『マタンゴ』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『マタンゴ』(1963)を紹介&解説。


映画『マタンゴ』概要

映画『マタンゴ』は、『ゴジラ』の本多猪四郎監督と特技監督円谷英二が、霧に閉ざされた無人島で崩壊していく男女7人を描いたSFホラー。ウィリアム・ホープ・ホジスンの短編小説『闇の声』をもとに、星新一と福島正実が原案、木村武が脚本を手がけた。怪菌による肉体の変異だけでなく、飢えと孤立が暴き出す人間の欲望や階級意識を見つめた、東宝特撮の異色作である。

作品情報

日本版タイトル 『マタンゴ』
英題 Matango(米国放送題:Attack of the Mushroom People)
製作年 1963年
日本公開日 1963年8月11日
ジャンル SF/ホラー/サスペンス
製作国 日本
原作 ウィリアム・ホープ・ホジスン『闇の声』(The Voice in the Night)
上映時間 89分
監督 本多猪四郎
特技監督 円谷英二
脚本 木村武
原案 星新一/福島正実
製作 田中友幸
撮影 小泉一
特技撮影 有川貞昌/富岡素敬
編集 兼子玲子
作曲 別宮貞雄
出演 久保明/水野久美/小泉博/佐原健二/太刀川寛/土屋嘉男/八代美紀
製作・配給 東宝

あらすじ

大学助教授の村井研二ら男女7人を乗せたヨットが暴風雨に遭い、深い霧に包まれた無人島へ漂着する。一行は、乗組員が消え、船内をカビに覆われた難破船を発見。残された記録には、島に生えるキノコを食べてはならないという警告が記されていた。食料が尽きて疑心暗鬼が広がる中、キノコの甘い誘惑と謎の怪人の影が、彼らの理性と関係を侵食していく。

主な登場人物(キャスト)

村井研二(久保明):城東大学心理学研究室の助教授。比較的冷静に一行をまとめようとするが、極限状態の中で厳しい選択を迫られる。

関口麻美(水野久美):歌手で、笠井の愛人。華やかさと奔放さをまとい、島で露わになる欲望と誘惑を象徴する存在となる。

作田直之(小泉博):笠井産業の社員で、ヨットの扱いに長けた航海の責任者。生存のための秩序を守ろうとする。

小山仙造(佐原健二):臨時雇いの漁師。食料不足が深刻になるにつれ、仲間への不信と生存本能を強めていく。

笠井雅文(土屋嘉男):笠井産業の社長で、ヨットの所有者。金と立場が通用しない無人島で、それまで保たれていた優位性を失っていく。

相馬明子(八代美紀):村井の教え子で婚約者。良識を失っていく一行の中で、村井とともに理性を保とうとする。

作品の魅力解説

キノコ怪人より先に迫ってくる、人間集団の崩壊

本作の中心にあるのは、怪物との戦闘ではなく、孤立した人間たちが秩序を失っていく過程である。食料の配分、労働の負担、金や性をめぐる駆け引きが対立を生み、都会では隠されていた身勝手さや階級意識が次々と露出する。見た目の醜い変貌だけでなく、過酷な状況に追いやられた人間の醜い内面が発露するという、二重の意味での「変貌」が描かれている。

「食べてはならない」という単純で強力な誘惑

島のキノコには、口にすれば空腹と苦痛を忘れ、幸福感を得られるという抗いがたい魅力がある。危険だと理解しながらも、現実に耐え続けるより快楽へ身を委ねたくなる。その選択を単なる愚行として片づけず、苦痛の多い現実と幸福な変容のどちらが正しいのかという問いにまで広げる点が、本作をカルト的な怪奇映画たらしめている。

東宝特撮が作り上げた、湿度と腐敗の世界

霧、ぬかるんだ密林、菌糸に侵された船内、色鮮やかで毒々しいキノコが、画面全体に湿った不快感を生む。円谷英二率いる特撮班の造形と美術は、巨大怪獣とは異なる人間大の恐怖に力を注ぎ、笑っているようにも見えるマタンゴの姿を忘れがたいものにした。Criterion Channelも本作を、本多猪四郎が怪獣映画から離れて手がけた不穏な心理サバイバル・スリラーとして紹介している。

映画データベースTOPへ

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む