【映画レビュー『コール・ミー・ダンサー』】あまりに熱く偉大な実話だからこそ、叙事 × 叙情が併存させられた-夢追い人が躍動する秀逸なドキュメンタリー

©2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved. Film Review
©2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

コール・ミー・ダンサー』が11月29日(金)新宿シネマカリテほか全国公開。逆境の中でダンサーの夢を追う青年を描く、まさに“インド版ビリー・エリオット”の呼び声にふさわしいドキュメンタリー作品だ。

『コール・ミー・ダンサー』予告

『コール・ミー・ダンサー』概要

ムンバイで大学に通うマニーシュは、ストリート・ダンスに興味を持ち独学で練習を始める。
ある日、あるダンスの大会で注目を浴びた彼は、出場していた他の選手にダンス・スクールに通うことを勧められ、決して豊かな家庭環境ではないながらもマニーシュに一生懸命、教育を施してきた両親からは反対される中、ダンス・スクールの門を叩くが、そこでバレエを教えるイスラエル人イェフダと出会い、バレエの虜になってしまう。優れた運動能力とたゆまぬ向上心を持つマニーシュに、必死で応えるイェフダ。しかし、バレエダンサーとして活躍するには、マニーシュは年を重ねすぎていた…。

レビュー本文

文化と背景

今作は、心を動かすこと、適切な情報を提供することの両方をバランス良く行った見応えのあるドキュメンタリー映画だった。インドに広く根づいた価値観、ダンサーという職業の社会的立ち位置、そしてマニーシュの家庭環境などを、インタビューや自然な会話シーンで我々に理解させ、インドでプロのダンサーを目指すことのハードルの高さを明確な背景として示してくれる。

師弟の関係、ヒューマンドラマ

社会の理解がないだけでなく、そもそも生まれが豊かでないマニーシュにはバレエを習うことさえ経済的に難しい。その背景を理解させた上で、驚愕の努力と才能、忍耐の精神で逆境に立ち向かうマニーシュのドラマチックな実話が展開する。まさに“映画のよう”なストーリーにはみるみる惹きつけられた。

特に胸を打たれるのが、バレエの師匠イェフダとの関係性だ。本編でも「親とは異なる愛情」として語られる師弟の関係、師匠の本音と愛情には思わず涙腺が緩んだ。

©2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

©2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

真摯に向き合ったダンスシーン

そして、今作ではタイトルの通り「ダンサーと呼ばれたい」マニーシュの努力と踊りをフィーチャーしている。ダンスシーンでは余計な音も被せず、真摯にそのダンスと、努力の結晶たるマニーシュの肉体だけを美しく、躍動的に映し出す。最初から最後まで過不足なく、何を記録し、何を語りたいかに強くフォーカスされたすばらしいドキュメンタリー作品だった。

『コール・ミー・ダンサー』は11月29日(金)新宿シネマカリテほか全国公開。夢や目標を持つ方、努力することに疲れた方はぜひ、マニーシュの熱く真摯な姿にエネルギーをもらってほしい。

作品情報

タイトル:コール・ミー・ダンサー
原題:CALL ME DANCER
監督:レスリー・シャンパイン、ピップ・ギルモア
プロデューサー:レスリー・シャンパイン、プリヤ・ラマスバン、シンシア・カネ
エグゼクティヴ・プロデューサー:ジェイ・ショーン、ジョン・パトリック・キング、ジチン・ヒンゴラーニ、エスター・バン・メッセル、ダイアナ・ホルツバーグ
撮影監督:ニール・バレット、アブヒジット・ダッタ
編集:ジェニファー・ビーマン
編集顧問:ヘマル・トリベジ
作曲:ナイニータ・デサイ、ニナ・ハンフリーズ
プロデューサー補:ラクミニ・ムーリク、ネハ・シャルマ
2023年|アメリカ|87分|5.1ch|シネマスコープ|カラー|デジタル|字幕翻訳:藤井 美佳
©2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.
配給:東映ビデオ

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む