映画『アナと雪の女王』(2013)を紹介&解説。
映画『アナと雪の女王』概要
映画『アナと雪の女王』は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが手がけたミュージカル・ファンタジー・アニメーション。ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『雪の女王』に着想を得て、触れたものを凍らせる力を持つ姉エルサと、姉を救おうとする妹アナの冒険を描く。監督はクリス・バックとジェニファー・リー。声の出演はクリステン・ベル、イディナ・メンゼル、ジョナサン・グロフ、ジョシュ・ギャッド、サンティノ・フォンタナら。日本では神田沙也加、松たか子らの吹替と楽曲も大きな話題を呼んだ。
作品情報
| 日本版タイトル | 『アナと雪の女王』 |
|---|---|
| 原題 | Frozen |
| 製作年 | 2013年 |
| 本国公開日 | 2013年11月27日 |
| 日本公開日 | 2014年3月14日 |
| ジャンル | アニメーション/ミュージカル/ファンタジー/アドベンチャー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作(着想) | ハンス・クリスチャン・アンデルセン『雪の女王』(童話) |
| 上映時間 | 102分 |
| 次作 | 『アナと雪の女王2』(2019) |
| 監督 | クリス・バック/ジェニファー・リー |
|---|---|
| 脚本 | ジェニファー・リー |
| ストーリー | クリス・バック/ジェニファー・リー/シェーン・モリス |
| 製作 | ピーター・デル・ヴェッチョ |
| 製作総指揮 | ジョン・ラセター |
| 撮影 | スコット・ビーティ(レイアウト)/モヒト・カリアンプール(ライティング) |
| 編集 | ジェフ・ドラヘイム |
| 作曲 | クリストフ・ベック |
| 歌曲 | クリステン・アンダーソン=ロペス/ロバート・ロペス |
| 出演 | クリステン・ベル/イディナ・メンゼル/ジョナサン・グロフ/ジョシュ・ギャッド/サンティノ・フォンタナ/アラン・テュディック/キアラン・ハインズ |
| 日本語吹替 | 神田沙也加/松たか子/原慎一郎/武内駿輔/津田英佑/多田野曜平/安崎 求 |
| 製作 | ウォルト・ディズニー(ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ/ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ) |
| 配給 | ウォルト・ディズニー |
あらすじ
アレンデール王国の王女エルサは、触れたものを凍らせる不思議な力を持って生まれた。幼いころ、その力で妹アナを傷つけてしまったエルサは、周囲からもアナからも距離を置き、城の中で力を隠しながら成長する。やがて女王となる戴冠式の日、抑えていた力が暴走し、王国は真冬の世界へと変わってしまう。
雪山へ逃げたエルサを連れ戻すため、アナは山男クリストフ、相棒のトナカイ・スヴェン、夏に憧れる雪だるまオラフとともに旅に出る。凍りついた王国を救う鍵は、エルサの魔法を消すことではなく、姉妹が互いの心に向き合うことにあった。
主な登場人物(キャスト)
アナ(クリステン・ベル/日本語吹替:神田沙也加):アレンデール王国の妹王女。明るく行動的で、長く心を閉ざしてきた姉エルサとの関係を取り戻そうとする。王国が雪と氷に包まれた後も、危険を顧みずエルサを追いかける。
エルサ(イディナ・メンゼル/日本語吹替:松たか子):アレンデール王国の姉王女で、のちに女王となる。雪や氷を生み出す力を持ち、その力で大切な人を傷つけることを恐れて孤独を選んできた。劇中歌「Let It Go」とともに、自分自身を解放していく姿が描かれる。
クリストフ(ジョナサン・グロフ/日本語吹替:原慎一郎):山で氷を売って暮らす青年。相棒のトナカイ・スヴェンと行動をともにしている。最初はアナの無謀さに振り回されるが、旅を通じて彼女を支える存在となる。
オラフ(ジョシュ・ギャッド/日本語吹替:武内駿輔):エルサの魔法によって生まれた雪だるま。無邪気で人懐っこく、夏に強い憧れを抱いている。物語に笑いをもたらしながら、“愛”についての素朴で核心的な言葉を残す。
