映画『バイオハザード:デスアイランド』(2023)を紹介&解説。
映画『バイオハザード:デスアイランド』概要
映画『バイオハザード:デスアイランド』は、羽住英一郎監督(『バイオハザード:インフィニット ダークネス』)が手掛けた、カプコンの人気サバイバルホラーゲームシリーズを原作とするフルCGアニメーション映画。『バイオハザード:ヴェンデッタ』(2017)の深見真が脚本を担当し、サンフランシスコで発生した謎のゾンビ事件を追う歴代主人公たちが、監獄島アルカトラズを舞台に新たなバイオテロの脅威に立ち向かう。レオン・S・ケネディ、クリス・レッドフィールド、ジル・バレンタイン、クレア・レッドフィールド、レベッカ・チェンバースというシリーズを代表する5人の共演が最大の見どころ。オリジナル英語版では、マシュー・マーサー、ケビン・ドーマン、ニコール・トンプキンス、ステファニー・パニセロ、エリン・ケイヒルらが声優を務める。
作品情報
| 日本版タイトル | 『バイオハザード:デスアイランド』 |
|---|---|
| 原題 | Resident Evil: Death Island |
| 製作年 | 2023年 |
| 日本公開日 | 2023年7月7日 |
| ジャンル | アニメーション/アクション/ホラー/SF |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 株式会社カプコン『バイオハザード』シリーズ(ゲーム) |
| 上映時間 | 89分(日本劇場公開データ) |
| 監督 | 羽住英一郎 |
|---|---|
| 脚本 | 深見真 |
| 製作 | 篠原宏康/宮本佳(CGプロデューサー) |
| 撮影 | Yun M. Watanabe |
| 編集 | 西尾光男 |
| 作曲 | 近藤嶺 |
| CGディレクター | 清水智弘 |
| 出演(英語版声優) | マシュー・マーサー/ケビン・ドーマン/ニコール・トンプキンス/ステファニー・パニセロ/エリン・ケイヒル/ダマン・ミルズ/クリスティーナ・ヴァレンズエラ/フランク・トダロ |
| 製作 | DEATH ISLAND FILM PARTNERS |
| CG制作 | Quebico |
| 制作プロデュース | トムス・エンタテインメント |
| 配給 | 角川ANIMATION(日本)/ソニー・ピクチャーズ・ワールドワイド・アクイジションズ(海外) |
あらすじ
2015年、サンフランシスコで感染経路不明のゾンビ事件が続発。対バイオテロ組織BSAAに所属するクリス・レッドフィールドとジル・バレンタイン、アドバイザーのレベッカ・チェンバースは調査を開始する。一方、レオン・S・ケネディは、機密情報を握る科学者アントニオ・テイラーを拉致した武装集団を追跡していたが、謎の女の妨害に遭い取り逃がしてしまう。やがて、クレア・レッドフィールドが所属するNGO団体テラセイブの協力によって、ゾンビ事件の被害者全員がアルカトラズ島を訪れていたと判明。クリスたちは調査のため監獄島へ向かうが、そこには世界規模のバイオテロを目論む新たな敵が待ち受けていた。
主な登場人物(キャスト)
レオン・S・ケネディ(マシュー・マーサー/日本語吹替:森川智之):アメリカ合衆国大統領直属のエージェント組織DSOに所属する捜査官。ラクーンシティ事件の生存者で、数々のバイオテロ事件を解決してきた歴戦の戦士。本作では誘拐されたテイラー博士の捜索中に、アルカトラズ島の事件へ巻き込まれる。
クリス・レッドフィールド(ケビン・ドーマン/日本語吹替:東地宏樹):対バイオテロ組織BSAAの中心人物で、元S.T.A.R.S.隊員。クレアの兄であり、ジルとは長年の戦友。過去の洗脳による罪悪感を抱えるジルを気遣いながら、新たな感染事件の解決に挑む。
ジル・バレンタイン(ニコール・トンプキンス/日本語吹替:湯屋敦子):BSAAに所属する元S.T.A.R.S.隊員。かつてアルバート・ウェスカーに洗脳され、意に反して仲間を攻撃した過去を持つ。精神的な傷を抱えながら任務に復帰し、過去の罪悪感と向き合いながら戦う。本作のドラマ面における中心人物。
クレア・レッドフィールド(ステファニー・パニセロ/日本語吹替:甲斐田裕子):クリスの妹で、バイオテロ被害者の救済を行うNGO団体テラセイブに所属。ラクーンシティ事件を生き延びた経験を持つ。サンフランシスコ近郊で発見された異常なシャチの死骸を調査し、事件の手がかりをつかむ。
