映画『ストリートファイター』(1994)を紹介&解説。
映画『ストリートファイター』(1994)概要
映画『ストリートファイター』は、カプコンの世界的人気格闘ゲーム『ストリートファイターII』をハリウッドで実写映画化したアクション映画。『ダイ・ハード』などの脚本で知られるスティーヴン・E・デ・スーザが監督・脚本を務め、原作ゲームのリュウではなく、ジャン=クロード・ヴァン・ダム演じるガイル大佐を主人公に、独裁者バイソン将軍が支配する軍事国家シャドルーとの戦いを描く。共演にラウル・ジュリア、ミンナ・ウェン、ダミアン・チャパ、バイロン・マン、カイリー・ミノーグら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ストリートファイター』 |
|---|---|
| 原題 | Street Fighter |
| 製作年 | 1994年 |
| 本国公開日 | 1994年12月23日(アメリカ) |
| 日本公開日 | 1995年5月6日 |
| ジャンル | アクション/アドベンチャー |
| 製作国 | アメリカ/日本 |
| 原作 | カプコン『ストリートファイターII』(ゲーム) |
| 上映時間 | 102分(日本公開資料では103分表記) |
| 監督・脚本 | スティーヴン・E・デ・スーザ |
|---|---|
| 製作 | エドワード・R・プレスマン/辻本憲三 |
| 製作総指揮 | ジュン・アイダ/サシャ・ハラリ/ティム・ジンネマン |
| 撮影 | ウィリアム・A・フレイカー |
| 編集 | エドワード・M・アブロムス/ドン・アロン/ドヴ・ホーニグ/アンソニー・レッドマン/ロバート・F・シュグルー |
| 作曲 | グレーム・レヴェル |
| 出演 | ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ラウル・ジュリア/ミンナ・ウェン/ダミアン・チャパ/バイロン・マン/カイリー・ミノーグ/ロシャン・セス/ウェス・ステュディ/アンドリュー・ブリニアースキー/ロバート・マンモーネ/ピーター・ネイビー・トゥイアソソポ |
| 製作 | エドワード・R・プレスマン・プロダクションズ/カプコン |
| 配給 | ユニバーサル・ピクチャーズ(アメリカ・カナダ)/コロンビア・トライスター映画(日本) |
あらすじ
東南アジアの軍事国家シャドルーを支配する独裁者バイソン将軍が、A.N.の救援要員を人質に取り巨額の身代金を要求する。A.N.部隊を率いるガイル大佐は人質救出とバイソン打倒を決意。犯罪王サガットと接点を持つリュウとケンを潜入させ、敵の秘密基地を探ろうとする。一方、テレビ記者チュン・リーも、かつて父親を殺したバイソンへの復讐を果たすため独自に動いていた。さまざまな思惑が交錯する中、ガイルたちはバイソンの基地へ総攻撃を仕掛ける。
主な登場人物(キャスト)
ウィリアム・F・ガイル大佐(ジャン=クロード・ヴァン・ダム):A.N.部隊を率いる本作の主人公。バイソンに捕らえられた人質と親友チャーリーを救出するため、命令に背いてでもシャドルーへの攻撃を進める。
バイソン将軍(ラウル・ジュリア):軍事国家シャドルーを支配する独裁者。人質を利用して巨額の身代金を要求し、人体改造による兵士の量産と世界征服を企てる。日本版ゲームにおけるベガに相当するキャラクター。
チュン・リー・ザン(ミンナ・ウェン):GNTのテレビ記者。幼い頃に父親をバイソンに殺されており、取材を続けながら密かに復讐の機会を狙っている。武術にも長ける。
リュウ・ホシ(バイロン・マン):ケンと組み、犯罪者を相手に詐欺を働いて暮らしている若い格闘家。ガイルに協力し、サガット一味への潜入任務を担う。
ケン・マスターズ(ダミアン・チャパ):リュウの相棒。危険よりも金や自分の安全を優先しがちな現実派だが、戦いを通じて仲間を見捨てず行動するようになっていく。
ダルシム博士(ロシャン・セス):バイソンの研究施設で働かされている科学者。チャーリーを人間兵器へ変える実験に関与させられる一方、彼の人間性を守るため密かに洗脳を妨害する。
カルロス・“チャーリー”・ブランカ(ロバート・マンモーネ):ガイルの親友であるA.N.兵士。バイソンに捕らえられ、人体改造実験によって怪物的な姿のブランカへ変えられる。
キャミィ中尉(カイリー・ミノーグ):A.N.に所属し、ガイルを情報面・戦闘面から支える部下。バイソン基地への潜入作戦にも同行する。
