『ザ・ハント』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ

映画『ザ・ハント』(2020)を紹介&解説。


映画『ザ・ハント』概要

映画『ザ・ハント』は、富裕層による“人間狩り”の標的にされた人々の反撃を、過激なバイオレンスとブラックユーモアで描くサバイバル・アクション。『コンプライアンス 服従の心理』のクレイグ・ゾベルが監督し、『LOST』『ウォッチメン』のデイモン・リンデロフとニック・キューズが脚本を手掛けた。アメリカ社会の政治的分断、階級対立、ネット上の陰謀論や思い込みを皮肉りながら、予測不能な殺戮劇を展開する。主演はベティ・ギルピン、共演にヒラリー・スワンク、エマ・ロバーツ、アイク・バリンホルツら。

作品情報

日本版タイトル 『ザ・ハント』
原題 The Hunt
製作年 2020年
本国公開日 2020年3月13日
日本公開日 2020年10月30日
ジャンル アクション/スリラー/ホラー/ブラックコメディ
製作国 アメリカ
原作 無
上映時間 90分
監督 クレイグ・ゾベル
脚本 ニック・キューズ/デイモン・リンデロフ
製作 ジェイソン・ブラム/デイモン・リンデロフ
製作総指揮 クレイグ・ゾベル/ニック・キューズ/スティーヴン・R・モレン/クーパー・サミュエルソン/ジャネット・ボルトゥルノ=ブリル
撮影 ダーレン・ティアナン
美術 マシュー・マン
編集 ジェーン・リッツォ
作曲 ネイサン・バー
出演 ベティ・ギルピン/ヒラリー・スワンク/アイク・バリンホルツ/エマ・ロバーツ/イーサン・サプリー/ウェイン・デュバル/グレン・ハワートン/エイミー・マディガン/リード・バーニー
製作 ブラムハウス・プロダクションズ/ホワイト・ラビット・プロダクションズ/電通
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ/東宝東和(日本)

あらすじ

広大な森の中で目を覚ました12人の男女。彼らは自分たちがどこにいるのか、なぜ連れてこられたのかも分からないまま、草原に置かれた巨大な木箱を発見する。箱の中に入っていたのは、1頭のブタと大量の武器だった。

やがて周囲から銃撃が始まり、彼らは富裕層が一般市民を獲物として狩る“マナーゲート”の標的にされたことを知る。次々と犠牲者が出る中、獲物のひとりであるクリスタルは並外れた判断力と戦闘能力を発揮。狩る側の計画を崩しながら、人間狩りを仕組んだ謎の女アシーナへと近づいていく。

主な登場人物(キャスト)

クリスタル(ベティ・ギルピン):人間狩りの獲物として誘拐された女性。感情をほとんど表に出さず、周囲の状況を冷静に観察する。卓越した戦闘能力とサバイバル能力によって、狩る側を次々と追い詰めていく。

アシーナ(ヒラリー・スワンク):富裕層による人間狩り計画の中心にいる謎の女性。自分たちの行動を正当化する一方、ネット上で噂される“マナーゲート”と深い関係を持つ。

スタテンアイランド(アイク・バリンホルツ):森で目を覚ました獲物のひとり。本名ではなく出身地をもとにした呼び名で区別され、突然始まった襲撃から逃げようとする。

ヨガパンツ(エマ・ロバーツ):人間狩りに巻き込まれた若い女性。誘拐犯によって“ヨガパンツ”という特徴だけで呼ばれており、ほかの獲物たちとともに武器を取る。

ゲイリー(イーサン・サプリー):人間狩りに関する陰謀論を発信していたポッドキャスター。自分が主張してきた“マナーゲート”の存在が現実だったと確信し、計画の証拠を持ち帰ろうとする。

