映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を紹介&解説。
映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』概要
映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、『ティーン・タイタンズGO! トゥ・ザ・ムービー』のアーロン・ホーヴァス&マイケル・ジェレニック両監督が手がけた、任天堂のゲームを映画化したアニメーション。ブルックリンの配管工兄弟が異世界へ迷い込み、クッパの脅威に立ち向かいながら帰る道を探す。声の出演はクリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラックら。
作品情報
日本版タイトル:『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
原題:The Super Mario Bros. Movie
製作年:2023年
日本公開日:2023年4月28日
ジャンル:アニメーション/アドベンチャー/コメディ
製作国:アメリカ/日本
原作:任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」および関連ゲームシリーズ
上映時間:92分
次作:『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』(2026)
監督:アーロン・ホーヴァス/マイケル・ジェレニック
脚本:マシュー・フォーゲル
製作:クリス・メレダンドリ/宮本茂
編集:エリック・オズモンド
作曲:ブライアン・タイラー(ゲーム楽曲は近藤浩治の原曲に基づく)
出演:クリス・プラット/アニャ・テイラー=ジョイ/チャーリー・デイ/ジャック・ブラック/キーガン=マイケル・キー/セス・ローゲン/フレッド・アーミセン/ケヴィン・マイケル・リチャードソン/セバスチャン・マニスカルコ
製作:イルミネーション/任天堂
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
あらすじ
ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージは、街の水道管トラブルをきっかけに地下へ向かう。だが謎の土管に吸い込まれ、ふたりは離ればなれのまま異世界へ迷い込んでしまう。マリオは新たな仲間と出会い、ルイージを救うため壮大な世界の危機に立ち向かっていく。
主な登場人物(キャスト/日本語吹替声優)
マリオ(クリス・プラット/宮野真守):ブルックリンで配管工として働く双子の兄。街の水道管トラブルをきっかけに異世界へ迷い込み、離ればなれになったルイージを救うため冒険に踏み出す主人公。
ルイージ(チャーリー・デイ/畠中祐):マリオの弟であり、仕事のパートナー。兄弟で地下へ向かった先でワープゾーンに落ち、クッパに捕らえられてしまう。
ピーチ姫(アニャ・テイラー=ジョイ/志田有彩):キノコ王国を導く有能なリーダーで、キノピオたちの守護者。クッパの侵攻を阻止し、ルイージを救うためマリオと行動をともにする。
クッパ(ジャック・ブラック/三宅健太):ダークランドを支配するクッパ族の王。スーパースターやピーチとの結婚を狙い、キノコ王国を脅かす本作の最大の敵。
キノピオ(キーガン=マイケル・キー/関智一):キノコ王国の住人。陽気で行動力があり、ルイージ救出を目指すマリオに協力し、冒険の案内役のひとりとなる。
ドンキーコング(セス・ローゲン/武田幸史):ジャングル王国の有力者で、マリオたちがクッパに対抗するうえで重要な存在。
クランキーコング(フレッド・アーミセン/楠見尚己):ジャングル王国の王で、ドンキーコングの父。マリオたちが力を借りようとする相手のひとり。
カメック(ケヴィン・マイケル・リチャードソン):クッパに仕える魔法使い。クッパ軍の側近として行動し、その野望を支える。
スパイク(セバスチャン・マニスカルコ):マリオとルイージを知るブルックリン側の人物。兄弟の日常パートを担い、現実世界での立場を印象づける役どころ。
主な受賞&ノミネート歴
ゴールデングローブ賞
興行成績賞、長編アニメ映画賞、歌曲賞(“Peaches”)にノミネート。
内容(ネタバレ)
ブルックリンでの兄弟の出発
ニューヨーク・ブルックリンで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージは、自分たちの仕事を軌道に乗せようとしていた。だが街で大規模な水道管トラブルが発生し、ふたりは地下へ向かう。その先で謎の土管に吸い込まれ、別々の場所へ飛ばされてしまう。