T・ホーク(グレッグ・レインウォーター):A.N.所属の軍人で、ガイルの部下。キャミィとともに基地へ潜入し、人質救出などを担当する。
ザンギエフ(アンドリュー・ブリニアースキー):バイソンに仕える巨漢の戦闘員。バイソンを正義の指導者だと信じ込んでいるが、終盤で自分が騙されていたことを知る。
ビクター・サガット(ウェス・ステュディ):犯罪組織シャドルー・トンを率いる武器商人。元ケージファイト王者でもあり、バイソンとは主従関係ではなく武器取引によってつながっている。
エドモンド本田(ピーター・ネイビー・トゥイアソソポ):ハワイ出身の元力士で、チュン・リーのニュースクルーの一員。シャドルー・トンによって相撲人生を台無しにされ、チュン・リーの復讐に協力する。
バルログ(グランド・L・ブッシュ):チュン・リーの仲間である元ボクサー。日本版ゲームにおけるM・バイソンに相当するキャラクター。
ベガ(ジェイ・タヴァレ):サガットが抱える地下ケージファイトのチャンピオン。仮面と鉤爪を装備して戦う。日本版ゲームにおけるバルログに相当するキャラクター。
ディー・ジェイ(ミゲル・A・ヌネス・Jr):金のためにバイソンに仕えている部下。バイソンを正義だと信じているザンギエフとは対照的な立場にいる。
キャプテン・サワダ(沢田謙也):A.N.に所属する軍人。ガイルの部隊の一員としてシャドルーとの戦いに参加する。
作品の魅力解説・レビュー
有名キャラクターは大量投入、しかし原作像は大胆に改変
リュウ、ケン、チュン・リー、ガイル、ダルシム、ブランカ、キャミィ、ザンギエフなど、『ストリートファイター』に詳しくなくても名前を耳にしたことがある人はいるであろう人気キャラクターが、これでもかとばかりに顔をそろえる。
しかし、その人物設定の改変ぶりは、ゲームファンでなくとも気づくほどに大胆だ。シリーズの顔ともいえるリュウは主人公の座を明け渡し、犯罪者を騙して生計を立てるチンピラのようなキャラクターとして登場する。代わって物語の中心に据えられたのはガイルだ。
ダルシムはヨガの達人から科学者へと姿を変え、ブランカもまた、ブラジルの密林で育った野生児ではなく、ガイルの戦友チャーリーが人体実験によって変異した存在として描かれる。さらにT・ホークやキャミィはガイル率いる軍事部隊の一員に組み込まれ、ザンギエフに至ってはバイソン陣営の戦闘員という立場に置かれている。
人物関係からバックストーリーに至るまで、原作へのリスペクトを感じ取りにくくなるほど大幅に組み替えられており、ゲームのキャラクターを借りて、まったく別の軍事アクション映画を作り上げたかのような印象は否めない。
なお、日本のゲームファンにとって特に混乱しやすい「ベガ」「M・バイソン」「バルログ」の名前の入れ替わり自体は、本作独自の改変ではない。英語圏版ゲームで3人の名前が入れ替えられており、映画はその海外版名称を採用している。そのため映画のバイソン将軍が日本版ゲームのベガ、映画のベガが日本版のバルログ、映画のバルログが日本版のM・バイソンにあたる。
格闘ゲームの映画なのに、格闘より軍事アクション
B級映画らしい大味さや荒唐無稽さだけなら、それ自体を楽しむ余地はある。しかし最大の問題は、『ストリートファイター』というタイトルから期待する格闘の面白さがかなり薄いこと。
ガイル率いる軍隊とバイソンの軍事国家が戦う構図が中心となり、銃撃、潜入、爆発、人質救出といった一般的なアクション映画の展開が続く。ゲームを象徴する必殺技や一対一の格闘戦も登場するものの、作品全体を支えるほどではない。
格闘家たちがそれぞれの技と信念をぶつけ合う作品ではなく、多数のゲームキャラクターを軍事アクションの登場人物へ配置した作品になっており、「格闘ゲームを映画にした」という魅力はかなり弱い。
ラウル・ジュリアのバイソンだけは強烈な存在感
そんな中でも印象に残るのが、バイソン将軍を演じたラウル・ジュリア。世界征服を本気で正義だと信じる誇大妄想的な独裁者を、徹底して大仰かつ芝居がかった演技で押し切っている。
作品全体のB級感とも妙に噛み合っており、チュン・リーに父親を殺された日のことを問い詰められ、「自分にとっては何でもない1日だった」と返す場面などをはじめ、悪役としての存在感は備えている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