レベッカ・チェンバース(エリン・ケイヒル/日本語吹替:小清水亜美):元S.T.A.R.S.隊員で、現在は大学教授として研究を続けながらBSAAのアドバイザーを務める。ウイルスやワクチンの専門知識を生かし、仲間たちを救うために奔走する。
ディラン・ブレイク(ダマン・ミルズ/日本語吹替:子安武人):かつてラクーンシティ事件で悲惨な経験をした元民間軍事会社の兵士。感染した仲間や親友を失った過去から、世界の仕組みに強い憎悪を抱くようになる。本作のバイオテロを引き起こす中心人物。
マリア・ゴメス(クリスティーナ・ヴァレンズエラ/日本語吹替:大原さやか):前作『バイオハザード:ヴェンデッタ』にも登場した女性。父ディエゴ・ゴメスを失ったことからレオンたちへの復讐心を抱き、ディランの計画に協力する。高い身体能力と格闘能力を持つ。
アントニオ・テイラー(フランク・トダロ/日本語吹替:上田燿司):高度なロボット技術に精通する科学者。機密情報を巡って武装集団に拉致され、レオンの捜索対象となる。その技術と知識が、事件の解決を左右する。
作品の魅力解説・レビュー
フルCG映画としての進化を実感する緻密な映像
本作でまず印象的なのは、フルCGアニメーションの完成度が大きく向上していること。2008年公開の『バイオハザード ディジェネレーション』では、キャラクターの表情や身体の動きにCG特有の硬さを感じる場面もあったが、本作では人物、背景、クリーチャーの造形がいっそう緻密になり、アクションも非常に滑らかになっている。
特にキャラクターの細かな動作や、銃撃戦から格闘戦へと移行するスピード感のある演出は見応え十分。大掛かりなクリーチャーとの戦闘も迫力があり、シリーズの映像技術の進化を感じられる。
羽住英一郎監督はCG制作においても実写映画的な撮影手法を重視しており、本作では俳優を使って実際に撮影した映像を演出の指針とする「Vコンテ」も活用された。実写作品で培われた監督の演出感覚と、高度なCG技術の組み合わせが、迫力と見やすさを両立させている。
歴代主人公5人が集結! バイオ版アベンジャーズのようなお祭り感
本作最大の魅力は、何といってもレオン、クリス、ジル、クレア、レベッカという歴代シリーズの人気キャラクターが一堂に会すること。
これまでゲームやCG映画でそれぞれの物語を歩んできた主人公たちが、同じ事件を追い、ついには同じ敵に立ち向かう。その構図は、まるで『アベンジャーズ』のようなオールスター映画の楽しさを持っている。
しかも、単に人気キャラクターを登場させるだけではなく、それぞれの能力を生かした見せ場が用意されている。レオンの華麗な格闘アクション、クリスの力強い戦闘、ジルの勇敢な活躍、クレアの行動力、レベッカの科学的知識が組み合わさり、チームとして戦う爽快感が生まれている。
羽住監督自身も、主要キャラクター5人が集結する本作をアトラクションのように楽しんでもらいたいと語っており、シリーズファンに向けた娯楽作品としての方向性が明確だ。
長年シリーズを追ってきたファンほど、この顔ぶれがそろったこと自体に大きな満足感を得られるだろう。
歴戦の主人公たちが強すぎる? サバイバルホラーとしての弱点
一方で、これだけの精鋭がそろったことは、サバイバルホラーとしての緊張感を薄める要因にもなっている。
レオンもクリスもジルも、これまで幾度となく絶望的な状況を生き延びてきた歴戦の戦士。彼らが集結してしまうと、多少強力なクリーチャーが登場しても、観客は安心して戦闘を見守れてしまう。
本来の『バイオハザード』が持っていた、限られた武器と物資で未知の恐怖から生き延びるサバイバル感は、かなり後退しているといえる。
また、『ディジェネレーション』や『ダムネーション』では、バイオ兵器を巡る政治的な思惑や倫理的問題が物語を支える重要な要素となっていた。それに対して本作は、ディランという敵役を通して社会への憎悪や復讐を描きつつも、そうした問題を深く掘り下げるより、主人公たちの共闘と派手なアクションに重点を置いている。
シリーズの世界観を利用した重厚なサスペンスを期待すると、物語にはやや物足りなさが残るかもしれない。
ジルの再起を描きながら、娯楽性を優先したファンムービー
そんな本作にも、キャラクターの内面に踏み込んだドラマが存在する。その中心となるのがジル・バレンタインだ。
