映画『アンヒューマン』(2022)を紹介&解説。
映画『アンヒューマン』概要
映画『アンヒューマン』は、『ソウ』シリーズ脚本などで知られるマーカス・ダンスタン監督が手がけた、学園サバイバルとゾンビホラーを掛け合わせた青春スリラー。遠足中のスクールバス事故をきっかけに、高校生たちが謎の怪物集団に襲われ、互いを疑いながら生き延びようとする。主演はブリアンヌ・チュー、共演にベンジャミン・ワズワース、ユライア・シェルトンらが出演。
作品情報
日本版タイトル:『アンヒューマン』
原題:Unhuman
製作年:2022年
日本公開日:劇場公開なし
ジャンル:ホラー/スリラー
製作国:アメリカ
原作:無
上映時間:90分
監督:マーカス・ダンスタン
脚本:マーカス・ダンスタン/パトリック・メルトン
製作:ペイジ・ペンバートン/ポール・ウッドー
製作総指揮:ジェイソン・ブラム/ジェレミー・ゴールド/クリス・マッカンバー/ローレン・ダウニー/アレクサンダー・コーネ/クリス・ディッキー
撮影:リン・モンクリーフ
編集:アンドリュー・ウェスマン
作曲:チャーリー・クロウザー
出演:ブリアンヌ・チュー/ベンジャミン・ワズワース/ユライア・シェルトン/アリ・ギャロ/ピーター・ジャイルズ/ドリュー・シャイド
製作:ブラムハウス・テレビジョン/エピックス
配給:パラマウント・ホーム・エンターテインメント
あらすじ
現代のアメリカ。高校生のエヴァーは、同級生たちとスクールバスで校外学習へ向かう。だが道中で事故に遭い、彼らは謎の怪物集団に襲われる。孤立した森の中で、生き残った生徒たちは互いを疑いながら脱出を目指していく。彼らは、仲間の中にも危険人物が潜んでいることを知る。
簡易レビュー・解説
本作は、ゾンビホラーと学園青春ものを掛け合わせたブラムハウス製作のスリラーである。スクールバス事故後に始まるサバイバル劇を軸にしながら、スクールカーストや仲間内の対立、いじめなど高校生ならではの人間関係も描いている。
監督は『ソウ4』以降や『ザ・コレクター』で知られるマーカス・ダンスタン。スプラッター描写やブラックユーモアを織り交ぜつつ、テンポの良い展開で見せる作風となっている。一方で、キャラクター造形や物語の意外性については評価が分かれており、“王道のティーンホラーを軽快に楽しめる作品”と受け取る声がある一方、既視感の強さや展開の単純さを指摘する意見も見られた。
批評サイトロッテントマトでは批評家支持率50%、観客支持率67%となっており、評価はおおむね賛否が分かれている。
内容(ネタバレ)
校外学習へ向かう高校生たち
物語は、高校の生徒たちが校外学習のためスクールバスに乗り込む場面から始まる。中心となるのは、自己評価の低さを抱えるエヴァーと親友タマラ。車内には、人気者グループ、いじめられがちな生徒、教師Mr. Lorenzoらも同乗しており、出発時点から生徒同士の力関係や距離感が描かれる。
バス事故と“異変”の始まり
道中、フロントガラスに突然大量の血が飛び散り、運転手が混乱してバスは森の中で事故を起こす。さらに、無線では近隣で化学的な異常事態が起きていることを思わせるアナウンスが流れ、直後に異様な姿の襲撃者が現れる。これにより校外学習は一転して、生徒たちの生存劇へと変わる。
生き残った生徒たちの避難
混乱の中でエヴァー、タマラ、そのほか数人の生徒たちはバスを離れ、森の中の廃屋へ逃げ込む。一方で全員が無事に合流できるわけではなく、逃げ遅れた者や負傷する者も出てくる。ここから本作は、外部の怪物的な脅威だけでなく、閉ざされた空間でむき出しになる生徒同士の不信感を強めていく。
“怪物”だけではない内部の緊張
中盤に入るまでの見どころは、ゾンビ的な襲撃そのものよりも、クラス内の序列や過去のわだかまりが極限状態で噴き出していく点にある。エヴァーは仲間を助けようとするが、ほかの生徒たちは安全を優先して判断が割れ、集団は次第に分裂気味になる。
