映画『エミリア・ペレス』(2024)を紹介&解説。
映画『エミリア・ペレス』概要
映画『エミリア・ペレス』は、ジャック・オーディアール監督(『ディーパンの闘い』『パリ13区』)が、メキシコの麻薬カルテルのボスと彼を支える弁護士の運命を、ミュージカル、クライム、ドラマの要素を交えて描く異色作。女性として新たな人生を望むマニタスがエミリア・ペレスとして生き始めたことで、リタ、ジェシー、エピファニアら女性たちの人生が大きく交錯していく。出演はゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス、エドガー・ラミレス、マーク・イヴァニールら。第77回カンヌ国際映画祭で審査員賞と女優賞を受賞し、第97回アカデミー賞では助演女優賞と歌曲賞を受賞した。
作品情報
日本版タイトル:『エミリア・ペレス』
原題:Emilia Pérez
製作年:2024年
本国公開日:2024年8月21日(フランス)
日本公開日:2025年3月28日
ジャンル:ミュージカル/クライム/ドラマ/コメディ
製作国:フランス/ベルギー/メキシコ
原作:ボリス・ラゾンの小説『Écoute』を原案
上映時間:133分
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール
脚本協力:トマ・ビデガン/レア・ミシウス/ニコラ・リヴェッキ
製作:ジャック・オーディアール/パスカル・コーシュトゥー/ヴァレリー・シェルマン/アンソニー・ヴァカレロ
製作総指揮:ポリーヌ・ラミー
撮影:ポール・ギローム
編集:ジュリエット・ウェルフラン
作曲:クレモン・デュコル/カミーユ
振付:ダミアン・ジャレ
出演:ゾーイ・サルダナ/カルラ・ソフィア・ガスコン/セレーナ・ゴメス/アドリアーナ・パス/エドガー・ラミレス/マーク・イヴァニール
製作:ホワイ・ノット・プロダクションズ/ページ114/パテ/フランス2シネマ/サンローラン プロダクション
配給:ギャガ(日本)/パテ(フランス)
あらすじ
メキシコシティで働く弁護士リタは、優れた能力を持ちながらも不遇な日々を送っていた。そんな彼女のもとに、麻薬カルテルのボスであるマニタスから極秘の依頼が舞い込む。それは、過去を捨て、女性として新たな人生を生きるための計画を手助けしてほしいというものだった。リタの計画によってマニタスは姿を消し、数年後、エミリア・ペレスとして再びリタの前に現れる。過去の罪、家族への思い、そして救済への願いが絡み合う中、彼女たちの運命は思わぬ方向へと動き出す。
主な登場人物(キャスト)
リタ・モラ・カストロ(ゾーイ・サルダナ):大手法律事務所で働く弁護士。能力を正当に評価されずにいたが、麻薬王マニタスから極秘の依頼を受けたことで、人生の大きな転機を迎える。
エミリア・ペレス/マニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン):かつてメキシコの麻薬カルテルを率いていた人物。過去の自分を捨て、女性として新たな人生を歩み始めるが、家族や罪の記憶から完全に自由になることはできない。
ジェシー(セレーナ・ゴメス):マニタスの妻で、子どもたちの母親。夫が姿を消した後、新しい人生を送ろうとするが、エミリアの存在によって再び運命を揺さぶられていく。
エピファニア(アドリアーナ・パス):エミリアが過去の罪と向き合う中で出会う女性。エミリアの再生の物語に、愛と救済の側面をもたらす重要な存在。
グスタボ・ブラン(エドガー・ラミレス):ジェシーの恋人。
ワッセルマン(マーク・イヴァニール):マニタスの性別移行に関わる医師。マニタスがエミリアとして新しい人生を始めるための計画に関与する。
作品の魅力解説
『エミリア・ペレス』の大きな魅力は、麻薬カルテル、アイデンティティ、罪と救済という重い題材を、ミュージカルという大胆な形式で描いている点にある。犯罪劇でありながら、登場人物の心の揺れや欲望が歌とダンスによって表現され、現実的なドラマと寓話的なエンターテインメントが同居している。
物語の中心にいるのは、エミリアだけではない。リタ、ジェシー、エピファニアを含む女性たちの人生が交差し、それぞれが自分の居場所や愛、自由を求めていく。第77回カンヌ国際映画祭で主要女性キャストがアンサンブルとして女優賞を受賞したことも、本作が個人の物語にとどまらず、複数の女性たちの運命を描く作品であることを象徴している。
音楽面では、クレモン・デュコルとカミーユによる楽曲が物語を推進する役割を担っている。第97回アカデミー賞で歌曲賞を受賞した「El Mal」をはじめ、台詞では語りきれない怒り、後悔、解放への願いが音楽によって立ち上がる構成が特徴だ。
一方で、本作はメキシコ社会やトランスジェンダー表象をめぐって賛否も呼んだ作品である。その意味でも『エミリア・ペレス』は、単なる受賞作や話題作としてだけでなく、映画が現代社会の複雑なテーマをどのように扱うのかを考えるうえでも重要な一本といえる。
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