マット・デイモンがオスカー・キャンペーンへの違和感を語り、ノーラン監督最新作『オデュッセイア』での体験に触れた。
Netflixのクライム・スリラー『The Rip(原題)』のプロモーションツアー中、マット・デイモンがNetflixのポッドキャスト番組「Skip Intro」に出演し、オスカー・キャンペーンに対する率直な思いを明かした。アワードシーズン真っ只中という時期に語られたその言葉は、長年ハリウッドの中心でキャリアを築いてきた俳優ならではの視点を映し出している。
アワードシーズンへの違和感「完全に逆行している」
番組の司会を務めるクリスタ・スミスから「ハリウッドで見逃すことを好む事柄」について問われると、デイモンは即座に「アワードシーズンだね。100パーセント」と答えた。
その理由について彼は、「僕が好きじゃないのは、このキャンペーンという考え方なんだ」と前置きしたうえで、「完全に逆行しているし、奇妙に思えるよ」と語っている。俳優としてオスカーに3度ノミネートされ、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で脚本賞を受賞するなど、アワードと深く関わってきたデイモンだからこそ、その仕組みへの違和感は率直なものだ。
一方で彼は、「もしかしたら映画にとっては良いことなのかもしれない」とも述べ、「全てを表に出して、文化が映画について考えたり話したりするきっかけになるから。そうであることを願っているよ……」と付け加えた。キャンペーン文化への疑問を示しつつも、映画そのものが語られる場が生まれる可能性には、一定の期待をにじませている。
『オデュッセイア』で得た感覚「フィルムで撮る最後の大作映画」
デイモンにとって、オスカー・キャンペーンを再び意識せざるを得ない存在となりそうなのが、クリストファー・ノーラン監督による最新作『オデュッセイア』だ。ギリシャ叙事詩を原作とする同作で主演を務めたデイモンは、撮影体験について「まだ消化しきれていない」と語りつつも、「深い影響を受けた」と振り返っている。
撮影を終えた直後の感覚について、彼は「去年『オデュッセイア』を撮影して、デヴィッド・リーン映画を作る人生で一度きりのチャンスのように感じたんだ、分かるかな?」と述べ、「フィルムで撮影する最後の大作映画を作っているような気がしたよ」と、その特別さを表現した。
さらにデイモンは、この仕事が自身のキャリアにおいて適切なタイミングで訪れたものだったと語っている。「あの仕事に何が求められていたかを客観的に見ると、人生のちょうど良いタイミングで来たと思うんだ」とし、「20年前にその仕事をやろうとしていたら、惨めだったと思うよ」と率直に明かした。一方で今回は「本当に楽しんだ、深く、1分1分を楽しんだよ」と語り、作品への没入感を強調している。
その背景には、経験を重ねた今だからこそ得られた心境の変化があったという。「知的には、起こることはコントロールできないけど、それに対してどう感じるかはコントロールできるという概念を理解していたんだ——言うは易く行うは難しだけどね」と語りつつ、「でも本当に感謝の気持ちを感じるということ——それは、これほどすばらしい役を、これほどすばらしい監督と、これほどすばらしい人々と、これほどすばらしいストーリーで演じられる喜びだけじゃなくて」と続けた。
その感覚は、俳優としての原点とも結びついていたという。デイモンは、「自分がどうやってこの業界に入ったか、キャリアをスタートさせたかに対する郷愁の感覚とも結びついていた」と述べ、『青春の輝き』を撮影していた頃に感じた「『これが本当に起こっているんだ』って感じた時の気持ち」と重ね合わせている。
IMAXフィルム撮影が切り開いた新たな表現の可能性
『オデュッセイア』は、IMAXフィルムカメラで全編撮影された初のハリウッド長編映画となった。デイモンは以前出演した「New Heights」ポッドキャストで、その撮影現場の特殊性について詳しく語っている。
IMAXカメラについて彼は、「IMAXカメラは本当にうるさいんだ。ブレンダーみたいな音がする、カメラが近くにある時は顔の前でクイジナートが回っているような音だよ」と説明し、「だからIMAXでこういう会話のシーンは今まで無かったんだ」と続けた。通常のIMAXカメラでは、「僕たちのこの会話はできないよ、だって僕たちの声が聞こえないからね」という。
それでも本作では、会話シーンを成立させるための工夫が重ねられた。「彼らはこういう会話シーンのためにIMAXの周りに巨大なものを作って、鏡のシステムを使って視線がカメラの近くになるようにして、相手の俳優と話せるようにしたんだ」とデイモンは振り返り、「どうやってやるかを考え出すために費やされた作業量は、彼が100パーセントIMAXでやりたかったからで、そして彼はやり遂げたんだ!」と、その執念を語っている。
この挑戦の一環として、『オデュッセイア』のために「ブリンプ」と呼ばれる新しいIMAXフィルムケーシングが開発され、カメラが発する騒音は大幅に軽減された。監督は昨年、映画誌『Empire』の取材で、「ブリンプシステムは画期的なものだ」と語り、「俳優の顔から30センチの距離で、彼らがささやいている間に撮影しても、使用可能な音が録れる。それによって開かれるのは、世界で最も美しいフォーマットでの親密な演技の瞬間なんだ」と、その成果を強調している。
【動画】マット・デイモンが語るオスカー観と『オデュッセイア』撮影の舞台裏
