『トゥルー・ディテクティブ』撮影中、ウディ・ハレルソンは共演するマシュー・マコノヒーの演技に強い苛立ちを感じていた。
重厚な空気感と緊張感あふれる演技で高い評価を受けたHBOドラマ『トゥルー・ディテクティブ』シーズン1。その裏側では、主演ふたりの間に演技への向き合い方をめぐる攻防があったという。ウディ・ハレルソンは最近出演したポッドキャストで、撮影当時の率直な感情を振り返っている。
撮影現場で噴き出したメソッド演技への苛立ち
マシュー・マコノヒーがゲスト出演したポッドキャスト「Where Everybody Knows Your Name」のエピソードの中で、ウディ・ハレルソンは『トゥルー・ディテクティブ』撮影中の本音を明かした。
ハレルソンによれば、マコノヒーは徹底したメソッド演技を貫いており、「撮影中、彼はラスト・コール本人だった」という。その状態に対し、彼は強い苛立ちを覚えていたと振り返る。
「彼はメソッド派なんだよ」と語った上で、ハレルソンは「このクソ野郎の顔を殴りたいと思ったことが何度もあったよ。キャラクターに入り込んでる彼にマジで腹が立ってたんだ」と率直な感情を吐露した。キャラクターに深く没入するマコノヒーの姿勢が、ハレルソン本人にさえ影響を及ぼしていたことがうかがえる。
マコノヒーが語った「無感情でいる」理由
ハレルソンの発言を受ける形で、マシュー・マコノヒー自身も当時の状況を説明している。彼は、キャラクターの精神状態を維持するため、テイクとテイクの間も感情を切り離した状態でいる必要があったと語った。
「僕はただ無感情なラスト・コールでいようとしてた」と振り返り、撮影直前の様子についても次のように説明している。
「そこに座ってたんだ。もうすぐ撮影が始まるところで、リハーサルをしてた」。その最中、ハレルソンから声をかけられたという。マコノヒーは、ふたりの演技スタイルの違いが端的に表れたやり取りを回想している。
「彼は『おまえと俺の仕事のやり方はさ、マコノヒー、俺がボールを打つ、おまえが打ち返す、俺が打ち返す。キャッチボールして、遊ぶんだよ』って」
ハレルソンが重視していたのは、相手との呼吸や掛け合いを楽しみながら作り上げる現場のリズムだった。一方でマコノヒーは、役柄に深く入り込み続けることで物語のトーンを保とうとしており、その姿勢がふたりのギャップを生んでいたことがうかがえる。
作品の暗さをめぐって生まれた対話のすれ違い
HBOドラマ『トゥルー・ディテクティブ』で、ウディ・ハレルソンとマシュー・マコノヒーは、ルイジアナの神秘的な田舎を舞台に連続殺人犯を追う刑事コンビを演じた。物語は一貫して重苦しく、陰鬱なトーンで進行する。
ハレルソンは撮影の途中、この暗さが強くなりすぎていると感じたという。彼は撮影開始前、マコノヒーに対し、観客の期待を踏まえた提案をしたことを振り返っている。
「なあ、みんな俺たちと一緒に笑うことを期待してるよ。ジョークをいくつか入れなきゃ」
しかし、その言葉に対するマコノヒーの反応は、ハレルソンの想定とは異なるものだった。
「彼はただ『ふーん』って感じで」
ハレルソンは、「ああ、完全にその通りだね、いや、それは全然ダメだ」といった明確な返答を期待していたというが、ラスト・コール役を意識していたマコノヒーは多くを語らず、静かに受け止めるにとどまった。このやり取りからも、作品づくりに対するふたりのスタンスの違いが浮かび上がる。
高い完成度が生んだ「復帰はない」という結論
『トゥルー・ディテクティブ』シーズン1は、放送当時に大きな反響を呼び、エミー賞5部門を受賞した。現在でもHBOのカタログの中で屈指の評価を受ける作品として語られている。
その成功にもかかわらず、ウディ・ハレルソンは近年、同作に再び戻る可能性を明確に否定している。彼は米誌『Today』の取材で、「正直に言うと、絶対にない。可能性はゼロだよ」と語った。
その理由について、ハレルソンは作品の完成度そのものを挙げている。「だってすばらしい作品になったんだから」と述べた上で、「あの形で完成したことが本当に気に入ってるし、もし何かあるとすれば、別のシーズンをやることで、あれが台無しになると思うんだよね」と続けた。
撮影現場ではストレスもあったが、その緊張感こそが、結果として作品の強度につながったとも言える。だからこそ、ハレルソンは『トゥルー・ディテクティブ』を“完成した物語”として受け止めているのだろう。
