映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』(2024)を紹介&解説。
映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』概要
映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』は、『ワンダー 君は太陽』でオギーをいじめた少年ジュリアンと、その祖母サラの知られざる過去を描くヒューマンドラマ。ナチス占領下のフランスで、ユダヤ人少女サラをかくまった少年と家族の勇気を通して、極限状態にも失われない思いやりの尊さを伝える。監督はマーク・フォースター(『ネバーランド』『オットーという男』)。出演はアリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート、ジリアン・アンダーソン、ヘレン・ミレンら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ホワイトバード はじまりのワンダー』 |
|---|---|
| 原題 | White Bird |
| 製作年 | 2024年 |
| 本国公開日 | 2024年10月4日 |
| 日本公開日 | 2024年12月6日 |
| ジャンル | ドラマ/戦争/青春 |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | R・J・パラシオ『ホワイトバード』(グラフィックノベル) |
| 上映時間 | 121分 |
| 監督 | マーク・フォースター |
|---|---|
| 脚本 | マーク・ボンバック |
| 製作 | トッド・リーバーマン/デヴィッド・ホバーマン/R・J・パラシオ |
| 製作総指揮 | ジェフ・スコール/ロバート・ケッセル/ケヴィン・ダウンズ/ジョン・アーウィン/アンドリュー・アーウィン/レネ・ウルフ/アレクサンダー・ヤング/マーク・ボンバック/ケヴァン・ヴァン・トンプソン/クリストファー・ウッドロウ/コナー・ディグレゴリオ |
| 撮影 | マティアス・クーニクスビーザー |
| 美術 | ジェニファー・ウィリアムズ |
| 衣装 | ジェニー・ビーバン |
| 編集 | マット・チェシー |
| 作曲 | トーマス・ニューマン |
| 出演 | アリエラ・グレイザー/オーランド・シュワート/ジリアン・アンダーソン/ヘレン・ミレン/ブライス・ガイザー |
| 製作 | ライオンズゲート/マンデヴィル・フィルムズ/2DUX2プロダクションズ/パーティシパント/キングダム・ストーリー・カンパニー/メディア・キャピタル・テクノロジーズ |
| 配給 | ライオンズゲート(アメリカ)/キノフィルムズ(日本) |
あらすじ
オギーへのいじめが原因で学校を退学処分になったジュリアンは、転校先でも自分の居場所を見つけられずにいた。そんな孫を訪ねてきた祖母サラは、自らの少女時代に起きた出来事を語り始める。
1942年、ナチス占領下のフランス。ユダヤ人であるサラの学校にも迫害の手が及び、生徒たちが次々と連行されていく。逃げ場を失ったサラを救ったのは、彼女がそれまで関心を向けてこなかった同級生ジュリアンだった。サラはジュリアンの家族によって納屋にかくまわれ、外へ出られない生活を送ることになる。危険が迫る中、サラとジュリアンの間には友情を超えた強い絆が芽生えていく。
主な登場人物(キャスト)
サラ・ブラム(アリエラ・グレイザー):ナチス占領下のフランスで暮らすユダヤ人少女。学校に押し寄せたナチスの手を逃れ、同級生ジュリアンの家の納屋に身を隠す。それまで気に留めていなかったジュリアンと過ごすうちに、彼の勇気と優しさを知っていく。
ジュリアン・“トゥルトー”・ボーミエ(オーランド・シュワート):サラと同じ学校に通う少年。ポリオの後遺症で脚に障害があり、同級生からいじめを受けている。危険を承知でサラを助け、家族とともに彼女を守ろうとする。
ヴィヴィアン・ボーミエ(ジリアン・アンダーソン):ジュリアンの母親。迫害されるサラを家族の一員のように受け入れ、発覚すれば自分たちも命を奪われかねない状況で彼女を守り続ける。
サラ/グランメール(ヘレン・ミレン):ジュリアン・アルバンスの祖母。現在は画家として成功しているが、少女時代に経験したユダヤ人迫害について長く語らずにいた。自分の過ちと向き合えずにいる孫へ、勇気ある優しさが人生を変えた過去を明かす。
ジュリアン・アルバンス(ブライス・ガイザー):『ワンダー 君は太陽』でオギーをいじめていた少年。学校を退学処分になり、新たな環境でも周囲に合わせることを優先している。祖母の体験を聞くことで、傍観することと誰かを守ることの違いを学んでいく。
作品の魅力解説
『ワンダー 君は太陽』が日常生活の中で他者を思いやることの大切さを描いた作品だとすれば、本作が問いかけるのは、優しさを示すこと自体が命懸けになる状況で、なお他者のために行動できるかという問題だ。ジュリアンとその両親による選択を通して、思いやりを単なる美徳ではなく、恐怖に抗う勇気として描いている。
物語の中心となるサラとジュリアンの関係も印象深い。サラは当初、いじめられているジュリアンを積極的に傷つけてはいないものの、助けようともしていなかった。その少年が自分の命を救ってくれたことで、見て見ぬふりをすることの意味を理解していく。この構図は、祖母の話を聞く現代のジュリアンにも重なり、『ワンダー 君は太陽』から続く彼の成長物語として機能している。
一方、過酷な題材を扱う映画には最後まで容赦なく打ちのめされたいという観客にとって、現実の苛烈さを幻想的、あるいは救済的なイメージで包み込む場面には、「そこでそのように救うのか」と戸惑いを覚える余地がある。物語を分かりやすい教訓へ収束させる脚本や、感情を強く誘導する演出についても、好みが分かれるだろう。
しかし、その優しさや温かさは、ホロコーストを題材にした作品を幅広い世代へ届けるための意識的な選択でもある。恐怖や迫害をなかったことにはせず、それでも人間の善意と希望を物語の中心に置くことで、極限状態にも芽生える思いやりの尊さを伝えている。歴史映画としての苛烈さよりも、若い観客を含めて誰もが受け止めやすい感動作であることを選び、その狙いを一貫して形にした1作だ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
