【映画レビュー『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』】理想も情熱も砕け散る―啓蒙の光の中で焼かれた禁断の恋【マッツ・ミケルセン生誕60周年祭】

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague REVIEWS
『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

「マッツ・ミケルセン生誕60周年祭」より、『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』を紹介&レビュー。

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』概要・あらすじ

11月14日(金)より始まる特集上映「マッツ・ミケルセン生誕60周年祭」にて上映される『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』は、啓蒙思想が広がりを見せる18世紀デンマークの宮廷を舞台に、権力と情熱が激しくせめぎ合う歴史ドラマだ。メガホンを取るのは、後に『愛を耕すひと』でも再びマッツ・ミケルセンと組むことになるニコライ・アーセル監督。孤独な王妃と国王の侍医が織りなす危険な恋が、やがて改革の嵐と宮廷の陰謀を巻き起こしていく。ベルリン国際映画祭では脚本賞と男優賞を受賞。主演はマッツ・ミケルセン、共演にアリシア・ヴィキャンデルを迎えている。

マッツ・ミケルセン&ニコライ・アーセル監督、『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』メイキング写真 『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

マッツ・ミケルセン&ニコライ・アーセル監督、『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』メイキング写真 『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

舞台は18世紀後半のデンマーク。即位したばかりの若き王クリスチャン7世の宮廷に、英国から王妃カロリーネが嫁ぎ、ドイツ人侍医ストルーエンセが仕えることになる。それぞれに孤独を抱えた王妃と侍医は次第に惹かれ合い、王の篤い信頼を得た侍医は啓蒙思想に基づく改革を推し進めていく。しかし、既得権益を守ろうとする貴族たちの反撃が迫り、宮廷は激動の渦へと呑み込まれていく。

閉塞感に息が詰まる王宮

恋愛描写の濃淡や時系列の圧縮、登場人物たちの心理描写には映画的な脚色が施されているものの、物語の骨格は史実に基づいて構築された悲恋の歴史劇だ。

啓蒙思想に基づく改革の試みは保守派の抵抗によって次第に押し潰され、その渦中で育まれた愛もまた悲劇へと転じていく。理想も情熱も、すべてが権力・多数派勢力の前に崩れ去った18世紀後半デンマークの、保守的で閉塞した圧政の空気が、画面を通して重く伝わってくる作品だ。

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

三者三様、キャストの魅力

クリスチャン7世を演じたミケル・ボー・フォロスゴー、王妃キャロラインを演じたアリシア・ヴィキャンデル、そして侍医ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセを演じた主演マッツ・ミケルセン。この三者の演技と、そこから生まれる独特の化学反応こそが本作の中心的な魅力となっている。

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

まず目を引くのは、無邪気さと横暴さを併せ持つ国王を体現したフォロスゴーの造形だ。周囲を困惑させ呆れさせる彼の振る舞いは強烈な印象を残す。一方、権力によってのみ結ばれた空虚な夫婦関係の中で徐々に表情を失っていくキャロライン役のヴィキャンデルは、確固たる意志を持ちながらも宮廷の権力構造に怯える女性を見事に演じきっている。

そしてその表向きの虚しい関係の陰で密かに育まれる禁断の恋。ポーカーフェイスの奥に色気と激しい葛藤、策略と人間性を滲ませるストルーエンセ役のミケルセンは、主演としての存在感で本作を完成へと導いている。

淡々と描かれる悲劇の残酷さ

全体を通して抑制の効いた淡々とした語り口は、題材の重さを考えるとドラマチックさにやや物足りなさを感じる部分もある。しかし本作がエンターテインメント作品ではなく、史実を演技と映像の力で再現しようとした試みだということを考えれば、この抑えられたトーンにも納得がいく。

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』より © 2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

特に終盤、悲劇が感情的な盛り上がりを排して淡々と描かれる手法は、歴史書に記された無機質な文字の羅列にしか残らなかった悲劇の残酷さと虚しさを、かえって浮き彫りにしているようにも思える。

王妃と侍医の禁断の恋と改革を描く歴史劇『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』は、11月14日(金)より始まる特集上映「マッツ・ミケルセン生誕60周年祭」にて上映される。

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