ハンス(サンティノ・フォンタナ/日本語吹替:津田英佑):南諸島からアレンデールを訪れた王子。戴冠式の日にアナと出会い、彼女と急速に距離を縮める。物語の中で、アナの恋愛観と“真実の愛”の意味を揺さぶる存在となる。
作品の魅力解説
『アナと雪の女王』の大きな魅力は、ディズニー作品が長く描いてきた“真実の愛”を、王子と王女の恋愛だけではなく、姉妹の絆として再定義した点にある。アナとエルサは性格も立場も異なるが、互いを思う気持ちが物語の中心に置かれており、恋愛ファンタジーでありながら家族のドラマとしても強く響く。
音楽面では、「Let It Go」が作品の象徴となった。エルサが抑え込んできた力と感情を解放する場面は、歌、映像、キャラクターの変化が一体になった名シーン。日本語版では松たか子による劇中歌、May J.によるエンドソング「Let It Go~ありのままで~」も広く親しまれた。
映像面でも、雪と氷の表現が本作ならではの見どころになっている。氷の城、凍りついたアレンデール、雪山の風景は、ミュージカルの高揚感とファンタジーの美しさを同時に引き立てる。子ども向けの冒険映画として楽しめる一方で、孤独、自己受容、家族との関係というテーマを描いた作品として、大人にも届く一本となっている。
ストーリー解説(ネタバレ)
幼い姉妹と、エルサの魔法
物語の舞台は、北の王国アレンデール。王家の姉妹であるエルサとアナは、幼いころ非常に仲の良い姉妹として育っていた。姉のエルサには、生まれながらに雪や氷を生み出す不思議な力があり、妹のアナはその力を恐れるどころか、むしろ一緒に遊ぶことを楽しんでいた。
ある夜、アナは眠っているエルサを起こし、「雪だるまを作ろう」と誘う。ふたりは城の広間で雪を降らせ、氷の足場を作りながら無邪気に遊ぶ。しかし、アナがはしゃいで飛び跳ねるうち、エルサは勢いに追いつけなくなり、誤って魔法をアナの頭に当ててしまう。アナは意識を失い、エルサは自分の力が大切な妹を傷つけたことに動揺する。
両親である国王と王妃は、アナを救うため、山に住むトロールたちのもとへ向かう。トロールの長パビーは、アナの命を救うために、彼女の記憶からエルサの魔法に関する部分を取り除く。アナはエルサの力について忘れ、姉妹が雪や氷で遊んでいた記憶も、美しい普通の思い出へと置き換えられる。
閉ざされた城と、離れていくアナとエルサ
アナは救われたものの、エルサの力は危険なものとして扱われるようになる。国王と王妃は城の門を閉ざし、使用人も最小限にして、エルサの力を外部に知られないようにする。エルサ自身にも「隠すこと」「感じないこと」が求められ、彼女は手袋をはめて力を抑えようとする。
一方、記憶を失ったアナには、なぜ突然エルサが自分を避けるようになったのかが分からない。アナは何度もエルサの部屋の扉を叩き、かつてのように遊ぼうと呼びかける。しかし、エルサは妹を再び傷つけることを恐れ、扉の向こうからも応じることができない。
この時期のアナは、広い城の中で孤独に過ごすようになる。明るく社交的な性格であるにもかかわらず、城の門は閉ざされ、姉とも距離を置かれているため、彼女は外の世界や人との出会いに強い憧れを抱くようになっていく。
両親の死と、完全な孤独
姉妹が成長した後、国王と王妃は船旅に出る。しかし、嵐に遭い、ふたりはそのまま帰らぬ人となる。両親の死によって、アナとエルサはさらに深い孤独の中に置かれる。
アナは悲しみの中でもエルサに寄り添おうとし、部屋の外から声をかける。しかし、エルサは扉を開けることができない。彼女の部屋の中では、抑えきれない魔法が壁や床を凍らせており、エルサの恐怖と悲しみがそのまま氷の形になって広がっている。
両親を失ったことで、本来なら支え合うはずの姉妹は、ますます分断されてしまう。アナは理由も分からず姉に拒まれ続け、エルサは自分の力と感情を抑え込むことだけに集中するようになる。
エルサの戴冠式と、久しぶりに開かれる城門
やがてエルサは成人し、アレンデールの女王として戴冠式を迎える。長年閉ざされていた城門は、この日だけ国民や来賓に向けて開かれることになる。アナにとっては、外の世界と触れ合い、新しい人々に出会える待望の日だった。