かつて敵に洗脳され、仲間を傷つけた経験から、ジルは自分自身を許せずにいる。そんな彼女が再び仲間と肩を並べ、信頼を取り戻していく姿は、本作に感情的な厚みを与えている。
また、仲間を殺さざるを得なかった過去から復讐に走ったディランと、仲間を救おうとするジルたちの対比も、物語の重要なテーマとなっている。
ただし、作品全体として見れば、深刻な心理ドラマや複雑な社会問題よりも、人気キャラクターたちが協力して強大な敵を倒す爽快感が優先されている。
その意味で本作は、『バイオハザード』シリーズの持つ恐怖や政治的な奥行きを存分に味わう作品というより、長年のファンに向けた豪華なファンムービーといえるだろう。
物語の深さには限界があるものの、映像技術の進化と歴代主人公たちの共演という二つの大きな魅力によって、エンターテインメントとしての満足度は高い一作に仕上がっている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:ラクーンシティの悲劇と新たな事件
1998年、ラクーンシティで発生したバイオハザード。アンブレラ社の関係者を救出する任務に就いた兵士ディラン・ブレイクは、仲間たちが次々とゾンビ化する地獄を経験。親友JJまでゾンビに噛まれてしまい、自らの手で射殺することになった。
それから17年後、サンフランシスコで感染経路不明のゾンビ事件が続発。クリス、ジル、レベッカ、そしてクリスの妹クレアが調査を開始する。一方、レオンは誘拐された科学者アントニオ・テイラーを追っていた。
かつて敵に洗脳され、仲間を傷つけたジルは、いまだに罪悪感に苦しんでいた。クリスは彼女を心配するが、ジルは戦い続けることで過去を償おうとしていた。
承①:アルカトラズ島での惨劇
感染者全員がアルカトラズ島を訪れていたことが判明し、クリス、ジル、クレアが島へ向かう。
しかし、島では観光客が次々とゾンビ化し、大惨事に。ジルは仲間とはぐれるが、テイラー博士を追っていたレオンと合流する。
一方、クリスとクレアは生存者の男性を救出するが、謎の攻撃によってウイルスに感染させられ、捕らわれてしまう。
承②:黒幕ディランの正体と復讐
事件の黒幕は、かつてラクーンシティで親友を失ったディランだった。彼は蚊のような小型ドローンを使い、特定の人間だけをT-ウイルスに感染させる技術を開発していた。
ディランはレオンも感染させる一方、ジルだけを無事な状態で残し、感染したクレアを射殺するよう迫る。かつて親友を殺さなければ生き残れなかった自分と同じ苦しみを、ジルにも味わわせようとしていたのだ。
しかし、ジルは仲間を殺すことを拒否する。
怒ったディランは、クレアと同じ牢に閉じ込めていた男性を銃撃。その男性こそ、レオンが捜索していたテイラー博士だった。
死の間際、テイラーは自分を助けようとするクレアの優しさに心を動かされ、ドローンを制御するためのパスワードを託して息絶える。
転:仲間の救出とマリアの最期
ディランが世界中にウイルスを拡散させようとする中、ワクチンを持ったレベッカが島へ向かう。
同行した救援部隊は巨大な海洋生物兵器に襲われて壊滅するが、レベッカは生き延び、ジルと合流。レオン、クリス、クレアにワクチンを投与し、3人を救うことに成功する。
その後、レオンの前にマリア・ゴメスが立ちはだかる。前作『バイオハザード:ヴェンデッタ』で父ディエゴを失ったマリアは、レオンたちへの復讐を狙っていた。
激しい格闘戦の末、レオンの攻撃で吹き飛ばされたマリアは、破損した機械から突き出た金属の棒に胸を貫かれる。自力で棒から抜け出すものの、そのまま倒れて死亡する。
結:5人の共闘とジルの再出発
追い詰められたディランは自らウイルスを投与し、巨大な海洋生物兵器と融合。怪物となってジルたちに襲いかかる。
クリス、ジル、レオンは協力して戦うが、圧倒的な巨体に苦戦。
一方、クレアとレベッカはテイラーが遺したパスワードでドローンの制御を奪い返し、大量のウイルスをディラン自身に注入させる。
弱体化したディランは海へ逃げようとするが、ジルがおとりとなって水門の下へ誘導。クリスとレオンが大型兵器で水門を落下させ、ディランを押し潰して倒す。
世界規模のバイオテロは阻止され、主要人物5人は全員生還する。
戦いを終えたクリスはジルの活躍を認め、彼女の復帰を温かく迎える。ジルも仲間とともに戦う自信を取り戻し、物語は幕を閉じる。
