マッツ・ミケルセン、死刑囚のための最後の晩餐を作る料理人に - 新作『ラスト・ミールズ』で衝撃的な役に挑戦 ! 今秋撮影開始
マッツ・ミケルセンが演じる元ホワイトハウスシェフと死刑囚の衝撃の物語が制作へ。
デンマークの名優マッツ・ミケルセンが、オスカーノミネート監督ラミン・バーラニの新作『Last Meals(原題)』(ラスト・ミールズ=最後の食事)で死刑囚のために料理を作るシェフを演じることが明らかになった。今年後半からアイルランドで撮影が始まるこの作品は、ハンウェイ・フィルムズによってカンヌ映画祭のマーケットで販売が開始される。
『007/カジノ・ロワイヤル』や『アナザー・ラウンド』で知られるミケルセンは、元ホワイトハウスシェフからの転落により、最高警備刑務所で死刑囚たちの食事を作ることになった男を演じる。『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』などで知られるボイド・ホルブルックが共演し、ハンガーストライキを決意した死刑囚を演じる予定である。
料理から見る罪と贖罪 - 刑務所を舞台にした人間ドラマ
本作は、2022年に初めて発表されたプロジェクトで、ジャスティン・ピアセツキによるAMPASニコル賞を受賞した脚本をもとに製作される。罪悪感、死刑制度、そして贖罪といったテーマを、最高級の料理と「オルトラン」と呼ばれるフランスの伝統的だが現在は違法となっている高級料理を通して描き出す意欲作だ。
物語の中心となるのは、パルムドール受賞者でもあるミケルセンが演じるウォルター・カラット。かつてはホワイトハウスで腕を振るっていた一流シェフが、ある事件をきっかけに転落し、最高警備刑務所の厨房で死刑囚たちの食事を作ることになる。そこで出会うのが、ボイド・ホルブルックが演じる死刑囚ジェフリー・リード。リードはハンガーストライキを決意し、カラットが作る食事を頑なに拒否することで彼を苛立たせる。
当初は敵対関係にあったふたりだが、交流を深めるうちにカラットはリードが無実かもしれないと考え始める。やがて真実を突き止めようとする中で、予想外の深いつながりが生まれていく。「ショーシャンクの空に」を彷彿とさせる人間ドラマが展開される予定だ。
儀式的な美食文化 - 物語のキーとなる「オルトラン」
映画のプロットにおいて重要なエッセンスとなった「オルトラン」は、フランス料理史上最も論争的な料理のひとつだ。ズアオホオジロという小鳥を使った料理で、その調理法と食べ方には独特の儀式性があるため、ミケルセンがハンニバル・レクター役を演じた人気シリーズ「ハンニバル」においても登場している。
この小鳥は暗闇で数週間飼育され、穀物やブドウで肥育された後、ブランデーに漬けてローストされる。食べる際には白いナプキンを頭からすっぽりとかぶるという特徴的な作法があり、この理由については「料理の香りを閉じ込めるため」という説と、「神の目から隠れるため」という説がある。食べる姿を神に見せないというのは、その残酷な調理法への後ろめたさからとも言われている。
この料理は、1999年以降EUでは提供が禁止されており、フランスでも密猟や販売が厳しく規制されている。映画では、このような倫理的に問題のある料理もモチーフのひとつとして、死刑制度を扱いながら罪と贖罪のテーマを掘り下げていくようだ。
製作陣からの熱いコメント - ミケルセンの役への思い
本作の主演を務めるミケルセンは、参加を決めた理由について次のように語っている。「時々、欠点を見つけるために物語を分析するのではなく、そのキャラクターと雰囲気に完全に没頭してしまうような物語に出会うことがあるんだよね。裁判官のような気持ちにさせながらも、ジャッジは下さない物語。普通ではない状況にいる、見覚えのある普通の人々の物語。失われた夢、希望、贖罪、そして予想外のものへの大きな愛。『Last Meals』はそういう物語なんだ。夢のようなプロデューサーチーム、俳優陣、そして中心にラミンがいる—これ以上なくワクワクしているよ」
また、2021年に「ホワイト・タイガー」で脚色賞にオスカーノミネートされたラミン・バーラニ監督も「ジャスティンの脚本は、感情的でスリリングなストーリーテリングで私を魅了したよ。刑務所のシェフについての映画を見たことがなかった―そのユニークな前提は始まりに過ぎなかったんだ。また、ついに素晴らしいマッツ・ミケルセンと協力する機会も得られた。彼がどんな役にも魂と複雑さをもたらす能力は比類ないものだね」と期待を寄せている。
紆余曲折を経て実現する注目作品
実は『ラスト・ミールズ』は、製作までに紆余曲折を経ている。2022年に初めて発表された際は、デルロイ・リンドが主演し、イギリスの映画製作者アデヴァレ・アキノエ・アグバジェが監督を務める予定だった。その後、サミュエル・ジャクソンが主演し、アンドリュー・レヴィタスが監督することになっていたが、最終的に現在の布陣に落ち着いた。
製作には、エミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされた実力派プロデューサーのレネ・タブが参加。タブは「『ラスト・ミールズ』は、五感を刺激する体験だ―喜び、苦しみ、そして栄養としても支配としても機能する食べ物との複雑な関係を探求する、深く人間的な物語。司法制度を背景に、尊厳とレジリエンスについての時宜を得た刺激的な瞑想なんだ」と語っている。
ハンウェイ・フィルムズのCEO、ガブリエル・スチュワートも「これは受賞歴のある脚本であり、ついにその約束をすべて実現できる適切なクリエイティブチームを見つけました。ラミンとマッツは物語に自分たちの特徴を刻み込み、カンヌでこれを発表できることをこれ以上なく嬉しく思います」とコメント。北米での販売はUTA独立映画グループとセンティエント・エンターテインメントが担当する予定で、映画業界での注目度も高いことがうかがえる。
今年後半からアイルランドで撮影開始予定の本作は、ミケルセンの新たな代表作となる可能性を秘めた作品として、今後の展開が楽しみだ。