一方のエルサにとって、戴冠式は大きな試練だった。多くの人の前に立ち、手袋を外して王笏や宝珠を持たなければならないからである。彼女は魔法が暴走しないよう必死に感情を抑え、儀式をなんとか終える。
戴冠式の日、アナは南諸島から来たハンス王子と偶然出会う。ふたりはすぐに意気投合し、長く孤独だったアナは、ハンスとの出会いに運命のようなものを感じる。ハンスもアナに優しく接し、ふたりは短時間で急速に距離を縮めていく。
アナとハンスの婚約、そして姉妹の対立
舞踏会の夜、アナとハンスは結婚を決める。アナは喜びのままエルサに婚約を報告し、祝福と許可を求める。しかし、エルサは出会ったばかりの相手と結婚するなど認められないと、はっきり反対する。
アナはこれまでずっと孤独だった反動もあり、エルサの反対を冷たさとして受け止める。なぜ自分の幸せを認めてくれないのか、なぜ長年自分を避けてきたのかと感情をぶつける。エルサもまた、自分の力が暴かれることへの恐怖と、妹の無鉄砲な決断への不安から冷静さを失っていく。
言い争いの中で、アナはエルサの手袋を奪ってしまう。感情を抑えきれなくなったエルサは、ついに人々の前で氷の魔法を放ってしまう。会場は凍りつき、来賓や国民は女王の力を目撃して恐怖に包まれる。エルサ自身も自分の力を見られたことに動揺し、その場から逃げ出す。
アレンデールを包む冬と、エルサの逃亡
エルサが城を飛び出すと、彼女の魔法は王国全体に影響を及ぼす。夏だったはずのアレンデールは、一瞬にして雪と氷に包まれ、港も町も真冬のような世界へ変わってしまう。
エルサは人々から怪物のように恐れられ、自分が王国を危険にさらしてしまったことを知る。だが、その場に戻っても力を制御できる自信はない。彼女はひとりで北の山へ向かい、アレンデールから離れていく。
アナは、姉が本当に人々を傷つけようとしたわけではないと信じている。王国の混乱を収めるため、そして姉を連れ戻すため、アナはエルサを追って旅に出る。城と王国の管理は、婚約者であるハンスに一時的に任せることになる。
山小屋での出会い、クリストフとスヴェン
雪山へ向かったアナは、慣れない冬の環境に苦戦する。ドレス姿のまま凍えるような寒さの中を進むが、途中で馬を失い、山小屋兼店のような場所にたどり着く。そこを営むオーケンの店で、アナは冬用の服を手に入れようとする。
同じ店には、氷を売って暮らす青年クリストフもやって来る。彼は相棒のトナカイ・スヴェンとともに山で生活しており、突然訪れた異常な冬によって商売にも影響を受けていた。アナはエルサの行方を知るため、北の山に詳しいクリストフに案内を頼む。
クリストフは最初、アナの勢いに巻き込まれる形で同行する。アナは王女らしい無邪気さと強引さを見せ、クリストフは現実的で皮肉っぽい態度を取る。性格の違うふたりだが、エルサを追うという目的のため、スヴェンも含めた一行として雪山を進んでいく。
オラフとの再会と、エルサが作った雪の記憶
旅の途中、アナとクリストフはしゃべる雪だるまオラフに出会う。オラフは、エルサの魔法によって命を与えられた存在であり、幼いころにアナとエルサが一緒に作っていた雪だるまの記憶を思わせる姿をしている。
アナはオラフを見て、幼いころに姉と遊んでいた感覚をかすかに取り戻す。オラフ自身は非常に無邪気で、雪だるまでありながら夏に憧れている。彼の存在はコミカルだが、同時に、エルサの中にアナとの楽しかった記憶が残っていることを示す存在でもある。
オラフはエルサが作った氷の城の場所を知っており、アナたちを案内する。アナは、姉がただ逃げたのではなく、自分の力で新しい居場所を作っていることを知ることになる。
氷の城で解放されたエルサ
北の山にたどり着いたエルサは、人目を気にせず初めて自分の力を自由に使う。彼女は雪と氷で巨大な城を作り上げ、王国で抑え込んでいた力を解放する。ここでエルサは、恐れられる女王ではなく、誰にも干渉されない自分として生きようとする。
アナたちは、その氷の城に到着する。アナはエルサを説得し、アレンデールに戻って冬を終わらせてほしいと頼む。しかし、エルサは自分にはそれができないと考えている。力を制御できない以上、戻ればまた誰かを傷つけるだけだと思い込んでいるからである。
