アントニオ・メンデス・エスパルサ監督特集上映-『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』公開記念[動画あり]

『ヒア・アンド・ゼア』より © Aquí y Allí Films NEWS
『ヒア・アンド・ゼア』より © Aquí y Allí Films

『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』公開を記念し、アントニオ・メンデス・エスパルサ監督の過去3作品が特集上映される。


スペインの俊英アントニオ・メンデス・エスパルサ監督の最新作『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』の公開を記念し、同監督の過去作3本を上映する特集企画『アントニオ・メンデス・エスパルサの映画』が開催される。上映は10月31日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にてスタート。併せてポスタービジュアルと予告編も解禁された。

エスパルサ監督は、現実と虚構の境界をあえて曖昧にしながら、人間の内面や社会の構造を静かに見つめる作品で知られる。Variety誌が“傑作”と評した新作の公開を前に、これまでの軌跡をスクリーンで振り返る貴重な機会となる。

スペインの俊英が描く、現実と虚構のはざま

上映されるのは、2012年のカンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリを受賞した長編デビュー作『ヒア・アンド・ゼア』、フロリダで暮らす一家の苦境をリアルに映し出した『ライフ・アンド・ナッシング・モア』、そして家庭裁判所の審理を記録した初のドキュメンタリー『家庭裁判所 第3H法廷』の3本。いずれも社会の現実をドキュメント的な手法で描きつつ、観客に深い余韻を残す。

『ヒア・アンド・ゼア』より © Aquí y Allí Films

『ヒア・アンド・ゼア』より © Aquí y Allí Films

『ヒア・アンド・ゼア』では、アメリカでの出稼ぎ生活を終えて故郷の村に戻った男の再生の物語を描く。主演を務めたペドロ・デ・ロス・サントスが劇中曲も手がけ、実際の村人たちが多数出演している点も特徴だ。「登場人物の多くも実際の村人たちが演じており、フィクションとドキュメンタリーが交錯する独自のスタイル」とリリースでは紹介されている。

『ヒア・アンド・ゼア』より © Aquí y Allí Films

『ヒア・アンド・ゼア』より © Aquí y Allí Films

人間の内面を映す、静かなまなざし

アントニオ・メンデス・エスパルサ監督は1976年マドリード生まれ。大学で法律を学んだのち、ロサンゼルスのUCLAやニューヨークのコロンビア大学で映画制作を学び、現在はフロリダ州立大学で教鞭を執っている。自身の作品では社会的テーマを背景にしながらも、登場人物たちの心の動きを丹念に見つめる姿勢を貫いている。

『ライフ・アンド・ナッシング・モア』より © Aquí y Allí Films

『ライフ・アンド・ナッシング・モア』より © Aquí y Allí Films

『ライフ・アンド・ナッシング・モア』では、フロリダで暮らすアフリカ系アメリカ人の母子を通して、家族の愛や社会的困難をリアルに描き出した。脚本には教育関係者や司法関係者へのリサーチを反映させ、撮影現場では「俳優から得られるインスピレーションを積極的に取り入れ、リアルな映画づくりを追求した」とされている。地元住民をキャストに起用するなど、徹底した現場主義の制作手法が特徴だ。

『家庭裁判所 第3H法廷』より © Aquí y Allí Films, 9AM Media Lab

『家庭裁判所 第3H法廷』より © Aquí y Allí Films, 9AM Media Lab

一方、『家庭裁判所 第3H法廷』では、虐待や育児放棄を理由に保護された子どもたちをめぐる審理を記録。裁判官や検察官、ソーシャルワーカーなどが法のもとで“家族の再統合”を目指す姿を、ダイレクト・シネマ的手法で切り取っている。リリースでは「関係者それぞれの真摯な姿勢が胸を打つドキュメンタリー」と紹介されており、作り手の誠実な視点が作品全体に貫かれている。

『家庭裁判所 第3H法廷』より © Aquí y Allí Films, 9AM Media Lab

『家庭裁判所 第3H法廷』より © Aquí y Allí Films, 9AM Media Lab

エスパルサ監督は「フィクションとドキュメンタリーの間にある、人間の真実を探る」ことを一貫したテーマとしており、その姿勢は最新作『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』にも受け継がれている。

