映画『ザ・コンサルタント』(2016)を紹介&解説。
映画『ザ・コンサルタント』概要
映画『ザ・コンサルタント』は、ギャビン・オコナー監督(『ウォーリアー』)が、天才的な数学能力と高度な戦闘技能を併せ持つ会計士を主人公に描くサスペンスアクション。田舎町で会計事務所を営むクリスチャン・ウルフは、その裏で世界中の危険な犯罪組織を顧客とする会計士として活動している。ある企業の財務調査で巨額の不正を発見したことから、命を狙われる事態へ発展していく。主演はベン・アフレック、共演にアナ・ケンドリック、J・K・シモンズ、ジョン・バーンサル、シンシア・アダイ=ロビンソン、ジョン・リスゴーら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ザ・コンサルタント』 |
|---|---|
| 原題 | The Accountant |
| 製作年 | 2016年 |
| 本国公開日 | 2016年10月14日 |
| 日本公開日 | 2017年1月21日 |
| ジャンル | アクション/サスペンス/クライム |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 128分 |
| 次作 | 『ザ・コンサルタント2』(2025) |
| 監督 | ギャビン・オコナー |
|---|---|
| 脚本 | ビル・ドゥビューク |
| 製作 | マーク・ウィリアムズ/リネット・ハウエル・テイラー |
| 製作総指揮 | ギャビン・オコナー/ジェイミー・パトリコフ/マーティ・P・ユーイング/スティーブン・ムニューチン |
| 撮影 | シーマス・マッガーベイ |
| 編集 | リチャード・ピアソン |
| 作曲 | マーク・アイシャム |
| 出演 | ベン・アフレック/アナ・ケンドリック/J・K・シモンズ/ジョン・バーンサル/シンシア・アダイ=ロビンソン/ジェフリー・タンバー/ジョン・リスゴー |
| 製作 | Electric City Entertainment/Zero Gravity Management/RatPac-Dune Entertainment |
| 配給 | ワーナー・ブラザース |
あらすじ
田舎町で小さな会計事務所を営むクリスチャン・ウルフは、人とのコミュニケーションを苦手とする一方、数字に対して突出した能力を持つ会計士。しかし、その裏では世界中の危険な犯罪組織を顧客に、複雑な帳簿を解析する仕事を請け負っていた。
そんなクリスチャンのもとに、先端技術企業リビング・ロボティクスから財務調査の依頼が舞い込む。経理担当のデイナ・カミングスが発見した帳簿の不審な点を調べたクリスチャンは、巨額の資金が消えていることを突き止める。しかし、調査は突然打ち切られ、関係者には死者まで発生。やがてクリスチャンとデイナ自身も何者かに命を狙われ始める。
主な登場人物(キャスト)
クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック):田舎町で小さな会計事務所を営む会計士。自閉スペクトラムの特性を持ち、対人コミュニケーションを苦手とする一方、数字のパターンを読み解く突出した能力を備える。裏では犯罪組織を顧客とする会計士として活動しており、幼少期から鍛えられた射撃や格闘にも長けている。
デイナ・カミングス(アナ・ケンドリック):リビング・ロボティクスで働く若手会計士。会社の帳簿にある不審な数字を最初に発見し、その調査を依頼されたクリスチャンと出会う。数字への強い興味という共通点から彼と少しずつ距離を縮めるが、不正を知ったことで危険に巻き込まれていく。
レイモンド・キング(J・K・シモンズ):米財務省の犯罪捜査部門を率いるベテラン。引退を控えるなか、犯罪組織の資金を扱う正体不明の会計士についてメディナに調査を命じる。クリスチャンの過去にも深く関係する人物。
ブラクストン(ジョン・バーンサル):武装したチームを率い、危険な仕事を請け負う高い戦闘能力を持った男。リビング・ロボティクスをめぐる事件にも関与し、クリスチャンの前に立ちはだかる。
メリーベス・メディナ(シンシア・アダイ=ロビンソン):米財務省の犯罪捜査部門で働く分析官。キングから謎の会計士の正体を調べるよう命じられ、高い調査能力で少しずつクリスチャン・ウルフへとたどり着いていく。
ラマー・ブラックバーン(ジョン・リスゴー):先端義肢などを開発するリビング・ロボティクスの創業者兼CEO。社員のデイナが発見した帳簿の異常を調査するため、クリスチャンを外部の会計士として雇う。
作品の魅力解説・レビュー
会計士×殺し屋という異色の主人公
本作の最大の特徴は、やはり「会計士×殺し屋」という異色の組み合わせにある。
数字を武器に裏帳簿の不正を見抜く頭脳派の会計士でありながら、ひとたび銃を手にすれば卓越した射撃能力を発揮し、近接戦闘においても高い実力を見せる。従来の殺し屋映画とはまったく異なる能力を一身に併せ持つ主人公を据えたことで、本作ならではのサスペンスアクションが成立している。
主人公クリスチャンは自閉スペクトラムの特性を持つ人物として描かれ、強いこだわりや感覚への過敏さ、ひとつの問題に極端なまでに没頭する姿が随所に表れる。そうした特性と突出した数学的才能を併せ持つキャラクターを、ベン・アフレックは感情表現を抑制した演技によって確かな説得力をもって成立させている。
感情を派手に爆発させるタイプの人物ではないからこそ、わずかな表情の変化や何気ない行動の端々から、クリスチャンの内面がふと垣間見える瞬間が強く印象に残る。
緻密さと豪快さを両立したアクション
アクション描写にも、主人公の人物像が色濃く反映されている。クリスチャンの戦い方には無駄な動きがほとんどなく、銃撃においても格闘においても、目的へと最短距離で向かうような合理性が貫かれている。その一方で、銃声の響きや一撃ごとの重みはしっかりと強調されており、映像としての豪快な迫力も損なわれていない。
また、数字を正確に処理していく会計士としての姿と、敵を淡々と処理していく戦闘時の姿に、同じ几帳面さが通底している点も興味深い。職業設定とアクション演出が互いに乖離することなく、ひとりの人物像のもとに有機的に結びついているのだ。
要素を詰め込んだ複雑な脚本
一方で、本作は盛り込まれた要素がきわめて多い。企業の不正会計をめぐるサスペンス、財務省によるクリスチャンの追跡、彼の幼少期と家族の物語、自閉症スペクトラムに関する要素、裏社会での仕事、幼い頃から叩き込まれた戦闘訓練と銃撃アクション、そして別働隊として暗躍する武装集団と、複数の筋が並行して進んでいく。
さらに物語が進むにつれ、登場人物同士の意外なつながりが次々と明かされていくため、二転三転する展開を楽しめる反面、観客が受け止めるべき情報量は相当なものになる。一本の映画に収めるにはやや過密であり、個々のキャラクター、とりわけクリスチャン以外の人物を十分に掘り下げる余地が限られてしまっている点は、本作の弱点と言えよう。
それでもなお、一見するとまとまりにくい素材の数々を、最終的にはひとつの娯楽作として見事に着地させている。その複雑さこそが弱点であると同時に、本作をありきたりな殺し屋映画にとどめない、強烈な個性も生み出す核にもなっている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