アナは、姉妹なら一緒に解決できると訴える。だが、エルサの恐怖は簡単には消えない。アナが王国全体が冬になっていることを伝えると、エルサはさらに動揺する。自分の力が遠く離れたアレンデール全体を凍らせたと知り、彼女はますます追い詰められていく。
エルサの魔法がアナの心臓を傷つける
混乱したエルサは、アナを遠ざけようとする。その過程で、再び魔法が暴走し、今度はアナの胸に氷の力が当たってしまう。幼いころは頭に魔法が当たったため、トロールの力で記憶を変えることで救うことができた。しかし、今回はより深刻で、アナの体の内側から異変が起こり始める。
直後、エルサは自分がまた妹を傷つけてしまったことに恐怖する。彼女はアナたちを城から追い払うため、巨大な雪の怪物マシュマロウを作り出す。アナ、クリストフ、オラフ、スヴェンは氷の城から逃げ出すが、アナの髪には白い部分が増え、彼女の体に異変が起きていることが分かる。
アナはまだ自分の状態の深刻さを完全には理解していない。だが、クリストフは彼女の様子を見て、ただの寒さや疲労ではないと感じる。彼は、幼いころから知っているトロールたちなら何か分かるかもしれないと考え、アナを彼らのもとへ連れていく。
トロールたちと、真実の愛だけがアナを救うという宣告
クリストフはアナをトロールたちの谷へ連れて行く。トロールたちはクリストフを家族のように迎え、アナを見て彼の恋人だと勘違いする。最初はにぎやかで明るい場面として展開するが、やがてアナの体に起きている異変が深刻なものだと判明する。
長のパビーは、アナの胸に入った氷が心臓に達していることを説明する。頭を傷つけられた幼いころとは違い、心臓に入った氷は簡単には取り除けない。このままでは、アナの体は内側から完全に凍ってしまう。
パビーは、アナを救うには「真実の愛の行い」が必要だと告げる。アナたちは、その言葉を「真実の愛のキス」だと解釈する。アナには婚約者ハンスがいるため、彼のキスなら自分を救えるはずだと考え、クリストフはアナを急いでアレンデールへ連れ戻すことを決める。
ここから物語は、エルサを連れ戻す冒険から、アナ自身の命を救うための時間との戦いへと変化していく。姉妹のすれ違いによって王国は凍りつき、アナの体にも氷が広がり始める。物語の核心として、“真実の愛”とは何かという問いが前面に出てくる。
アナを城へ戻すクリストフと、ハンスへの望み
アナの体は少しずつ冷たくなり、髪も白く変わっていく。時間が残されていないことを悟ったクリストフは、彼女をアレンデールへ連れ戻すため、スヴェンとともに急いで山を下りる。
この時点でクリストフは、アナへの思いを自覚し始めている。しかし、アナには婚約者ハンスがいる。アナを助けることを最優先にしたクリストフは、自分の気持ちを押しつけず、彼女をハンスのもとへ送り届ける決断をする。
アレンデールでは、ハンスが混乱した王国を一時的にまとめていた。突然の冬によって人々は苦しみ、城には寒さをしのぐための避難場所が用意されている。アナが瀕死の状態で戻ってくると、人々は彼女を城内へ運び、ハンスとの対面が実現する。
ハンスの裏切りと、アナの絶望
アナはハンスに、自分を救うためには「真実の愛のキス」が必要だと伝える。これまでアナは、ハンスとの出会いを運命だと信じていた。戴冠式の日に出会い、すぐに心を通わせ、婚約まで決めた彼こそが、自分を救ってくれる存在だと思っていた。
しかし、ハンスはキスを拒む。そしてここで、彼の本性が明らかになる。ハンスは最初からアナを本気で愛していたわけではなかった。彼は南諸島の王子だが、兄弟が多く、自分が王位を継ぐ可能性は低い。そこでアレンデールの王族と結婚し、王国を手に入れようとしていたのである。
当初、ハンスはエルサを狙うことも考えていたが、エルサが周囲を拒む人物だったため、孤独で人を信じやすいアナに近づいた。エルサが魔法を暴走させ、アナが衰弱したことで、彼はふたりを排除して自分がアレンデールを支配する機会を得たと考える。
ハンスは部屋の暖炉の火を消し、アナをひとり残して立ち去る。外部には、アナがエルサに殺されたように見せかけようとする。アナは「真実の愛」だと信じていた相手に裏切られ、体だけでなく心まで凍りつくような絶望に沈んでいく。
エルサを討とうとするハンス
そのころ、エルサはアレンデール側の人々に追われていた。ウェーゼルトン公爵は、エルサの力を危険視し、彼女を怪物として排除しようとする。ハンスは表向きには冷静で民を思う人物のように振る舞うが、実際には状況を利用してエルサを追い詰めていく。