最新作『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』へとつながる道

『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』より ©UNA PRODUCCIÓN DE QUE NADIE DUERMA AIE - AVANPOST

『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』より ©UNA PRODUCCIÓN DE QUE NADIE DUERMA AIE – AVANPOST

特集上映の開催と同日、最新作『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』も公開を迎える。本作はエスパルサ監督にとって長編4作目にあたり、初めて母国スペインで撮影された作品となる。物語の舞台はマドリード。会社の倒産をきっかけにタクシー運転手へ転身した女性ルシアが、街を走りながら個性豊かな乗客と出会い、自らの過去や感情と向き合っていく。

16mmフィルムによるざらついた映像と、作曲家ゼルティア・モンテスによる不穏な旋律が、ロマンスとサスペンスが交錯する独自の世界を形づくる。

『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』より ©UNA PRODUCCIÓN DE QUE NADIE DUERMA AIE - AVANPOST

『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』より ©UNA PRODUCCIÓN DE QUE NADIE DUERMA AIE – AVANPOST

主人公ルシアを演じるのは、ゴヤ賞最優秀主演女優賞を受賞したマレーナ・アルテリオ。『パラレル・マザーズ』『マシニスト』などで知られるアイタナ・サンチェス=ヒホンが共演し、物語に深みを与えている。制作を手がけたのは『マジカル・ガール』『マンティコア 怪物』などで注目を集めたAquí y Allí Films。監督の過去作と同じく、現実の延長線上で人間の内面を静かに描く姿勢が貫かれている。

エスパルサ監督のフィルモグラフィを総覧する今回の特集上映は、作品ごとに異なる形で「人間とは何か」を問い続けてきたその歩みを辿る機会となる。新作とあわせて、監督が紡いできた現実とフィクションのはざまの物語をスクリーンで味わいたい。

特集上映『アントニオ・メンデス・エスパルサの映画』予告編

『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』予告編

作品情報

『ヒア・アンド・ゼア』(2012年)
監督・脚本:アントニオ・メンデス・エスパルサ
出演:ペドロ・デ・ロス・サントス・フアレス、テレサ・ラミレス・アギーレ、ロレナ・グアダルーペ・パンタレオン・バスケス、ハイディ・ラウラ・ソラノ・エスピノサ
2012年/スペイン・アメリカ・メキシコ/スペイン語・ナワトル語/110分/カラー/アメリカンビスタ/ステレオ
原題:Aquí y allá
字幕翻訳:林かんな/字幕協力:東京国際映画祭
© Aquí y Allí Films

『ライフ・アンド・ナッシング・モア』(2017年)
監督・脚本:アントニオ・メンデス・エスパルサ
製作:ペドロ・エルナンデス・サントス
出演:アンドリュー・ブリーチングトン、レジーナ・ウィリアムズ、ロバート・ウィリアムズ、リィネシア・チェンバース
2017年/スペイン・アメリカ/英語/113分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch
原題:Life and Nothing More
字幕翻訳:森澤海郎/字幕協力:東京国際映画祭
© Aquí y Allí Films

『家庭裁判所 第3H法廷』(2020年)
監督・脚本:アントニオ・メンデス・エスパルサ
製作:ペドロ・エルナンデス・サントス
2020年/スペイン・アメリカ/英語/117分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch
原題:Courtroom 3H
字幕翻訳:中澤みのり/字幕協力:ラテンビート映画祭、東京国際映画祭
© Aquí y Allí Films, 9AM Media Lab

『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』(2023年)
監督:アントニオ・メンデス・エスパルサ
出演:マレーナ・アルテリオ、アイタナ・サンチェス=ヒホン、ロドリゴ・ポイソン、ホセ・ルイス・トリホ、マリオナ・リバス、マヌエル・デ・ブラス
2023年/スペイン・ルーマニア/スペイン語/122分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/R15+
原題:Que nadie duerma
字幕翻訳:杉田洋子
配給:反射光/配給協力:エクストリーム
© UNA PRODUCCIÓN DE QUE NADIE DUERMA AIE – AVANPOST

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