【映画レビュー『バレリーナ:The World of John Wick』】“女性版ウィック”ではなくイヴとして―独創的アクションが放つ輝き

『バレリーナ:The World of John Wick』®, TM & © 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. REVIEWS
『バレリーナ:The World of John Wick』®, TM & © 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『ジョン・ウィック』シリーズに、また一人の復讐者が加わった。8月22日(金)公開の『バレリーナ:The World of John Wick』は、おなじみの世界観を継承しながらも、スピンオフとしての立ち位置を明確に理解した上で、シリーズに新鮮な息吹を注ぎ込む意欲作である。

ジョン・ウィックとは異なる復讐者イヴの存在感

主人公イヴ(アナ・デ・アルマス)は、ジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)とは根本的に異なるキャラクターだ。熟練の殺し屋ではない彼女と、引退を望む伝説の男。イヴは復讐のために自らその世界に足を踏み入れていく。この対比こそが重要で、彼女を単なる「女性版ジョン・ウィック」として片付けてしまうのは安直だろう。確かに同じ世界観を舞台にし、シリーズの魅力を受け継いでいるが、本作には明らかに独自の個性と方向性がある。

『バレリーナ:The World of John Wick』®, TM & © 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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独創的な武器と戦術で描くアクションの新境地

ジョン・ウィックの代名詞といえば、洗練された無駄のないガンアクションだ。しかし、アナ・デ・アルマス演じるイヴは、そのスタイルを踏襲するのではなく、まったく別のアプローチでアクションの新境地を開拓している。小柄な体格を活かした機動性重視の戦闘スタイルは、武器の選択や動きの組み立て方によって、彼女の成長過程を巧みに表現する。

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鍋から斧、果てはアイススケート靴まで、身の回りのあらゆるものを武器に変える発想力は見事だ。実際の炎と水圧を組み合わせた火炎放射器との対決、狭い室内でのグレネード戦術、そして環境を最大限に活用した武器運用など、特に終盤にかけてのアクションの爆発力は圧巻である。単なる思いつきではなく、それを映像として説得力を持って見せる技術力との融合が、これまでにない映像体験を生み出している。シリーズの根幹は保ちながらも、新たな武器体系と環境活用、そして戦略的な暗殺者という設定で、明確な差別化を図った手腕は評価に値する。

映像美と様式美が支えるスピンオフの完成度

もちろん、本作にはジョン・ウィック本人も登場し、ファンお馴染みの洗練されたアクションを披露してくれる。シリーズのファンにとっては安心材料だろう。ただし、これが諸刃の剣でもある。結果的にウィックの登場シーンがクライマックスの一つとして機能してしまうのは、スピンオフ作品としてはやや複雑な問題を孕んでいる。

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本作の映像美についても特筆すべきものがある。ロケーション撮影では自然光を効果的に取り入れ、歴史的建造物が持つ柔らかな光の質感を活かしながら、要所では人工照明によって登場人物の表情や銃口を際立たせている。こうした照明設計が、アクションシーンの緊張感と美術的な完成度を両立させているのだ。

撮影手法においても、単一カメラによる長回しを多用することで、アクションの迫力と空間の実在感を損なうことなく、シリーズが築き上げてきた様式美を継承している。特に印象的なのは色彩と光の対比演出だ。都市の持つ冷たさと、炎や人肌の温かさを対置させることで、視覚的な物語性を強化している点は見逃せない。

『バレリーナ:The World of John Wick』®, TM & © 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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シリーズの新たな可能性を示した意欲作として、『バレリーナ』は十分に成功している。イヴというキャラクターを通じて、『ジョン・ウィック』の世界観に新しい血を注ぎ込みながら、映像的な完成度も高い水準を維持している。スピンオフとしての課題は残るものの、アクション映画としての娯楽性は確実に担保されており、シリーズファンにも新規観客にも楽しめる一作に仕上がっている。

『バレリーナ:The World of John Wick』は8月22日(金)公開。

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