映画『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦』(2012)を紹介&解説。
映画『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦』概要
映画『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦』は、白石晃士監督(『ノロイ』『オカルト』)が、日本を代表する都市伝説のひとつ“口裂け女”を題材に描くPOV形式のモキュメンタリー・ホラー。
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズの第1作で、映像制作会社に届いた投稿映像をきっかけに、ディレクターの工藤、アシスタントの市川、カメラマンの田代が口裂け女の正体を追っていく。主演は大迫茂生、共演に久保山智夏、白石晃士、西山真来ら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦』 |
|---|---|
| 製作年 | 2012年 |
| 日本公開日 | 2012年7月4日(DVD発売) |
| ジャンル | ホラー |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 71分 |
| 次作 | 『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-02 震える幽霊』 (2012) |
| 監督・脚本・撮影 | 白石晃士 |
|---|---|
| 製作総指揮 | 原啓二郎 |
| 編集 | 宮崎歩 |
| 出演 | 大迫茂生/久保山智夏/白石晃士/西山真来/舘野豪/村上ROCK/仁科貴/松本雅子/富岡邦明 |
| 製作 | ニューセレクト(制作:ビデオプランニング) |
| 配給 | アルバトロス(DVD) |
あらすじ
ある映像制作会社に、1本の投稿映像が送られてくる。そこに映っていたのは、トレンチコートを着てマスクをした長髪の女。撮影者に気づいた女は突然ものすごい速度で走り出し、彼らを追いかけてきたという。
「マスク」「コート」「長身」「足が速い」という特徴から、日本の有名な都市伝説“口裂け女”ではないかと考えたディレクターの工藤は、アシスタントの市川、カメラマンの田代とともに投稿者への取材を開始。やがて一行は、女が出現した現場へ向かい、その正体を突き止めようとする。
主な登場人物(キャスト)
工藤仁(大迫茂生):映像制作会社のディレクター。怪奇現象を前にしても臆することなく踏み込み、口裂け女を撮影するだけでなく“捕獲”しようと考えるなど、強引かつ破天荒な方法で取材を進めていく。
市川実穂(久保山智夏):工藤のアシスタント。暴走しがちな工藤に振り回されながら、田代とともに怪奇現象の取材に同行する。
田代正嗣(白石晃士):工藤たちの取材に同行するカメラマン。劇中で起こる出来事を撮影し続け、本作のPOV映像を担う人物。
口裂け女(西山真来):投稿映像に映り込んだ謎の女。マスクとトレンチコートを身につけ、撮影者を驚異的な速度で追跡するなど、都市伝説として語り継がれてきた“口裂け女”を思わせる特徴を持つ。
矢野明(舘野豪):口裂け女らしき存在を撮影した投稿者のひとり。工藤たちの取材を受け、怪異に遭遇した際の状況を語る。
北村一史(村上ROCK):矢野とともに怪異に遭遇した投稿者。工藤たちを口裂け女が現れた場所へと導く。
作品の魅力解説・レビュー
「口裂け女を捕獲する」というバカバカしい発想を本気でやる面白さ
白石晃士監督が得意とするモキュメンタリー形式の怪奇作品として幕を開けた「コワすぎ!」シリーズ。その記念すべき第1弾となる本作が題材に選んだのは、日本人であれば誰しも一度は耳にしたことがあるであろう有名都市伝説“口裂け女”である。
とはいえ、本作の妙味は、口裂け女を現代的なホラーとして再構築した点だけに留まらない。「神出鬼没に出没し、常軌を逸した速度で疾走するという口裂け女を、あろうことか実際に捕獲しようとする」——冷静に考えれば笑ってしまうほど荒唐無稽なこの企画に、登場人物たちは大真面目に挑んでいくのだ。
怪異から逃げ惑うのではなく、むしろ自ら追い立て、捕縛に向かう。この常識を逸脱した行動力こそが、恐怖と笑いが紙一重のところで同居する「コワすぎ!」ならではの異様なテンションを、早くも第1作の時点で明確に規定している。
手ぶれや見えなさまで武器にするモキュメンタリーの臨場感
映像面においても、白石監督作品らしい特徴が随所に発揮されている。手持ちカメラによる激しい揺れ、そして肝心な対象がはっきりと捉えきれない視界の悪さが、実に効果的に機能しているのだ。
周到に整えられた劇映画の映像とは対照的に、ここでは撮影者自身も眼前で何が起きているのかを把握できないまま、ただカメラだけが回り続ける。その粗さこそが、「映画として撮影された映像」ではなく、「本当にどこかの制作会社が怪奇現象を取材し、その記録として残した映像」であるかのような生々しい感覚へとつながっていく。
低予算のオリジナルビデオゆえの荒削りな部分も確かに散見されるが、むしろ映像が整っていないというその事実そのものが、フェイクドキュメンタリーという形式と噛み合い、本作ならではの生々しさを生み出している。
工藤の強烈な人物像まで“実在しそう”に見えてくる
そして、シリーズ全体を貫く大きな特徴となるのが、“工藤ディレクター”という、あまりに強烈なキャラクターの存在だ。
年下や女性、ホームレスといった相手に対し、容赦なく高圧的な態度を取り続けるがゆえに、観客としては素直に腹が立ってしまう場面も少なくない。だが、これほどまでに苛立たされること自体が、「こういう撮影現場のおじさん、いかにも実在しそうだ」と観る者に思わせるほど、人物造形が徹底して生々しいことの証左にほかならない。
いかに怪異だけをリアルに描き出そうとも、そこで動く人間が作り物めいていては、“モキュメンタリー”という形式はそもそも成立し得ない。その点で本作は、工藤の身勝手な振る舞いから、市川たちとのぎこちない関係性に至るまでを丁寧に織り込むことで、現実の取材班そのものといった空気を巧みに作り上げている。
超常現象それ自体がもたらす恐怖と、「この面々であれば、本当にこんな無茶をやりかねない」と思わせる人物のリアリティ——その両者ががっちりと噛み合うことで、シリーズ第1作にしてすでに、ここだからこそ味わえる異様な世界観が完成しているのだ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
