双極性障害と正式に診断されたのは2023年だったと説明している。
イェは、この診断を一度は受け入れていたものの、昨年には虚偽だとして拒否していたことも明かした。一方で現在は、再びその診断を受け入れ、自身の行動や精神状態を理解するための手がかりとして向き合っているという。「この障害で最も恐ろしいのは、『助けなんて必要ない』と言われた時、それがどれほど説得力があるかってこと」と広告に記し、病識を持つことの難しさを率直に語っている。
治療に踏み切った背景と「助けを求める」という選択
イェは、双極性障害と向き合う中で、医師や周囲の助けを受けることの重要性を徐々に理解するようになったと述べている。近年、彼は自身の状態について双極性障害ではなく、自閉症の一種を患っていると主張してきたが、現在は医師たちからそう告げられていたのだと説明。脳の疾患に関するRedditフォーラムを読み、専門家の助言を受ける中で、自分が実際に経験している症状を整理していったという。
声明では、躁病について「その時点で病気なんだよ」と表現し、躁状態でない時期との落差についても言及している。「双極性障害を持つことは、絶え間ない精神疾患の状態なんだ」とした上で、症状が表面化していない時こそ判断を誤りやすい危険性があると振り返った。
そうした中で、治療を受ける決断につながったのが、妻の存在だったという。「数ヶ月前に人生のどん底に落ちた時、妻が俺にようやく助けを求めるよう勧めてくれた」と明かし、今回の謝罪と告白が、個人的な再出発の一環であることをにじませている。
過去の謝罪との違い-繰り返されてきた言動の中で
今回の声明は、イェにとって反ユダヤ主義的発言について初めての謝罪ではない。彼は過去にも、ユダヤ人に対して「Death-con 3」に行くと発言したことについて謝罪している。しかしその後、鉤十字が描かれたシャツを販売し、「Heil Hitler」(ヒトラー万歳)というタイトルの楽曲を制作・公開するなど、挑発的とも受け取られる行動を重ねてきた経緯がある。
そうした流れの中で発表された今回の広告は、これまでの謝罪と比べても、分量や内容の踏み込み方において異例のものとなった。イェ自身が、自身の差別的言動を精神疾患の影響として説明しつつも、「それで自分のしたことが許されるわけじゃない」と明確に線を引いた点は、過去の発言には見られなかった特徴だと言える。
一方で、声明がどのように受け止められ、実際の信頼回復につながるかについては、依然として慎重な見方も残る。これまで繰り返されてきた言動の積み重ねを踏まえ、今回の謝罪が転機となるのか、それとも一時的なものに終わるのかは、今後の行動によって判断されることになりそうだ。
「Heil Hitler」を巡る最近の出来事と残る波紋
こうした謝罪が発表される直前、イェの過去の楽曲「Heil Hitler」を巡って、再び批判が集まる出来事も起きていた。先週、米マイアミのナイトクラブで同曲が流され、白人至上主義者として知られるニック・フエンテスや、インフルエンサーのアンドリュー・テイト、トリスタン・テイト兄弟が店内にいたとされる状況下で、一部の客が楽曲のタイトルに合わせて歌い、ナチス式敬礼を行ったと報じられた。
この出来事を受け、ナイトクラブ側の判断や楽曲の扱いを巡って非難の声が広がり、イェの反ユダヤ主義的言動が依然として現実世界に影響を及ぼし続けていることを印象づける結果となった。今回の声明が過去の発言や行動と切り離して評価されにくい背景には、こうした出来事が直近まで続いていた事実もある。
イェ自身は声明の中で、この楽曲や最近の出来事に直接触れてはいないが、過去の言動が現在も波紋を広げている状況は、謝罪の受け止め方に複雑さを与えている。
今回の謝罪声明は、イェが自身の反ユダヤ主義的言動と精神疾患について、これまでで最も踏み込んで説明したものとなった。一方で、その言葉がどのように受け止められ、実際の行動や周囲との関係性にどのような変化をもたらすのかは、今後の動向に委ねられている。
声明は、長らく待たれていたアルバム『Bully』のリリースを控えたタイミングで発表された。Spotifyのリスト情報によれば、同作は金曜日にリリースされる予定とされており、謝罪と音楽活動の再始動がどのように交差していくのかも注目されそうだ。