マリオとルイージが別々の世界へ
マリオがたどり着いたのはキノコ王国だった。一方のルイージは、クッパが支配する闇の世界へ落ち、捕らえられてしまう。クッパはすでに強大な力の源となるスーパースターを手にしており、ピーチ姫に結婚を迫りながらキノコ王国への侵攻を進めようとしていた。
ピーチ姫との出会いと救出計画
キノピオに導かれたマリオはピーチ姫と出会い、ルイージを救うため行動をともにすることになる。ピーチ姫はただ守られる存在ではなく、自ら王国を守るために動く指導者として描かれ、マリオにこの世界で生き抜く術を教えていく。マリオはさまざまなパワーアップを体験しながら、異世界での戦い方を学び始める。
クッパに対抗するための同盟
クッパ軍に単独で対抗するのは難しいと判断したピーチ姫は、ジャングル王国の協力を得ようと考える。そこでマリオ、ピーチ姫、キノピオはドンキーコングたちが暮らす国へ向かう。物語の中盤では、マリオがドンキーコングとぶつかり合いながらも、やがてクッパに立ち向かうための大きな戦力を得る流れが描かれていく。
レインボーロードでの急襲
ジャングル王国の協力を得たマリオたちは、カートでキノコ王国へ向かう。だがレインボーロードの途中でクッパ軍の襲撃を受け、大規模なチェイスへ発展する。中盤以降は、この追撃戦によって仲間たちの隊列が崩れ、マリオたちは予定どおりに王国へ戻れなくなっていく。
クッパの結婚式へ向かう流れ
クッパはピーチ姫との結婚式を強行しようとし、物語はその式典を阻止できるかどうかへと焦点を移していく。マリオとドンキーコングはこの式に割って入り、クッパの計画を止めようとする。
ピーチ姫の反撃と式場の混乱
結婚式の場で、ピーチ姫は従うふりをしながら反撃の機会をうかがう。式はそのまま祝福の場にはならず、マリオたちの突入も重なって一気に戦闘状態へ変わる。ここでクッパの思惑は崩れ、終盤の全面対決へつながっていく。
戦場がブルックリンへ移る
終盤では、クッパ軍との戦いが異世界の中だけで完結せず、マリオの故郷であるブルックリンへまで及ぶ。マリオはピーチ姫、キノピオ、ドンキーコングらとともにクッパに立ち向かうが、当初は決定打を欠き、苦しい戦いを強いられる。
兄弟の共闘とクッパ撃退
その後、ルイージがマリオを助けに入り、ようやく兄弟そろってクッパに対抗する。ふたりはスーパースターの力を得て形勢を逆転し、クッパを打ち破る。さらにピーチ姫がクッパを小さくして無力化し、危機はいったん収束する。
ラストとエンドクレジット後
戦いのあと、マリオとルイージはキノコ王国に新たな居場所も得て、兄弟で再び配管工として歩み出す。さらにエンドクレジット後には、小さくなったクッパの場面に続き、ニューヨークの地下でヨッシーを思わせる卵がかえる気配が描かれ、次作へ続く余韻を残して締めくくられる。
作品解説|魅力&テーマ
任天堂×イルミネーション×ユニバーサルが築いた、“王道”の映画化としての強さ
本作の大きな魅力は、人気ゲームをただ映像化しただけではない、“外さない”体制そのものにある。任天堂の宮本茂とイルミネーションのクリス・メレダンドリが製作を担い、監督はアーロン・ホーヴァスとマイケル・ジェレニック、全世界配給はユニバーサル・ピクチャーズが担当した。
つまり本作は、原作の本質を知る任天堂、ファミリー向けアニメーションに強いイルミネーション、世界規模で作品を届けるユニバーサルがそれぞれの強みを持ち寄って成立した映画である。
実際、物語はシンプルで見やすく、テンポよく進みながら、キノコ王国の色彩やアクションの高揚感もしっかりと劇場向けのスケールへ引き上げられている。ゲームファンへの敬意と、初めて触れる観客にも届く親しみやすさを両立した点に、本作の“王道の映画化”としての完成度が表れている。
歴代ゲームへの愛とリスペクトが、画面の隅々まで行き渡っている
本作の魅力は、単に『スーパーマリオブラザーズ』を映画化したことにとどまらない。キノコ王国を舞台にした冒険を軸にしながら、『マリオカート』や『ドンキーコング』シリーズを想起させる要素まで自然に織り込み、マリオという巨大なゲーム世界全体への敬意を一本の映画としてまとめ上げている点に強みがある。
作中には、長年シリーズに親しんできた観客ほど反応したくなる仕掛けが随所に盛り込まれているが、それらは単なる小ネタの羅列ではなく、アクションや世界観の楽しさそのものに結び付いている。
この姿勢は、監督たち自身の言葉からも裏付けられる。アーロン・ホーヴァスは幼少期から『スーパーマリオブラザーズ』を遊び続けてきたと語り、『スーパーマリオ64』にも強い思い入れを示している。
