『スター・ウォーズ』の「ダース」は何を意味するのか。シスの称号としての役割と語源を解説する。
『スター・ウォーズ』には、ダース・ベイダー、ダース・モール、ダース・シディアスなど、「ダース(Darth)」の名を持つ人物が何人も登場する。
ベイダーとモールに血縁関係があるわけではない。では、この共通する「ダース」とはいったい何なのか。
現在の『スター・ウォーズ』においてはシスが用いる称号として位置づけられている。一方、その言葉自体は現実世界にもともと存在する一般的な英単語ではなく、シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカスが生み出した名称だ。
その語源について、ルーカス本人は「dark(暗い、闇)」を変形させたものだと説明している。
ダースの意味とは?シスが授かる称号
現在の公式設定で、「ダース」はシスに与えられる称号として扱われている。
この点はLucasfilmの公式サイトStarWars.comのパルパティーン/ダース・シディアスのデータバンクでも確認できる。
同ページでは、パルパティーンことダース・シディアスが元ジェダイのドゥークーをシスへ引き入れた際、彼に「Darth Tyranus(ダース・ティラナス)」というシスの称号を与えたと説明されている。
ドゥークー本人の公式データバンクでも、シディアスの弟子になったことで「Darth Tyranus」という秘密の名を得たとされている。
ダース・ベイダーも同様だ。
アナキン・スカイウォーカーはジェダイだったころから「ダース・ベイダー」と呼ばれていたわけではない。公式データバンクでは、アナキンがダース・シディアスに屈したあと「Darth Vader」と新たに名付けられたことが説明されている。
つまり、
アナキン・スカイウォーカー → ダース・ベイダー
ドゥークー伯爵 → ダース・ティラナス
というように、以前の名前とは別にシスとしての名を得るわけだ。
ダース・モールについても、StarWars.comはモールを解説した公式記事の中で、彼がすでに「Darth title」を持ち、自らをシス卿と認識していたと明記している。
そのため「ダース」は苗字や一族名ではない。「ダース・ベイダー」と「ダース・モール」が同じ「ダース」を名乗るのは、ふたりがともにシスとしてその称号を持っているためだ。
「ダース」の語源は?ジョージ・ルーカスは「dark」の変形と説明
では、そもそも「Darth」という言葉はどこから生まれたのか。
有力な根拠となるのが、2005年6月2日に米Rolling Stoneが掲載した、ギャヴィン・エドワーズによるジョージ・ルーカスへのインタビュー「George Lucas and the Cult of Darth Vader」だ。
この中でルーカスは「Darth Vader」という名前の由来を尋ねられ、「Darth」は「dark」の変形であり、「Vader」は「father」の変形だと説明している。
つまり、制作上の語源としては、
dark → Darth
という関係になる。
そのため「Darth」は、現実に存在する英語の爵位や肩書きをそのまま持ち込んだものではない。ルーカスが「dark」の響きを変化させて生み出し、のちに『スター・ウォーズ』世界の中でシスを象徴する称号として定着していった言葉と考えるのが自然だ。
なおルーカスは同じ説明の中で、「Darth Vader」全体として「Dark Father」を意識した名前だとも語っている。
ただし、初期の制作過程までさかのぼった「Darth Vader」という名前の成立については、ルーカスが過去に「Dark Father」や「Death Water」など複数の言葉との関連を語った記録もある。そのため、名称が生まれた全過程をひとつの語源だけで説明するよりも、少なくともルーカス本人が後年「Darth=darkの変形」と明言している、というところを確実なポイントとして押さえるのがよいだろう。
「Dark Lord of the Sith」の略?有名なダースの意味説には注意
「Darth」の由来については、もうひとつ有名な説がある。
「Dark Lord of the Sith」(闇のシス卿)を縮めた言葉ではないか、というものだ。
たとえば、
DARk Lord of the SiTH
から文字を取り、
DARTH
になったという説明だ。
『スター・ウォーズ』の設定を知っているほど納得しやすい説ではある。しかし、これをジョージ・ルーカスが「Darth」という名称を作った公式な語源として説明した確かな根拠は確認できない。
むしろルーカス本人が2005年のRolling Stoneインタビューで明確に示している説明は、「Darth」は「dark」の変形だというものだ。
したがって、
作中での意味:シスが用いる称号
制作上の語源:ルーカスによれば「dark」の変形
と分けて考えると分かりやすい。
ちなみに1977年公開の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』では、オビ=ワン・ケノービがベイダーに対して単に「Darth」と呼びかける場面もある。
しかし、その後『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』でダース・シディアスとダース・モールが登場し、さらにダース・ティラナスなど複数のシスが描かれたことで、「Darth」がひとりの人物固有の名前ではなく、シスの称号であることがシリーズの世界観として明確になっていった。
ダース・ベイダー、ダース・モール、ダース・シディアスの「ダース」は、同じ一族だから付いているわけではない。
闇を意味する「dark」を思わせる造語から始まり、いまでは『スター・ウォーズ』を象徴する「シスの名」となった言葉なのだ。
