ジョシュア・オッペンハイマー監督最新作『THE END(ジ・エンド)』が12月公開。ティルダ・スウィントンら豪華キャストが終末世界で歌う。
ジョシュア・オッペンハイマー監督の最新作『THE END(ジ・エンド)』が、12月12日(金)より全国公開される。ティルダ・スウィントンが主演を務め、ジョージ・マッケイ、マイケル・シャノンら実力派俳優が共演。監督が初めて挑む長編フィクション作品は、“終末後の地球”を舞台にした黙示録的ミュージカルだ。環境破壊により地上が居住不可能となってから25年後の世界で、豪華な地下シェルターに暮らす家族が、外の世界からやってきたひとりの女性を迎えたことで静かに崩れていく日常を描く。
『アクト・オブ・キリング』監督が挑む初のフィクション作品
『アクト・オブ・キリング』(2014)や『ルック・オブ・サイレンス』(2015)で知られるジョシュア・オッペンハイマー監督が、ついに長編フィクションに挑戦した。これまで実在の加害者や被害者の視点から現実の暴力を描いてきた監督は、本作で“終末後の世界を生きる家族”を通して人間の否認と希望を描き出す。監督は制作背景について「『アクト・オブ・キリング』が公開された後、私は安全にインドネシアに戻ることはできませんでした。なので、同様の手法で富を蓄える他の地域の寡頭支配者たちについて調査を始めたのです」と語っている。
その取材の過程で出会った“石油王”の存在が、本作の原点となった。
ティルダ・スウィントンら豪華キャストが終末世界で歌う
本作では、母親役を演じるティルダ・スウィントンがプロデューサーも兼任し、圧倒的な存在感で物語を導く。息子役には『1917 命をかけた伝令』のジョージ・マッケイ、父親役には『シェイプ・オブ・ウォーター』などで知られるマイケル・シャノンが名を連ねる。さらにモーゼス・イングラムやレニー・ジェームズら実力派キャストが加わり、それぞれが劇中で美しい歌声を披露するという。
物語の舞台は、環境破壊によって地上が居住不可能となってから25年後の地球。豪奢な地下シェルターで暮らす富裕層の家族のもとに、ある日、外の世界からひとりの若い女性が現れる。その出会いをきっかけに、孤立しながらも秩序を保ってきた家族の生活は静かに揺らぎ、やがて彼らは自らの過去と存在の意味に向き合うことになる。
地下という閉ざされた空間で展開するこのミュージカルは、人間の記憶と罪、そして再生への希求を描く寓話でもある。
構想の原点は“現実逃避する石油王”との出会い
本作の着想は、監督自身のリサーチの中で出会った“石油王”の存在にあった。ジョシュア・オッペンハイマー監督は「私は中央アジアで、石油権益を得るために暴力を行使した石油王を見つけました。彼は家族のために防空壕を購入していたのです」と語る。
彼が家族と共に暮らす防空壕を訪れた監督は、「どうやって脱出するのか?」「愛する者を置き去りにした後悔とどう向き合うのか?」などの問いが頭をよぎったという。しかし、現実からの逃避そのものを象徴するような空間に立ち会ったとき、彼は“答えのない罪悪感”と“過去を白塗りする人間の本能”に直面する。
帰路に観たジャック・ドゥミ監督のミュージカル『シェルブールの雨傘』が決定的な転機となり、監督は25年後の地下シェルターに暮らす家族を題材にした物語をミュージカルとして描くことを決意。「アメリカ的本質を象徴する<絶望的否認と希望>を抱えた家族像を描こう」と語る通り、現実を見つめながらも希望を捨てきれない人間の姿が本作の核にある。
豪奢で歪な“家族”の構図が映す終末の寓話
公開されたメインビジュアルは、母親(ティルダ・スウィントン)が優雅に鎮座する周囲に、父親、息子、執事、医者といった“家族”の姿を配置した印象的な一枚だ。地下シェルターとは思えないほど豪奢でチグハグな衣装や調度品、そして交わらない視線の先が、それぞれの孤立を象徴している。
完璧に整えられた空間の中で、どこか不協和音を奏でるような家族の存在は、監督が描く「終末後の人間社会の縮図」を体現している。
現実を見ないまま閉ざされた空間に生き続ける者たちの姿は、現代の社会構造や環境問題とも呼応し、静かな恐怖と美しさを同時に放つ。
『THE END(ジ・エンド)』は、ドキュメンタリーとフィクションの境界を軽やかに越え、観る者に“終わり”とは何かを問いかける、ジョシュア・オッペンハイマー監督ならではの映像体験となりそうだ。
作品情報
タイトル:『THE END(ジ・エンド)』
原題:The End
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
脚本:ジョシュア・オッペンハイマー、ラスムス・ハイスターバーグ
出演:ティルダ・スウィントン、ジョージ・マッケイ、マイケル・シャノン、モーゼス・イングラム、レニー・ジェームズ、ブロナー・ギャラガー、ティム・マッキナリー
2024年/デンマーク・ドイツ・アイルランド・イタリア・イギリス・スウェーデン・アメリカ合作/148分/字幕翻訳:松浦美奈
公開日:2025年12月12日(金)
©Felix Dickinson courtesy NEON ©courtesy NEON
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
宣伝:東映ビデオ
公式サイト:https://cinema.starcat.co.jp/theend/