中盤までに見えてくる構図
冒頭から中腹までで明らかになるのは、彼らが単に外敵から逃げるだけの話ではないということだ。誰を信じるべきか、誰が足を引っ張るのかという疑心暗鬼が強まり、エヴァーたちは怪物の襲撃と人間関係の亀裂の両方に対処しなければならなくなる。
“ゾンビ騒動”の真相
エヴァーはスティーヴンに薬物を注射されて意識を失うが、薄れる意識の中で今回の騒動の真相を知る。実は“ゾンビ襲撃”は本物ではなく、いじめられてきたランドールとスティーヴンが、同級生たちへの復讐と自分たちを英雄に見せるために仕組んだ狂言だった。バス事故や緊急放送、廃墟への誘導までが計画の一部であり、“ゾンビ”のように見えた人々も薬物によって異常行動を起こしていただけだった。
ランドールとスティーヴンの歪んだ計画
回想では、ランドールがスティーヴンを誘い、クラスメートたちを恐怖に陥れようとしていたことが明かされる。彼らは、過去に教師からいじめを受けていたバス運転手ウェインや、危険な薬物を作るチップを巻き込み、計画を実行していた。しかしチップがロレンツォ氏を本当に殺害してしまったことで、当初の“悪ふざけ”は完全に制御不能な状況へと変わっていく。
エヴァーによる逆襲
エヴァーは意識を取り戻し、チップを撃退して仲間たちのもとへ向かう。一方、ランドールはタマラたちに「エヴァーは死んだ」と嘘をつき、“感染した”仲間たちを倒すよう仕向けていた。だがエヴァーが現れ、すべてが仕組まれた計画だったことを暴露。さらに、ランドールがタマラとエヴァーを救う英雄として自分たちを描いた壁画が見つかり、彼の自己陶酔的な動機も明らかになる。
最終決戦とランドールの末路
真相を知った生徒たちはスティーヴンを閉じ込め、ランドールに反撃する。乱闘の末、ダニーが重傷を負い、エヴァーはチップが作っていた注射器付きの武器を使ってランドールに薬物を大量に打ち込む。薬で錯乱したランドールは本物の“怪物”のようになり、タマラや他の生徒も加勢して彼を追い詰める。最後はエヴァーがランドールにとどめを刺し、騒動は終息する。
ラストと後味の悪い余韻
事件後、ウェイン、チップ、ランドール、スティーヴンは拘束され、生き残った生徒たちは和解する。エヴァーとタマラも友情を取り戻し、クラス内の関係性にも変化が生まれる。だがバスで帰ろうとした直後、死んだと思われていたロレンツォ氏が突然生きていることが判明する。さらに数週間後、PTA関係者が刑務所のランドールとスティーヴンを訪れ、新たな恐怖計画の再開を持ちかけるという不穏な後日談も描かれる。
作品トリビア
“Gen Z版アフタースクール・スペシャル”として構想された
マーカス・ダンスタンは、本作を“Gen Z版アフタースクール・スペシャル”のような作品として構想しており、単なるゾンビ映画ではなく、いじめやスクールカーストを題材にした青春劇として作ったと語っている。
脚本は撮影現場で調整されていた
脚本は撮影開始時点で完成しておらず、マーカス・ダンスタンは撮影地ニューオーリンズに入ってから、現場で内容を調整しながら脚本を仕上げていったという。
真夏のニューオーリンズで撮影された
撮影は2021年にニューオーリンズで行われた。出演者のブリアンヌ・チューも、真夏のニューオーリンズでの撮影は非常に暑く、アクションやスタントが大変だったと振り返っている。
『ソウ』シリーズ脚本コンビの再タッグ作
マーカス・ダンスタンとパトリック・メルトンは、『ソウ』シリーズ後期や『ザ・コレクター』シリーズでも組んできたコンビであり、本作でも共同脚本を担当している。ホラー映画ファンにとっては、彼らの再タッグ作品という点も小さな見どころである。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