ドン(ウェイン・デュバル):獲物として誘拐された年配の男性。逃走中にクリスタルと行動をともにするが、極限状態の中で互いを完全には信用できずにいる。

ママ(エイミー・マディガン)/パパ(リード・バーニー):森から逃げてきた獲物たちが立ち寄る店を営む老夫婦。一見すると親切で穏やかだが……。

作品の魅力解説

開始直後から予想を裏切る高速の導入

本作は、物語の中心人物になりそうなキャラクターを次々と登場させながら、観客の予想を乱暴なほど豪快に裏切っていく。著名な俳優が演じているから生き残る、目立つ人物だから主人公になるといった映画的な約束事さえ信用できない。誰を軸に観ればよいのか分からない状況そのものが、序盤の緊張感と意外性を生み出している。

銃撃、爆発、落とし穴といった殺傷描写も開始早々から容赦がなく、グロテスクな痛みと笑いをほぼ同時に投げ込んでくる。序盤から飛ばしすぎではないかと思わせながら、その後も驚きとアクションの密度を大きく落とさず、90分を駆け抜けていく勢いがある。

バイオレンスとブラックユーモアの軽快な組み合わせ

人体が破壊されるほど過激な暴力を見せながら、その直後に間の抜けた会話や予想外の失敗を挟み込む笑いは、ブラムハウス作品らしい悪趣味な娯楽性につながっている。『アップグレード』の身体的なアクションや、『ハッピー・デス・デイ』シリーズの意外性とコメディを思わせる要素を組み合わせたような作風である。

死亡フラグやヒーロー像といったジャンル映画の定型も、観客が理解した瞬間に崩される。残酷さを深刻な恐怖だけに結びつけず、悪意のある冗談として処理していくため、スプラッター描写の多さに反して作品全体の足取りは軽い。

ベティ・ギルピンが作り上げた異色のアクション主人公

クリスタルは、自分の経歴や感情を長々と説明するタイプの主人公ではない。独特の表情と低い声、必要最低限の言葉だけで相手を観察し、危険を見抜いて行動する。ベティ・ギルピンは無表情に近い演技の中へ警戒心、苛立ち、ユーモアを織り込み、周囲の騒々しい人物たちとは異なる存在感を生み出した。

獲物だった人物が狩人たちの裏をかき、逆に追い詰めていく構造も単純明快で心地よい。クリスタルの能力が明らかになるにつれて、人間狩りという一方的なゲームは、計画した富裕層にとって制御不能な反撃劇へと変化していく。

“自分だけが正しい”社会を狙った政治風刺

「事実はどうでもいいの?」「事実は大切よ。ただ私が正しいに決まってる」という会話は、本作が風刺する思考を端的に表している。狩る側のリベラルな富裕層も、狩られる側の保守的な人々も、自分に都合のよい情報だけを信じ、相手を単純な敵として決めつけている。

政治的立場、階級格差、ポリティカル・コレクトネス、陰謀論、SNS上の炎上などを次々と笑いの標的にするため、アメリカの政治事情を知る観客ほど細かな皮肉を拾いやすい。一方で、両陣営を極端なステレオタイプとして描く風刺は表層的でもあり、社会問題を深く掘り下げる作品とは言い難い。

ガラスと家具を破壊し尽くす最終決戦

物語の最後に待ち受けるクリスタルとアシーナの直接対決は、本作のアクション演出が最も充実した場面である。高級住宅の室内を舞台に、銃や刃物だけでなく、家具、食器、ガラス、調理器具までが武器へと変わっていく。

身体の動きに追随するカメラワークはスタイリッシュで、激しい攻防の中にも細かな笑いが組み込まれている。両者がガラスを割り、壁や家具へ激突しながら戦い続けるドタバタ感と、打撃の痛みを伝える迫力が両立しており、最終決戦だけでも見返したくなるほど強烈な見せ場となった。

粗さを勢いで押し切る90分のジャンル映画

政治風刺の掘り下げや人物描写には物足りなさが残るものの、本作は複雑な主張を聞かせることより、観客を驚かせて笑わせることを優先している。導入の殺戮から最後の一騎打ちまで、展開を停滞させずに進める潔さが大きな強みである。

社会派作品としては粗削りだが、過激なアクション、グロテスクな笑い、先を読ませない人物配置を詰め込んだブラックコメディとしては痛快だ。ブラムハウス作品の娯楽性を濃縮した、悪趣味で勢いのあるサバイバル・アクションに仕上がっている。

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