映画『バイオハザードⅤ リトリビューション』(2012)を紹介&解説。
映画『バイオハザードⅤ リトリビューション』概要
映画『バイオハザードⅤ リトリビューション』は、ポール・W・S・アンダーソン監督がカプコンのゲーム『バイオハザード』シリーズを原案に描く、実写映画版シリーズ第5作。アンブレラ社の巨大な海底実験施設に囚われたアリスが、東京、ニューヨーク、モスクワなどを再現したシミュレーション空間を突破しながら脱出を目指すSFアクション・ホラー。主演はミラ・ジョヴォヴィッチ、共演にシエンナ・ギロリー、ミシェル・ロドリゲス、リー・ビンビン、ヨハン・アーブ、ケヴィン・デュランドら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『バイオハザードⅤ リトリビューション』 |
|---|---|
| 原題 | Resident Evil: Retribution |
| 製作年 | 2012年 |
| 本国公開日 | 2012年9月14日 |
| 日本公開日 | 2012年9月14日 |
| ジャンル | アクション/SF/ホラー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | カプコン『バイオハザード』シリーズ(ゲーム) |
| 上映時間 | 96分 |
| 監督・脚本 | ポール・W・S・アンダーソン |
|---|---|
| 製作 | ポール・W・S・アンダーソン/ジェレミー・ボルト/ロバート・クルツァー/ドン・カーモディ/サミュエル・ハディダ |
| 製作総指揮 | マーティン・モスコウィッツ |
| 撮影 | グレン・マクファーソン |
| 編集 | ニーヴン・ハウィー |
| 作曲 | トムアンドアンディ |
| 出演 | ミラ・ジョヴォヴィッチ/シエンナ・ギロリー/ミシェル・ロドリゲス/リー・ビンビン/ヨハン・アーブ/ケヴィン・デュランド/ボリス・コジョー/ショーン・ロバーツ/コリン・サーモン/オデッド・フェール/アリアナ・エンジニア |
| 製作 | コンスタンティン・フィルム/デイヴィス・フィルムズ/インパクト・ピクチャーズ |
| 配給 | スクリーン・ジェムズ(米国)/ソニー・ピクチャーズ(日本) |
あらすじ
T-ウイルスによって文明が崩壊する中、アリスはアンブレラ社に捕らえられ、巨大な海底実験施設で目を覚ます。施設内部には東京、ニューヨーク、モスクワ、郊外住宅地などが精巧に再現され、感染拡大を再現するシミュレーション実験が繰り返されていた。ウェスカーの命令で潜入したエイダ・ウォンと合流したアリスは、外部から救出に向かうレオンやバリー、ルーサーらと合流するため施設を進む。しかし、その前には洗脳された旧友ジルや、かつて死亡した仲間たちのクローンが立ちはだかる。
主な登場人物(キャスト)
アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ):アンブレラ社と戦い続けてきたシリーズの主人公。本作では超人的なT-ウイルス能力を失った状態で海底実験施設からの脱出を目指す。自分のクローンを母親だと思って育った少女ベッキーと出会い、彼女を守る中で母親としての一面も強く表れる。
ジル・バレンタイン(シエンナ・ギロリー):元S.T.A.R.S.隊員で、かつてアリスと共闘した旧友。現在は胸に取り付けられた装置によって洗脳され、レッド・クイーンの指示を受けてアンブレラ部隊を率い、アリスたちを追跡する。
エイダ・ウォン(リー・ビンビン):ウェスカーのトップエージェントとして活動していた凄腕の工作員。本作ではウェスカーと共にアンブレラから離反しており、海底施設へ先行潜入してアリスの脱出を支援する。施設の構造にも詳しく、アリスの案内役兼相棒となる。
ベッキー(アリアナ・エンジニア):アンブレラの感染実験用に作られた少女。郊外シミュレーションでアリスのクローンを母親として暮らしていたため、本物のアリスを自分の母親だと思う。聴覚障害があり、アリスとは手話でも意思を通わせる。
レオン・S・ケネディ(ヨハン・アーブ):ウェスカー側のレジスタンスを率いる戦闘員。バリーやルーサーら救出部隊を率いて外部からアンブレラ・プライムへ侵入し、アリス救出と施設からの脱出を目指す現場指揮官。
バリー・バートン(ケヴィン・デュランド):レオン率いる救出部隊の戦闘員。大型リボルバーを操る豪快なガンマンで、危険な施設を突破する主力のひとり。終盤では仲間を逃がすため自らアンブレラ部隊の足止めを引き受ける。
ルーサー・ウェスト(ボリス・コジョー):前作『バイオハザードIV アフターライフ』から生還したアリスの旧友。元プロスポーツ選手で高い身体能力を持ち、本作ではレオンの救出部隊に参加して再びアリスと合流する。
