映画『SISU/シス 不死身の男』(2022)を紹介&解説。
映画『SISU/シス 不死身の男』概要
映画『SISU/シス 不死身の男』は、ヤルマリ・ヘランダー監督(『レア・エクスポーツ ~囚われのサンタクロース~』『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』)が、第二次世界大戦末期のフィンランドを舞台に、金塊を奪われた伝説の老兵とナチス戦車隊の死闘を描くバイオレンスアクション。ツルハシと機転、そして不屈の精神“SISU”を武器に戦う男をヨルマ・トンミラが演じる。共演はアクセル・ヘニー、ジャック・ドゥーラン、ミモサ・ヴィッラモ、オンニ・トンミラ。
作品情報
| 日本版タイトル | 『SISU/シス 不死身の男』 |
|---|---|
| 原題 | Sisu |
| 製作年 | 2022年 |
| 本国公開日 | 2023年1月27日 |
| 日本公開日 | 2023年10月27日 |
| ジャンル | アクション/戦争/スリラー |
| 製作国 | フィンランド |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 91分 |
| 監督・脚本 | ヤルマリ・ヘランダー |
|---|---|
| 製作 | ペトリ・ヨキランタ |
| 製作総指揮 | マイク・グッドリッジ/グレゴリー・ウェノン/アントニオ・サラス |
| 撮影 | チェル・ラゲルルース |
| 編集 | ユホ・ヴィロライネン |
| 作曲 | ユリ・セッパ/トゥオマス・バイノーラ |
| 出演 | ヨルマ・トンミラ/アクセル・ヘニー/ジャック・ドゥーラン/ミモサ・ヴィッラモ/オンニ・トンミラ |
| 製作 | フリージング・ポイント/グッド・カオス/ステージ6・フィルムズ |
| 配給 | ノルディスク・フィルム(フィンランド)/ハピネットファントム・スタジオ(日本) |
あらすじ
1944年、第二次世界大戦末期のフィンランド。荒野で金塊を掘り当てた老兵アアタミ・コルピは、愛犬ウッコとともに町を目指す途中、ブルーノ・ヘルドルフ中尉率いるナチス部隊と遭遇する。金塊と命を狙われたアアタミは、ツルハシと不屈の精神を武器に、戦車隊を相手とした壮絶な反撃を開始する。
主な登場人物(キャスト)
アアタミ・コルピ(ヨルマ・トンミラ):フィンランド北部の荒野で孤独に暮らす老兵。かつて冬戦争で恐れられた伝説的な兵士で、金塊を奪おうとするナチス部隊にたったひとりで立ち向かう。ほとんど言葉を発することなく、驚異的な生命力と戦闘能力を見せる。
ブルーノ・ヘルドルフ中尉(アクセル・ヘニー):フィンランドから撤退するナチス・ドイツ軍部隊の指揮官。戦争の敗北を悟り、戦後を生き延びるためにアアタミの金塊を奪おうとする。残忍かつ冷酷な判断で執拗な追跡を続ける。
ヴォルフ(ジャック・ドゥーラン):ブルーノ中尉と行動をともにするナチス・ドイツ軍の兵士。アアタミの正体と過去を知り、その危険性を警戒しながら追跡作戦に加わる。
アイノ(ミモサ・ヴィッラモ):ナチス部隊に捕らえられたフィンランド人女性たちの中心的存在。
シュルツ(オンニ・トンミラ):ブルーノ中尉の部隊に所属するナチス・ドイツ軍の兵士。戦車の操縦などを担当し、アアタミを追うブルーノやヴォルフと行動をともにする。
作品の魅力解説
本作最大の魅力は、フィンランドで高い人気を誇るヨルマ・トンミラが演じた“不死身の男”アアタミ・コルピの、常識外れの強さにある。銃弾、地雷、戦車、縛り首と、どれほど絶望的な状況に追い込まれても立ち上がる姿は、タイトル通り「この男を殺すことなどできない」と思わせるほどの説得力を放つ。敵の大部隊をたったひとりで圧倒していく無双アクションの爽快感は格別だ。
しかし、アアタミは単なる無敵の殺戮マシンではない。寡黙な表情や愛犬に向けるまなざし、戦争によって失った家族の記憶からは、彼が背負い続けてきた深い愛情と悲しみがにじむ。容赦のない戦いぶりの奥に、すべてを奪われた老兵の孤独と哀愁が感じられるからこそ、その反撃は単なる暴力を超えた切実さを帯びている。
ツルハシや地雷、戦車、航空機までを駆使したアクションも、物語が進むにつれて過激さと荒唐無稽さを増していく。残酷な描写を正面から見せながら、敵兵の倒し方には大胆な発想と乾いたブラックユーモアが込められており、血生臭い戦場を痛快なエンターテインメントへと転換している。
戦争、ナチス、老兵、暴力といった重苦しい題材を扱いながら、作品全体が醜く泥臭い印象に陥っていない点も特筆すべきだろう。荒涼としたラップランドの大地や空、立ち上る炎と煙、人間のシルエットを切り取る映像は思わず見惚れるほど美しい。チェル・ラゲルルースによる撮影は丁寧かつスタイリッシュで、台詞を抑えた演出と相まって、西部劇を思わせる研ぎ澄まされた世界を作り上げている。
タイトルの“SISU”とは、正確な翻訳が難しいフィンランド語で、すべての希望が失われた状況でも諦めない、不屈の意志や勇気を意味する。アアタミは人間離れした生命力だけでなく、悲しみを抱えてなお前進する姿によって、その精神を体現している。シッチェス・カタロニア国際映画祭2022で最優秀作品賞、男優賞、撮影賞、作曲賞の4部門に輝いた本作は、北欧映画ならではの過激さと洗練された映像美を同時に味わえる、完成度の高いバイオレンスアクションである。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