マイケル・ジェレニックもまた、子どもの頃に『スーパーマリオブラザーズ』で長い時間を過ごし、のちに『マリオカート』を仲間と遊んだ経験を語っており、ふたりがシリーズを一過性の人気IPとしてではなく、自分たちの記憶と結びついた文化として受け止めていることが分かる。
さらにホーヴァスは、ファンを意識する以前に「自分が見たいマリオ映画」を作ろうとした趣旨の発言をしており、ゲームで味わってきた“敵を踏み、パワーアップし、世界を駆け抜ける楽しさ”を映画の中で実現したかったと振り返っている。
だからこそ本作の引用やオマージュは、知っている人だけが喜ぶ装飾ではなく、シリーズが持つ高揚感を映画のテンポや画面設計へ移し替えるための重要な要素として機能している。ファンサービスでありながら、それ以上に“マリオらしさ”の再現になっている点が、本作の完成度を支えている。
豪華声優陣の演技が、キャラクターを“映画の主人公”として立ち上げる
本作の面白さを支えている大きな要素のひとつが、声優陣の起用と、その演技のバランス感覚にある。任天堂の公式発表でも、マリオ役のクリス・プラット、ピーチ姫役のアニャ・テイラー=ジョイ、ルイージ役のチャーリー・デイ、クッパ役のジャック・ブラックらが主要キャストとして打ち出されており、本作がキャラクターの魅力を声の芝居から立ち上げることを重視していたのが分かる。ゲーム版の印象を踏まえつつ、映画として感情移入しやすい人物像へ調整している点が、この作品の親しみやすさにつながっている。
特に印象的なのが、ジャック・ブラック演じるクッパである。脅威としての迫力を保ちながら、どこか滑稽で憎みきれない人物像を与えられており、シリーズの悪役を映画ならではの“見せるキャラクター”へ押し広げている。その象徴が劇中歌「Peaches」で、この曲は作品の印象を決定づける場面のひとつとして広く受け止められ、ゴールデングローブ賞では 歌曲賞にノミネートされた。単なる話題づくりではなく、クッパという存在の異様さと愛嬌を同時に浮かび上がらせる演出として機能している点が大きい。
また本作の声の演技は、スター俳優を並べた“豪華キャスト映画”に終わっていない。マリオの前向きさ、ルイージの不安げな表情、ピーチ姫の行動力、キノピオの軽快さといった性格の輪郭が、それぞれの声によって明快に伝わるため、テンポの速い作品でもキャラクターを見失いにくい。ゲームで親しまれてきた存在を、映画の中でさらに深い感情を持つ主人公たちとして成立させたことこそ、本作の声優陣が果たした大きな役割だと言える。
作品トリビア
長年の“マリオの声”チャールズ・マーティネーは、本作で2役を演じている
2021年9月の任天堂の発表時点で、宮本茂は、ゲーム版で長年マリオを演じてきたチャールズ・マーティネーが本作にサプライズゲストとしてカメオ出演すると案内。実際、マーティネーはブルックリンの男性ジュゼッペと、マリオとルイージの父の2役で出演している。
主要キャストとして前面に出る形ではないものの、シリーズの象徴的存在をきちんと作品内に残していた点は、ファンにとってうれしい配慮と言える。
クッパの劇中歌「Peaches」は、一晩で作られ、ジャック・ブラックが仕上げた
劇中でも強い印象を残す「Peaches」は、監督陣が一晩で曲を書いてデモを送り、その数日後にジャック・ブラックが自身のひねりを加えた完成版を返したという。
作曲家ブライアン・タイラーも、この曲はほぼブラックの即興に近い形で生まれたと語っており、あの異様な中毒性は偶然ではなく、演者の個性が強く反映された結果だったことが分かる。
映画の序盤に置かれた「Jump Man」は、マリオ誕生時の名前へのセルフオマージュ
IMDbのトリビア欄では、序盤のピザ店に置かれたゲーム筐体の名前が「Jump Man」になっている点が挙げられている。これは、マリオが初登場時に“Jumpman”という名前で呼ばれていたことを踏まえたネタで、画面の隅にさりげなく置かれた小物にまで、シリーズの歴史を踏まえた遊びが仕込まれている。
ピーチ姫の描き方は、アニャ・テイラー=ジョイ側の意識とも重なっている
アニャ・テイラー=ジョイはEntertainment Weeklyの取材で、ピーチ姫を演じるなら「自分の意思と主体性を持つ3次元的なキャラクター」であることが条件だったと話している。
結果として本作のピーチ姫は、ただ救われる存在ではなく、自ら動くリーダーとして再構成されており、キャスティングの段階から映画版らしい人物像への調整が意識されていたことが分かる。
そのほか細かいトリビアは動画にて
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
