映画『走馬灯』(2026)を紹介&解説。
映画『走馬灯』概要
映画『走馬灯』は、松井至監督(『私だけ聴こえる』)が、人口減少によって消滅へ向かう福島県西会津町・奥川地方の暮らしを一年にわたって記録したドキュメンタリー。雪深い山村に残る人々の生活や記憶、四季の移り変わりを見つめながら、「故郷とは何か」「なぜ人は生まれ育った土地へ還ろうとするのか」を映像によって問いかける。2026年の第31回釜山国際映画祭ワイド・アングル部門ドキュメンタリー・コンペティションに選出された。
作品情報
| 日本版タイトル | 『走馬灯』 |
|---|---|
| 英題 | Revolving Lanterns |
| 製作年 | 2026年 |
| 日本公開日 | 2026年12月12日 |
| ジャンル | ドキュメンタリー |
| 製作国 | 日本/アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 113分 |
| 監督 | 松井至 |
|---|---|
| 構成 | 竹岡寛俊 |
| プロデューサー | CHARLOTTE COOK |
| 企画開発 | 佐藤恒平 |
| 撮影・編集 | 松井至 |
| 作曲 | 永井朋生 |
| サウンドミキサー | 髙梨智史 |
| カラリスト | 齋藤直彦 |
| 出演 | 矢部佳宏/矢部幸子/小椋サカコ/小椋ユアコ/宮澤一一/宮澤恭子/矢部タミ/石井アツ子/荒海享俊/矢部隆一/三瓶トミノ |
| 配給 | 走馬灯上映委員会 |
内容
福島県西会津町の山間部に位置する奥川地方。長く山とともに生きてきた人々の暮らしが残る一方、人口減少によって地域は静かに消滅へ向かっている。
東日本大震災を機に故郷へ戻った矢部佳宏をはじめ、土地に残って暮らし続ける人々をカメラは追う。雪深い冬から季節が巡り、労働や食事、語らいといった日常が繰り返されるなか、先祖から受け継がれてきた記憶や土地への思いが少しずつ浮かび上がる。ひとりの人間が人生の最期に走馬灯を見るように、消えゆく村そのものが記憶をたどっていく。
主な出演者
矢部佳宏:福島県西会津町奥川に暮らすランドスケープ・アーキテクト。東日本大震災を大きな契機として故郷へ戻り、地域づくりにも携わってきた。本作では奥川という土地とそこで生きる人々を見つめる中心的な人物のひとりとして登場する。
作品の魅力解説(公開前時点)
「人が村を見る」のではなく、「村が人を見る」という視点
本作を象徴するのが、「消えゆく故郷が最後に見た人の姿」という発想。人口減少する地域を外側から分析する社会問題ドキュメンタリーにとどまらず、長い時間を生きてきた土地そのものに記憶があるかのように、人々の姿を映し出していく。その視点が『走馬灯』というタイトルにも結びついている。
大事件ではなく、四季と日常そのものを映画にする
カメラが捉えるのは、雪や山、日々の仕事、食事、会話など、奥川で繰り返されている生活。第31回釜山国際映画祭も、本作を日本・アメリカ製作のドキュメンタリーとしてワイド・アングル部門のコンペティションに選出している。劇的な事件を積み上げるのではなく、季節と時間の流れそのものから映画的な感覚を立ち上げていく作品として注目される。
松井至監督が追い続ける「聴き取りづらい声」
松井至監督は、ろう者の親を持つ聞こえる子どもたち=コーダを追った『私だけ聴こえる』など、社会の中で見過ごされやすい人々の声を記録してきた。本作でカメラを向けるのは、都市から離れ、人口減少の先端にある小さな山村。単純な「地方消滅」の物語ではなく、そこで最後まで生きようとする人々の感覚や、自然と人間の関係へ踏み込むドキュメンタリーとなりそうだ。
