【映画レビュー『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』】“家族”であることの強さと脆さ-MCUについに導入された人気作に迫る

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL. REVIEWS
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

1961年のコミック誕生以来、マーベルの中核を担ってきた『ファンタスティック・フォー』。その長い歴史と絶大な人気ゆえに、映像化への挑戦も早くから始まったが、それゆえ同時に数々の失敗作も生み出してきたのも事実だ。度重なる挫折と権利問題という複雑な事情により、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)への参加が長らく実現しなかった4人のヒーローたち。しかし、ついにその時が来た。7月25日(金)日米同時公開の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』で、彼らは満を持してMCUデビューを果たすのである。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』あらすじ

宇宙ミッション中の事故で特殊能力を得た4人のヒーロー・チームは、その力と正義感で人々を救い、“ファンタスティック4”と呼ばれている。

世界中で愛され、強い絆で結ばれた彼ら“家族”には、間もなく“新たな命”も加わろうとしていた。
しかし、チームリーダーで天才科学者リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵”宇宙神ギャラクタス”の脅威が地球に迫る!

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

滅亡へのカウントダウンが進む中、一人の人間としての葛藤を抱えながらも、彼らはヒーローとして立ち向かう。

いま、全人類の運命は、この4人に託された──。

“家族ヒーロー”という新機軸-キャスティングが生むリアリティ

このチームの最大の魅力は、何といっても“家族”という絆にある。これまでのMCU作品でも、ヒーロー同士が家族となるケース(『アントマン』シリーズ)や、ヒーローの家族がヒーロー化するパターン(アイアンマンの妻ペッパー・ポッツなど)は描かれてきた。しかし本作では、4人は物語開始時点ですでに一つ屋根の下で暮らすファミリーであり、チーム内には夫婦関係や姉弟関係といった血縁・婚姻関係が複雑に絡み合っている。この設定は、MCUにおいても確実に新鮮な試みと言えるだろう。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

そして、この“家族ヒーロー”というコンセプトに血の通ったドラマ性を与えているのが、ペドロ・パスカルヴァネッサ・カービージョセフ・クインエボン=モス・バクラックという4人の絶妙なキャスティングである。同月公開の『スーパーマン』と同様、本作もチーム結成の経緯をあえて簡潔に済ませる手法を取っているが、既に結束したファミリーとして始まる序盤のシーンだけで、4人の間に流れる本物の愛情と友情が画面から伝わってくる。家族であり、かけがえのない親友でもある彼らの関係性が、驚くほど自然に描かれているのだ。

ヒーローとしての顔と人間としての顔-葛藤と支え合いの物語

特に印象的なのは、まだスーパーヒーロー的な展開が始まる前の日常パート。アメコミ映画らしい展開が登場する以前の、純粋なヒューマンドラマの部分で見せる4人の演技と、キャスト同士の化学反応だけで、彼らを心から愛おしく感じてしまう。このキャスティングの妙には、心から感謝したいと思う。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』より、ペドロ・パスカル © 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』より、ペドロ・パスカル © 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

各キャストの演技力も特筆すべきものがある。ペドロ・パスカル演じるリードは、天才的な頭脳を持ちながらも解決困難な状況に直面し、戸惑いを見せつつも常に最良の判断を下そうとする姿を通じて、キャラクターの繊細さと知性を見事に表現している。ヴァネッサ・カービーのスーは、チームの精神的支柱としての役割と、現実の母親としての強さを併せ持つ女性像を力強く演じきった。ジョセフ・クイン演じるジョニーは、一見軽やかで飄々とした態度の裏に隠された深い人間性と愛情を、絶妙なバランス感覚で表現している。そしてエボン=モス・バクラックのベンは、限られた表情や仕草、声のトーンの変化だけで、繊細で情感豊かな人物の内面を見事に体現してみせた。

これほどまでに人間的な魅力で観客の心を掴む演技は、率直に言って過去の『ファンタスティック・フォー』映画では実現できていなかった領域である。この4人の家族だからこそ、本作は他にはない特別な作品となり得たのだ。

本作が巧みに描き出すのは、他者のために身を投げ打って戦うヒーロー(英雄)としての顔と、家族や我が子への愛に生きる一人の人間としての顔、この二つの側面である。そしてこの二重性こそが、彼らの内面的な葛藤を生み出す源泉となっている。4人の支え合いも決して一方通行ではない。時にぶつかり合うこともあるが、それぞれが互いの状況を気遣い、支えようとする相互的な関係性が実に美しく描かれている。

“星喰い”ギャラクタスの脅威と、原作へのリスペクト

そこに立ちはだかるのが、星を喰らう者ギャラクタスという、もはや個人の範疇を超えた宇宙規模の脅威だ。家族というミクロな絆と、宇宙レベルのマクロな危機という対比構造により、映画としてのオリジナリティは既に確立されている。だからこそ本編では、奇をてらった演出に走ることなく、王道の「アメコミ映画・ヒーロー映画」として真正面から楽しませてくれるストレートな作りを採用している。この潔さが実に清々しく、観客は純粋に“エンターテイメント”として作品に没頭することができるのだ。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』より、ジョセフ・クイン演じるヒューマントーチ © 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』より、ジョセフ・クイン演じるヒューマントーチ © 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

しかし、このストレートな作りをさらに個性豊かなものへと昇華させている要素がある。それが、レトロフューチャーな世界観が醸し出すロマンと、マーベル黎明期のヒーローらしい原作コミックへの深い愛情とリスペクトである。劇中には直接は登場しないキャラクターの名前がさりげなく散りばめられ、原作の象徴的なコマを彷彿とさせる構図が随所に配置されている。これらの演出から、製作陣の初期コミックに対する敬意が強く感じられ、長年のコミックファンの心にも響くはずだ。

一点、気になったのは、巨大で計り知れない存在であるギャラクタスの描写が十分に表現し切れていたかという部分である。もしも今回限りの登場で終わってしまうなら些か物足りなさを感じるため、今後の展開に期待したいところだ。一方で、彼の使者(ヘラルド)として登場するシルバー・サーファー/シャラ=バルの造形は印象深い。ジュリア・ガーナーの特徴が予想以上に反映されたキャラクターデザインは、非常に魅力的に仕上がっていた。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』より、エボン=モス・バクラック扮するザ・シング © 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』より、エボン=モス・バクラック扮するザ・シング © 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

“家族”というテーマを芯に据え、壮大なスケールの中で繊細な感情を描き切った『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』。MCUの新たな扉を開くこの作品は、アクションとドラマが見事に融合した渾身の一作だ。“最初の一歩”に込められた覚悟と希望を、ぜひスクリーンで体感してほしい。7月25日(金)日米同時公開。新たな伝説が、いま始まる。

作品情報

作品名:ファンタスティック4:ファースト・ステップ
公開日:2025年7月25日(金)日米同時公開
監督:マット・シャクマン
キャスト:ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービー、ジョセフ・クイン、エボン・モス=バクラック
© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む