レイン・オカンポ(ミシェル・ロドリゲス):第1作で死亡したレインを基にアンブレラが作ったクローンが複数登場。郊外シミュレーションに配置された一般市民型と、ジルの部下としてアリスを追う兵士型では性格も役割も大きく異なる。
カルロス・オリヴェイラ/トッド(オデッド・フェール):過去作で死亡したカルロスを基にしたクローン。郊外シミュレーションではアリスのクローンの夫でベッキーの父親“トッド”として、別個体はジルの部下であるアンブレラ兵として登場する。
ジェームズ・“ワン”・シェイド(コリン・サーモン):第1作でレーザートラップによって死亡した特殊部隊隊長を基にしたクローン。本作ではジル率いるアンブレラ部隊の戦闘員としてアリスたちの前に現れる。
レッド・クイーン:かつてハイブを管理していた人工知能。本作ではアンブレラ社を掌握し、洗脳したジルやクローン兵、B.O.W.を使ってアリスたちの脱出を阻止する敵側の司令塔。
アルバート・ウェスカー(ショーン・ロバーツ):これまでアリスと敵対してきたアンブレラの重要人物。本作ではレッド・クイーンと対立し、エイダやレオンらを送り込んでアリス救出作戦を指揮する。改心したわけではなく、共通の敵を倒すためアリスの力を必要としている。
登場するクリーチャー
アンデッド(Undead):T-ウイルスに感染してゾンビ化した人間たち。シリーズを通して登場する基本的な感染者で、本作では郊外住宅地や東京を再現したシミュレーション空間などに出現する。
マジニ・アンデッド(Majini Undead):通常のアンデッドからさらに変異した感染者。口が大きく裂け、内部から触手状の器官を伸ばして襲いかかる。前作『バイオハザードIV アフターライフ』から引き続き登場する。
処刑マジニ(Axeman):巨大な体格と大斧を武器とするクリーチャー。英語圏の映画版資料では「Axeman」と呼ばれている。本作ではニューヨークを再現したエリアに2体が現れ、アリスとエイダを相手に戦う。ゲーム『バイオハザード5』の処刑マジニをモチーフとした存在。
プラーガ・アンデッド(Las Plagas Undead):ラス・プラガスの影響を受けたアンデッド。通常のゾンビとは異なり知能や運動能力が高く、銃器やRPGを使用したり、バイクや車両を操縦したりする。本作では主にモスクワを再現したシミュレーション区画でレオンたち救出部隊を襲撃する。
巨大リッカー(Uber-Licker):従来のリッカーをはるかに上回る巨体を持つ大型B.O.W.。長い舌や鋭い爪、高い身体能力を備え、人間を捕らえて運び去ることもできる。本作ではベッキーをさらい、アリスが彼女を救出するため追跡することになる。
キペペオ(Kipepeo)をモデルとした飛行型クリーチャー:ラストのワシントンD.C.上空に登場する、翼を持った大型クリーチャー。ゲーム『バイオハザード5』に登場するキペペオをモデルとしたデザインだが、映画本編内で名称が明言されるわけではない。ホワイトハウスを包囲する感染者やB.O.W.の群れに加わり、人類最後の拠点が絶望的な状況に置かれていることを示す。
ラス・プラガス(Las Plagas):宿主の身体能力や耐久力を大幅に強化する寄生生物。本作ではアンブレラ側のレイン・クローンが自ら投与し、銃撃にも耐えるほどの怪力と再生能力を獲得する。単独の敵クリーチャーとして行動するわけではなく、プラーガ・アンデッドや強化レインを生み出す存在として登場する。
作品の魅力解説・レビュー
引きの構図で見せる、シリーズ屈指のクールな映像
シリーズの中でも、とりわけ「撮影のクールさ」が際立つ1作だと個人的には感じている。人物にカメラを寄せ続けるのではなく、あえて引きの画で人物と空間を同時に収めるカットが印象的で、シルエットの強調や左右対称の配置、広大なセットを生かした構図そのものに、渋い格好よさが宿っている。
幕開けからして、前作ラストの襲撃を逆再生で見せるという大胆な趣向で観客を引き込み、以降も白を基調としたアンブレラ施設、雪と氷に閉ざされた地上、都市を模した巨大セットと、ロケーションごとに画作りの方向性が明快に打ち出されていく。アクションの迫力に頼るだけでなく、「どこに人物を配置し、画面全体をどう見せるか」という設計への意識が随所にうかがえる映像だ。
エイダ・ウォンの赤い衣装をはじめ、白・黒・赤という強いカラーリングも、画面に鋭いアクセントを与えている。ストーリーの薄さは否めないものの、ワンカットを切り取ったときの格好よさに関しては、シリーズでも上位に挙げたい。
巨大な“テスト空間”が可能にした高速アクションツアー
本作を特徴づける最大の仕掛けが、東京、ニューヨーク、モスクワ、郊外の住宅地などを再現したアンブレラのシミュレーション施設である。
登場人物たちは現実の世界を移動しているわけではないため、東京で感染者と交戦したかと思えば、ほどなく別の都市へと舞台が移り、銃撃戦、カーチェイス、巨大クリーチャーとの死闘へと、場面は次々に切り替わっていく。本来であれば世界各地を移動するために欠かせない物語上の手続きを、実験施設という設定ひとつで大胆に省略してみせたわけだ。
