カンヌ映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』特別映像解禁-監督&キャストが命懸けの撮影で描く、消えた銃と家族の禁断の真実 [動画あり]

『聖なるイチジクの種』 © Films Boutique NEWS
『聖なるイチジクの種』 © Films Boutique

イラン政府による弾圧に抗い、命を賭して撮影された家族の闇に迫る衝撃の社会派サスペンス

カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第97回アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされた『聖なるイチジクの種』より、製作の舞台裏を明かす特別映像が公開された。国家による監視と弾圧が日常となったイランを舞台に、予審判事の家庭から突如として消えた一丁の銃を巡り、家族の秘密が次々と明らかになっていく本作。その撮影の多くは政府の目を逃れながら秘密裏に行われ、出演者たちは現在も訴訟の危機に直面している。

モハマド・ラスロフ監督が語る特別映像では、イランの映画界に長年存在してきた表現の制限に挑戦し続けた製作過程と、それを支えたスタッフや俳優たちへの深い感謝の言葉が綴られている。特に、「勇敢な女性たちがヒジャーブなしでカメラの前に立った」という証言からは、本作が単なる映画製作を超えた、表現の自由への果敢な挑戦であったことが伝わってくる。

2022年の女性死亡事件から続く社会の混乱を背景に

本作の背景には、2022年に発生し世界中の注目を集めたイランでの若い女性の不審死とそれに続く大規模な政府抗議運動がある。その緊迫した社会情勢の中、ミシャク・ザラソヘイラ・ゴレスターニマフサ・ロスタミセターレ・マレキら実力派キャストが結集し、イランの家族の内側に潜む深い闇を描き出している。

物語は、20年にわたり勤勉に公務をこなしてきた主人公イマンが、待望の予審判事への昇進を果たすところから始まる。しかし、その職務は反政府デモの参加者に不当な刑罰を課すための国家の下働きであった。報復の危険から家族を守るため支給された護身用の銃が、ある日突如として姿を消す。当初は単なる紛失と思われたその事件は、妻のナジメ、姉のレズワン、妹のサナへと疑いの目が向けられていく中で、予想もしない展開を見せていく。

検閲と圧力に抗って描かれた表現の自由

『ぶれない男』(2017年)でカンヌ国際映画祭ある視点部門脚本賞、『悪は存在せず』(2020年)でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞してきたラスロフ監督は、今回も政府による表現規制に果敢に挑戦している。特別映像の中で監督は「私の作品のほとんどは、秘密裏に製作されたもの」と語り、検閲に縛られない自由な映画製作への強い意志を示している。

映像には、父親の昇進を祝う席での印象的なシーンが含まれている。母親が娘たちに向かって「ヒジャブは必須よ」「SNSへの写真投稿は禁止」「少しでも隙を見せれば、すぐ糾弾される」と諭す場面は、現代イランの若い女性たちが直面する厳しい現実を如実に映し出している。

【動画】モハマド・ラスロフ監督が語る『聖なるイチジクの種』メイキング映像

命を賭けた撮影と、いまなお続く圧力

本作の完成までの道のりは、まさに綱渡りの連続だった。ラスロフ監督は特別映像の中で、スタッフや出演者たちと共に裏ルートを駆使しながら撮影を進めていった過程を明かしている。特に女性キャストたちがヒジャーブを着用せずに演技を行うというイラン映画界の大きなタブーに挑戦した場面では、常に当局の目を警戒しながらの撮影となった。

完成した作品は国際的に高い評価を受け、第77回カンヌ国際映画祭では審査員特別賞を獲得。さらに第82回ゴールデングローブ賞では非英語作品賞にノミネートされ、第97回アカデミー賞では国際長編映画賞のノミネートという快挙を達成している。しかし、その成功の裏で多くのスタッフや出演者たちが現在も政府からの訴訟や圧力に直面している状況が続いている。「それでも彼らがこのプロジェクトに参加したことを後悔していると聞いたことはありません」というラスロフ監督の言葉からは、表現の自由のために戦い続ける映画人たちの強い意志が伝わってくる。

作品情報

<STORY>
“ある日、家庭内で1丁の銃が消えた――。”
国家公務に従事する一家の主・イマンは20年間にわたる勤勉さと愛国心を買われ夢にまで見た予審判事に昇進。しかし業務は、反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を課すための国家の下働きだった。報復の危険が付きまとうため国から家族を守る護身用の銃が支給される。しかしある日、家庭内から銃が消えた――。最初はイマンの不始末による紛失だと思われたが、次第に疑いの目は、妻・ナジメ、姉のレズワン、妹・サナの3人に向けられる。誰が?何のために? 捜索が進むにつれ互いの疑心暗鬼が家庭を支配する。そして家族さえ知らないそれぞれの疑惑が交錯するとき、物語は予想不能に壮絶に狂いだす―――。

タイトル:『聖なるイチジクの種』
監督・脚本:モハマド・ラスロフ
出演:ミシャク・ザラ、ソヘイラ・ゴレスターニ、マフサ・ロスタミ、セターレ・マレキ
日本公開:2024年2月14日(水)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開

受賞・ノミネート歴:
第77回カンヌ国際映画祭 審査員特別賞 受賞
第97回アカデミー賞 国際長編映画賞 ノミネート
第82回ゴールデングローブ賞 非英語作品賞 ノミネート

監督略歴:
『ぶれない男』(2017年)カンヌ国際映画祭ある視点部門 脚本賞
『悪は存在せず』(2020年)ベルリン国際映画祭 金熊賞

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