氷の城には、ハンスやウェーゼルトン公爵の部下たちが向かう。エルサは攻撃され、自分を守るために力を使う。兵士たちを殺すつもりはないが、恐怖と怒りによって力は激しくなり、彼女はますます危険な存在として見られてしまう。
ハンスはエルサを殺すこともできる状況にいたが、その場では彼女を止め、結果的にエルサは気を失って捕らえられる。彼はこの行動によって、あくまで王国を守るために動く誠実な人物であるかのように見せる。
牢に入れられたエルサと、止まらない冬
エルサはアレンデールの城の牢に閉じ込められる。手には拘束具がつけられ、魔法を使えないようにされている。目を覚ましたエルサは、窓の外に広がる凍りついた王国を見て、自分の力がもたらした被害の大きさを改めて知る。
ハンスはエルサに、冬を終わらせるよう求める。しかし、エルサにはその方法が分からない。力を止めたいと思っても、恐怖と混乱が増すほど魔法は強くなってしまう。自分でも制御できない力によって人々を苦しめていることが、さらに彼女を追い詰める。
エルサは牢から逃げ出そうとし、拘束具を凍らせて破壊する。彼女が脱出すると、王国を覆う吹雪はさらに激しさを増す。アレンデールは視界も奪われるほどの嵐に包まれ、エルサ自身の恐怖がそのまま天候に反映されていく。
オラフがアナを見つける
城の部屋に置き去りにされたアナは、体が凍りつき始め、動くことも困難になっていく。そんな彼女を見つけるのがオラフである。オラフは暖炉に火をつけ、アナの体を少しでも温めようとする。
雪だるまであるオラフにとって、火のそばにいることは自分の体が溶ける危険を意味する。それでも彼は、アナを助けるために自分の身を顧みない。ここでオラフは、愛とは「自分よりも相手を大切に思うこと」だと語る。
アナはハンスに裏切られたことで、真実の愛を見失いかけていた。しかし、オラフの言葉によって、彼女はクリストフの存在を思い出す。オラフは、クリストフがアナを城へ送り届けた後も、彼女を深く思っていたことを伝える。アナは、自分を本当に大切にしてくれていたのはクリストフだったのではないかと気づき始める。
クリストフの帰還と、アナの最後の望み
クリストフはアナをハンスのもとへ送り届けた後、一度は城を離れていた。しかし、スヴェンはクリストフの本心を見抜いている。クリストフ自身も、アナへの思いを抑えきれなくなり、彼女のもとへ戻る決意をする。
吹雪が激しくなる中、クリストフとスヴェンはアレンデールへ引き返す。視界は悪く、氷は割れ、王国全体が危険な状態にある。それでもクリストフは、アナを助けるために進み続ける。
一方、アナもオラフに助けられながら城を出て、クリストフのもとへ向かおうとする。彼のキスこそが自分を救う「真実の愛」かもしれないと考えたからである。しかし、アナの体はすでに限界に近づいており、歩くことさえ困難になっている。
ハンスの嘘と、エルサへの処刑宣告
ハンスはアナが死んだと周囲に偽って伝える。そして、彼女はエルサに殺されたのだと告げる。これにより、エルサは妹を殺した危険な女王として扱われることになる。
ハンスは、アナとの結婚を根拠に自分がアレンデールを導く立場に立とうとする。そのうえで、王国を救うためにはエルサを止めなければならないと主張する。彼の狙いは、アナとエルサをともに失わせ、自分が権力を握ることだった。
逃げ出したエルサは、吹雪の中でハンスと対峙する。そこでハンスは、アナが死んだとエルサに告げる。妹を傷つけることを何より恐れていたエルサは、その言葉に打ちのめされる。彼女の心が折れた瞬間、激しかった吹雪が一時的に止まる。
アナの選択と、真実の愛の行い
吹雪が止まったことで、アナは遠くにクリストフの姿を見つける。彼のもとへ向かえば、真実の愛のキスによって自分は救われるかもしれない。アナは最後の力を振り絞り、クリストフへ向かおうとする。
しかし、そのときアナは別の光景を目にする。ハンスが剣を振り上げ、無防備なエルサを殺そうとしていた。アナは自分が助かる可能性と、姉を救うことのどちらかを選ばなければならなくなる。
アナはクリストフのもとへ行くことをやめ、エルサの前に飛び込む。ハンスの剣が振り下ろされる瞬間、アナの体は完全に凍りつき、氷の像となる。剣は凍ったアナに当たり、砕けてしまう。アナは自分の命を救うためではなく、姉を守るために最後の力を使ったのである。