その結果、映画全体はゲームのステージを順に攻略していくような小気味よいテンポを獲得している。歴代のキャラクターやクリーチャーを投入する舞台としても極めて都合がよく、シリーズ第5作ならではの“大集合アクション”を成立させる装置として練られた設定と言えるだろう。
大集合の楽しさと引き換えに、ストーリーとホラーは希薄に
しかし、この仕組みこそが映画の弱点にも直結している。レイン、カルロス、ワンといったすでに命を落としたキャラクターまでもがクローンとして復活し、さらにジル、エイダ、レオン、バリーなど、ゲームでおなじみの面々が一堂に会する。シリーズのファンにとっては「次は誰が姿を現すのか」という期待感が尽きず、その点は確かに楽しい。
ただし、これほど多くのキャラクターと戦闘を詰め込んだ代償として、物語はシリーズの中でもトップクラスに薄くなってしまった。筋立ては基本的に「施設から脱出する」という一本道に過ぎず、次のエリアへ進むたびに新たな敵が立ちはだかり、過去のキャラクターとの対決やクリーチャーとの攻防が延々と繰り返されていく。
テスト空間という設定そのものも、極端に言えば「次のアクションステージへ移動するための装置」として機能している場面が多い。大集合作品が背負いがちな宿命ではあるものの、登場人物が増えるほど一人ひとりのドラマを掘り下げる余地は失われ、鑑賞後の記憶にはストーリーよりも個々のアクション場面ばかりが強く刻まれる。
シリーズを重ねるごとに色濃くなってきたアクション路線も本作ではいっそう加速し、第1作が備えていた閉鎖空間の不気味さや、感染者にじわじわと追い詰められるホラーとしての緊張感は、大きく後退したと言わざるを得ない。
映像の格好よさ、軽快なテンポ、歴代キャラクターが一堂に会するお祭り感には確かな魅力がある反面、蘇ったキャラクターたちと次々に刃を交えるドタバタとした冒険に終始し、洗練された画作りとは対照的に、物語はあまりに浅い。もう一歩ドラマの領域まで踏み込んでほしかったと惜しまれる1作である。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起|アリス、アンブレラの巨大実験施設へ
アルカディアを襲撃したジル・バレンタイン率いるアンブレラ部隊に捕らえられたアリスは、海底に造られた巨大実験施設で目を覚ます。そこでは東京やニューヨーク、郊外住宅地などが再現され、T-ウイルス感染を利用したシミュレーション実験が行われていた。
脱出したアリスはエイダ・ウォンと合流。現在のアンブレラは人工知能レッド・クイーンに支配されており、ウェスカーは人類滅亡を阻止するため一時的にアリス側へ回っていると知らされる。
承①|ベッキーとの出会いと、死者たちのクローン
郊外エリアでアリスは、かつてアリスのクローンを母親として暮らしていた少女ベッキーと出会う。ベッキーは本物のアリスを母親だと思い込み、アリスも次第に彼女を守ろうとする。
一方、施設内にはレイン、カルロス、ワンら過去に死亡した人物たちのクローンが大量に配置されていた。味方側のレイン・クローンも現れるが、巨大リッカーに壁へ叩きつけられ、首を折られて死亡。さらにベッキーもリッカーに連れ去られてしまう。
承②|仲間たちの犠牲とベッキー救出
外部からはレオン、バリー、ルーサーらの救出チームが施設へ侵入する。エイダはアリスたちを逃がすため敵に捕まり、バリーは彼女を人質に取られながらも抵抗。仲間の脱出時間を稼ぐが、カルロスのクローンに撃たれて死亡する。
アリスは脱出よりもベッキー救出を優先し、単独でクローン製造区画へ。そこで大量のアリスのコピーを目撃しながらも、ベッキーを救出。巨大リッカーを爆破して脱出する。
転|ジルとの決戦、ルーサーの死
施設崩壊から逃れたアリスたちを、洗脳されたジルとレインのクローンが待ち受ける。レインはラス・プラガスを自ら投与して超人的な力を獲得し、ルーサーの胸を強烈な一撃で破壊して死亡させる。
アリスはジルと激闘を繰り広げ、胸に装着された洗脳装置を破壊。ジルを正気に戻す。さらに倒すことが困難なレインに対しては氷を撃ち抜き、海中へ落下させる。レインは水中の感染者たちに襲われ死亡する。
結|ウェスカーとの共闘、人類最後の戦いへ
生き残ったアリス、ベッキー、レオン、ジル、エイダらは、人類最後の拠点となったホワイトハウスへ到着する。
そこでウェスカーはアリスにT-ウイルスを再注入し、失われていた超人的能力を復活させる。レッド・クイーン率いる感染者軍団との決戦にアリスの力が必要だからだった。
かつて敵対していた者たちも同じ陣営に集まり、ホワイトハウスの外には無数のゾンビやクリーチャーが迫る。人類最後の戦いが始まろうとする場面で物語は幕を閉じる。
