映画『リラクタント・ドラゴン』(1941)を紹介&解説。
映画『リラクタント・ドラゴン』概要
映画『リラクタント・ドラゴン』は、ロバート・ベンチリーがウォルト・ディズニー・スタジオを訪ね、アニメーション製作の舞台裏を巡っていく実写とアニメーションの融合映画。実写部分をアルフレッド・L・ワーカー、アニメーション部分をハミルトン・ラスクらが手がけた。
ベンチリーがウォルト・ディズニーへ映画化企画を持ち込もうとする道中、作画、声優の収録、音響、撮影、絵の具の調合など、当時のディズニー・アニメーションの製作工程を見学。さらに「Baby Weems」、グーフィーの短編、ケネス・グレアム原作の「The Reluctant Dragon」などのアニメーションが劇中に挿入される。
作品情報
| 日本版タイトル | 『リラクタント・ドラゴン』 |
|---|---|
| 原題 | The Reluctant Dragon |
| 製作年 | 1941年 |
| 本国公開日 | 1941年6月20日 |
| 日本公開日 | 1956年3月21日 |
| ジャンル | コメディ/アニメーション |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | ケネス・グレアム『The Reluctant Dragon』(短編小説/劇中アニメーション部分) |
| 上映時間 | 74分 |
| 監督 | アルフレッド・L・ワーカー(実写)/ハミルトン・ラスク(アニメーション)/アブ・アイワークス/ジャック・キニー/ジャック・カッティング |
|---|---|
| 脚本 | テッド・シアーズ/アル・パーキンス/ラリー・クレモンズ/ウィリアム・コットレル/ハリー・クラーク/アードマン・ペナー/T・ヒー/ジョー・グラント/ディック・ヒューマー/ジョン・P・ミラーほか |
| 製作 | ウォルト・ディズニー |
| 撮影 | バート・グレノン/ウィントン・C・ホック(テクニカラー部分) |
| 編集 | ポール・ウェザーワックス |
| 作曲 | フランク・チャーチル/ラリー・モーリー |
| 出演 | ロバート・ベンチリー/フランセス・ギフォード/バディ・ペッパー/ナナ・ブライアント/クロード・アリスター/バーネット・パーカー/ビリー・リー/クラレンス・ナッシュ/ウォルト・ディズニーほか |
| 製作 | ウォルト・ディズニー・プロダクションズ |
| 配給 | RKOラジオ・ピクチャーズ(米国)/要確認(日本) |
あらすじ
ユーモア作家・俳優のロバート・ベンチリーは、妻から勧められ、ケネス・グレアムの物語「The Reluctant Dragon」を映画化してもらおうとウォルト・ディズニーのスタジオを訪れる。
ところがスタジオへ入ったベンチリーは、案内役から逃れながら建物の中を歩き回り、アニメーターたちの作画現場、キャラクターボイスの収録、音響効果、カメラ、色彩などさまざまな部署を見学することに。そこで「Baby Weems」のストーリーボードやグーフィーの短編なども目にしていく。
ようやくウォルト・ディズニーのもとへたどり着いたベンチリーだったが、そこで上映されていたのは、彼が企画として持ち込もうとしていた「The Reluctant Dragon」だった。戦うことを嫌い、詩や穏やかな暮らしを好むドラゴンと少年、騎士サー・ジャイルズによる風変わりな物語が展開する。
主な登場人物(キャスト)
ロバート・ベンチリー(ロバート・ベンチリー):ウォルト・ディズニーに「The Reluctant Dragon」の映画化を提案するためスタジオを訪れる主人公。施設内を歩き回りながら、さまざまなアニメーション製作工程を見学する。
ハンフリー(バディ・ペッパー):ディズニー・スタジオでベンチリーを案内しようとするガイド。
ドリス(フランセス・ギフォード):スタジオで働くアーティスト。ベンチリーが製作現場を巡る中で出会う人物のひとり。
ドラゴン(バーネット・パーカー):劇中アニメーション「The Reluctant Dragon」に登場するドラゴン。一般的なドラゴン像とは異なり、争いを嫌って詩や平穏な生活を好む。
少年(ビリー・リー):ドラゴンと出会い、彼が人々の想像する恐ろしい怪物ではないことを知る少年。
サー・ジャイルズ(クロード・アリスター):ドラゴン退治のために現れる騎士。しかし当のドラゴンに戦う意思がないため、予想外の展開に巻き込まれていく。
作品の魅力解説・レビュー
1941年のディズニー・スタジオを歩く貴重なタイムカプセル
本作最大の魅力は、物語そのものだけではなく、1941年当時のウォルト・ディズニー・スタジオを見学する映画として成立していることにある。
ロバート・ベンチリーがスタジオ内を巡り、アニメーションの作画、キャラクターの声の収録、音響効果、撮影、色彩などの工程を次々と見ていく構成は、現代から振り返れば極めて貴重な記録でもある。
さらに、当時まだ公開前だった『ダンボ』や『バンビ』に関連する素材も登場。現在では歴史的名作として知られる作品が、まだ「これから観客のもとへ届く新作」だった時代の空気を感じられるところが面白い。
「Baby Weems」からグーフィーまで、短編を次々楽しめる構成
スタジオ見学だけで進むのではなく、途中にはさまざまなアニメーションが挟み込まれる。
天才的な赤ん坊を描く「Baby Weems」はストーリーボードを利用した独特の見せ方が楽しく、グーフィーが乗馬に挑戦する短編では、後の「グーフィーの教室」型作品にも通じる身体を張ったドタバタが展開する。
一本の物語を追う通常の長編とは違い、スタジオ見学と短編アニメーションを交互に楽しませる「ショーケース」のような構成で、当時のディズニーが持っていた技術とキャラクターの豊かさをまとめて味わえる。
最後に待つ「戦いたくないドラゴン」の楽しいオチ
そして最後に登場するのがタイトルにもなった「リラクタント・ドラゴン=戦いたがらないドラゴン」。
ドラゴンなら村を襲い、騎士と死闘を繰り広げるはず――というお約束に反して、当人は詩を愛し、戦うことにも人を傷つけることにも興味がない。この設定だけでも愉快だが、少年と騎士を巻き込んで「では、みんなが期待しているドラゴン退治をどうするのか」という方向へ物語が進んでいく。
スタジオ見学から複数の短編を経て、最後にはタイトルの意味まできちんと回収する。映画製作の舞台裏を見せる記録的価値と、ディズニーらしいアニメーションの楽しさを一度に味わえる異色作である。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