これこそが、パビーの言っていた「真実の愛の行い」だった。アナを救うものは、誰かから与えられるキスではなく、アナ自身がエルサを思って選んだ自己犠牲の行動だった。
凍りついたアナと、エルサの涙
エルサは、自分をかばって凍りついたアナを見て絶望する。妹を避け続けてきたのは、彼女を傷つけたくなかったからだった。それにもかかわらず、アナは最後までエルサを愛し、命をかけて守った。
エルサは凍ったアナを抱きしめ、深い悲しみの中で涙を流す。周囲にいたクリストフ、オラフ、スヴェンも、その光景を見守る。アナは完全に凍ったように見え、誰もが彼女を失ったと思う。
しかし、アナの体は少しずつ元に戻っていく。姉を守るための自己犠牲が「真実の愛の行い」となり、心臓に入り込んだ氷を溶かしたのである。アナは命を取り戻し、エルサと再び抱き合う。
エルサが知る、力を制御する鍵
アナが救われたことで、エルサは大切なことに気づく。自分の魔法を制御する鍵は、恐怖で力を押さえ込むことではなく、愛だった。これまでエルサは「隠さなければならない」「感じてはいけない」と教えられ、自分の力を恐れ続けてきた。しかし、アナの愛が氷を溶かしたことで、彼女は愛こそが力を導くものだと理解する。
エルサはその気づきによって、王国を覆っていた冬を終わらせる。雪と氷は消え、アレンデールに夏が戻る。人々は、エルサの力が単なる恐ろしいものではなく、美しく、正しく使うことのできるものだと知る。
オラフは夏が戻ったことで溶けそうになるが、エルサは彼の頭上に小さな雪雲を作る。これによって、オラフは夏の中でも溶けずに過ごせるようになる。彼が夢見ていた「夏」を、エルサの魔法が叶える形になる。
ハンスへの決着と、アナの成長
ハンスの裏切りは明らかになり、彼はアレンデールから追放されることになる。アナは彼に対し、かつてのように夢見る少女として振る舞うのではなく、自分を騙した相手として毅然と向き合う。彼女はハンスに一撃を見舞い、彼との関係に明確な終止符を打つ。
ウェーゼルトン公爵についても、アレンデールとの取引が打ち切られる。エルサを怪物扱いし、自国の利益のために騒動を利用しようとした彼の姿勢は、王国に受け入れられなかった。
こうして、外部からアレンデールを利用しようとした者たちは退けられる。一方で、アナはハンスとの経験を通じて、出会ってすぐの恋を無条件に信じる危うさから成長する。彼女の明るさや人を信じる心は失われないが、その愛情はより成熟したものへ変わっていく。
クリストフへの贈り物と、新しい関係
騒動が収まった後、アナはクリストフに新しいソリを贈る。彼の仕事道具だったソリは、冒険の途中で壊れてしまっていた。アナはそのことをきちんと覚えており、感謝の気持ちを形にする。
クリストフは驚きながらも喜び、アナとの距離は改めて近づいていく。ふたりの関係は、ハンスとの急な婚約とは対照的である。最初は反発し合い、旅を通して少しずつ相手を知り、互いを思うようになった関係として描かれる。
アナとクリストフはキスを交わし、恋愛関係の始まりが示される。ただし、物語の結末における最大の愛は、あくまで姉妹の絆である。クリストフとの恋は、アナが自分自身の経験を経て選び取った新しい一歩として位置づけられている。
開かれた城門と、姉妹の再出発
物語の最後、アレンデールの城門は再び開かれる。かつてエルサの力を隠すために閉ざされ、アナを孤独にしていた門は、もう閉じられたままではない。エルサは自分の力を隠すのではなく、王国の人々の前で使うことができるようになる。
城の中庭には氷のリンクが作られ、人々はエルサの魔法によって生まれた氷の上で楽しむ。エルサは恐怖の対象ではなく、王国の女王として、人々とともに生きる存在になっている。
アナとエルサも、長い断絶を乗り越え、再び姉妹として向き合う。アナは姉を恐れず、エルサも妹を遠ざけない。ふたりは、閉ざされた扉の向こうにいた過去から解放される。
『アナと雪の女王』は、王子のキスによって救われる物語ではなく、姉妹の愛と自己犠牲によって呪いが解ける物語として結末を迎える。エルサは自分の力を受け入れ、アナは本当の愛を見極める。王国に夏が戻るだけでなく、姉妹の関係にもようやく温かな季節が訪れるのである。
