新作映画『KILL 超覚醒』を紹介&レビュー。
11月14日(金)より日本公開となった『KILL 超覚醒』は、ノンストップで疾走する寝台列車を舞台に、極限状況下の近接戦闘を描くインド発のバイオレンスアクションである。インド東部から首都へ向かう特急列車に総勢40人の強盗団が乗り込み、乗客を守ろうとする対テロ特殊部隊員アムリトが孤立無援の戦いに挑む。監督はニキル・ナゲシュ・バート、主演はラクシュ・ラールワーニー、共演にターニャ・マニクタラ、ラガヴ・ジュヤル。
『KILL 超覚醒』あらすじ
物語は、インド東部からニューデリーへ向かう寝台列車に、対テロ特殊部隊員アムリトと恋人トゥリカが乗り合わせるところから始まる。親族に関する複雑な事情があるとはいえ、互いを想い合うふたり。そこへ武装強盗団一族が現れ、乗客から金品を奪い始める。孤立したアムリトは列車内での死闘に身を投じ、やがて常軌を逸した覚醒へと踏み込んでいく。

『KILL 超覚醒』より © 2015 M&M Productions A/S, Studio Babelsberg, DCM Productions & M&M Mænd & Høns ApS
寝台列車を活かした近接格闘バイオレンス
寝台列車という”密室”を舞台にした、超残酷なバイオレンスアクション作品である本作。インドには豪快なアクション映画が数多く存在するが、ここまで徹底して”バイオレンスアクション”に特化した作品は稀だろう。その激しさは、インドネシアの傑作アクション『ザ・レイド』(2011年)を彷彿とさせる。

『KILL 超覚醒』より © 2015 M&M Productions A/S, Studio Babelsberg, DCM Productions & M&M Mænd & Høns ApS
寝台列車の構造そのものが戦いの舞台となり、車内に置かれたあらゆるアイテムが武器へと変貌するアクションシーンは、列車内での戦闘をコンセプトにした作品として独創性に富んでいる。緻密に計算された編集と撮影によって、限られた空間での近接戦闘が際立つ映像となっている。タイトルに『Kill』と冠されているように、敵への殺戮こそが本作の映像における真骨頂といえるだろう。
感情ほとばしる主人公に戦慄
ただし、ここで強調しておきたいのは、本作が単に“殺戮シーンを楽しむ”ような作品ではないということだ。では、なぜ“Kill”が始まるのか。それは主人公アムリトに最大の悲劇が降りかかり、感情の糸がプツンと切れた瞬間、日本版タイトルが示すとおりの“超覚醒”が訪れ、彼が敵勢力の皆殺しを決意するからである。怒りに火がついてから繰り出される暴力は、もはや敵を制圧するためのものではない。明確に痛みを与え、殺害することだけを目的としている。感情が爆発したアクションの演技は凄まじく、観客はその激しさに戦慄を覚えずにはいられない。

『KILL 超覚醒』より © 2015 M&M Productions A/S, Studio Babelsberg, DCM Productions & M&M Mænd & Høns ApS
劇場で体験したい迫力
一度感情が爆発してからは、そのテンションのままアクションが続いていくため、終盤になると観客も高揚に慣れ、やや落ち着いてしまう可能性はある。しかし、走り続ける寝台列車のように、感情とアクションがノンストップで観客を揺さぶり続ける映画体験は圧巻だ。この迫力は、ぜひ映画館で体感してほしい。
『KILL 超覚醒』は11月14日(金)より日本公開中。

『KILL 超覚醒』 © 2015 M&M Productions A/S, Studio Babelsberg, DCM Productions & M&M Mænd & Høns ApS
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
