『南部の唄』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『南部の唄』(1946)を紹介&解説。


映画『南部の唄』概要

映画『南部の唄』は、ジョエル・チャンドラー・ハリスによる「リーマスおじさん」の物語をもとに、実写とアニメーションを融合させて描いたウォルト・ディズニー製作のミュージカル・ドラマ。

南部の農場へやって来た少年ジョニーと、彼にさまざまな物語を聞かせるリーマスおじさんとの交流を実写で描き、リーマスが語るウサギどん(ブレア・ラビット)、キツネどん(ブレア・フォックス)、クマどん(ブレア・ベア)の寓話をアニメーションとして映像化する。

実写部分をハーブ・フォスター、アニメーション部分をウィルフレッド・ジャクソンが監督。出演はジェームズ・バスケット、ボビー・ドリスコール、ルアナ・パットン、ルース・ウォリック、ハティ・マクダニエルら。

作品情報

日本版タイトル 『南部の唄』
原題 Song of the South
製作年 1946年
本国公開日 1946年11月12日(アトランタでプレミア)
日本公開日 1951年10月19日
ジャンル ドラマ/ミュージカル/アニメーション
製作国 アメリカ
原作 ジョエル・チャンドラー・ハリス「リーマスおじさん」(短編物語集)
上映時間 94分
監督 ハーブ・フォスター(実写)/ウィルフレッド・ジャクソン(アニメーション)
脚本 ダルトン・S・レイモンド/モートン・グラント/モーリス・ラップ/ビル・ピート/ラルフ・ライト/ヴァーノン・スターリングス
製作 ウォルト・ディズニー/パース・ピアース(アソシエイト・プロデューサー)
撮影 グレッグ・トーランド
編集 ウィリアム・M・モーガン
作曲 ダニエル・アンフィシアトロフ/ポール・J・スミス/チャールズ・ウォルコット
出演 ジェームズ・バスケット/ボビー・ドリスコール/ルアナ・パットン/ルース・ウォリック/ルシル・ワトソン/ハティ・マクダニエル/エリック・ロルフ/グレン・リーディ/ジョニー・リー/ニック・スチュワートほか
製作 ウォルト・ディズニー・プロダクションズ
配給 RKOラジオ・ピクチャーズ(米国)/大映洋画部(日本)

あらすじ

少年ジョニーは母サリーとともに、ジョージアにある祖母の農場へやって来る。しかし父ジョンは仕事のためアトランタへ戻ることになり、両親が離れて暮らす状況に傷ついたジョニーは家出しようとする。

そんな彼が出会ったのが、農場で暮らすリーマスおじさんだった。リーマスはジョニーに、知恵を使って危機を切り抜けるウサギどんと、彼を捕まえようとするキツネどん、クマどんの物語を聞かせる。寓話に励まされたジョニーは家へ戻り、その後もリーマスのもとへ通うようになる。

やがてジョニーは少女ジニーや少年トビーとも親しくなるが、周囲とのトラブルが続き、母サリーはリーマスにジョニーと会わないよう求める。農場を去ろうとするリーマスを追ったジョニーは雄牛に襲われて重傷を負う。深刻な状態に陥った少年のもとへリーマスが戻り、再び物語を語り始める。

主な登場人物(キャスト)

リーマスおじさん(ジェームズ・バスケット):農場で暮らす物語の語り手。ジョニーにウサギどんたちの寓話を聞かせ、その悩みに間接的な答えを与えていく。バスケットはアニメーション部分のブレア・フォックスの声も担当した。

ジョニー(ボビー・ドリスコール):両親をめぐる家庭の変化に傷ついている少年。リーマスおじさんと出会い、その物語を通して少しずつ困難との向き合い方を学ぶ。

ジニー(ルアナ・パットン):ジョニーが農場で出会う少女。兄たちからいじめられており、ジョニーと親しくなっていく。

サリー(ルース・ウォリック):ジョニーの母。息子を心配する一方、リーマスとジョニーの交流を問題視するようになる。

ウサギどん/ブレア・ラビット(ジョニー・リー):リーマスが語る物語の主人公。小柄ながら抜群の機転を持ち、キツネどんやクマどんの企みを何度もかわしていく。

キツネどん/ブレア・フォックス(ジェームズ・バスケット):ウサギどんを捕まえようと策を巡らせるキツネ。

クマどん/ブレア・ベア(ニック・スチュワート):キツネどんと行動をともにするクマ。ウサギどんの策略に翻弄されることが多い。

作品の魅力解説・レビュー

作品の評価と切り離せない人種表象をめぐる問題

『南部の唄』について語る際、実写部分の人種表象をめぐる問題を避けることはできない。

作品は南北戦争後のアメリカ南部を舞台としているが、黒人たちが暮らす社会状況や人種間の不平等をほとんど描かず、農場での生活を牧歌的に表現している。この描写は1946年の公開当時から批判の対象となっており、後年になって突然問題視され始めた作品ではない。

ディズニーも長年にわたり本作を再公開しておらず、2020年にはボブ・アイガーCEOが、「注意書きを付けたとしても現代において適切ではない」という趣旨の見解を示している。現在この作品を見る機会があった場合、歴史的背景や表象上の問題を理解したうえで向き合う必要がある。

それでも魅力的なウサギどんたちのアニメーション

一方、リーマスおじさんの物語として描かれるアニメーション部分では、ウサギどん、キツネどん、クマどんという強烈な個性を持ったキャラクターが生き生きと動き回る。

力では敵わない相手に知恵で対抗するウサギどんは、トリックスター型の主人公として非常に魅力的。キツネどんとクマどんとの追いかけっこには、ディズニー短編らしいテンポのいいギャグとアニメーションの楽しさが詰まっている。

作品に問題が存在することと、個々のアニメーターによって生み出されたキャラクターやアニメーションそのものの完成度は、分けて考える余地があるだろう。

「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」をはじめとする音楽

音楽も本作を語るうえで欠かせない。

特に「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」は、第20回アカデミー賞で歌曲賞を受賞。軽快なメロディと明るい歌唱は作品を知らない世代にも長く親しまれてきた。

そのほかにも「Everybody’s Got a Laughing Place」など、アニメーション部分と結びついた楽曲には耳に残るものが多く、キャラクター、音楽、色彩が一体となったディズニーらしい楽しさは確かに存在する。

スプラッシュ・マウンテンをめぐる複雑な感情

本作の動物キャラクターと音楽は、後にディズニーのアトラクション「スプラッシュ・マウンテン」へ取り入れられた。

アトラクションではリーマスおじさんを中心とした実写ドラマではなく、ウサギどんたちの冒険と楽曲が主に使用されていた。そのため、アニメーション部分のキャラクターや音楽そのものを愛してきたファンにとって、作品全体への批判とともにアトラクションまで姿を消していったことを寂しく感じるのも理解できる。

一方で、ウサギどんたちの物語も『南部の唄』という作品を通して世界的なディズニーキャラクターとなった以上、その歴史的背景から完全に切り離すことが難しいという考え方もある。

問題点をなかったことにせず、それでもアニメーション、キャラクター、音楽に優れた部分があったことも同時に記録しておく。『南部の唄』は、ディズニー史を考えるうえでその両面を避けて通れない作品である。

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