新作映画『Mr. ノーバディ2』を紹介&レビュー。
あの“なんでもなかった男”が戻ってくる。10月24日(金)公開の『Mr. ノーバディ2』で、ボブ・オデンカーク演じるハッチの痛快な大立ち回りが再び幕を開ける。今回を一言で表すなら”家族バカンス編”といったところだろうか。“Mr. ノーバディ”は新たな舞台で、あのエンタメ性とギャップを存分に発揮してくれる。
『Mr. ノーバディ2』あらすじ
何者でもない男ハッチ(ボブ・オデンカーク)は、ロシアン・マフィアとの決闘から4年が経過。あの時焼失させた3,000万ドルを肩代わりした組織への借金返済のため、休日返上で任務をこなす日々を送っていた。一方、家族関係は崩壊寸前にまで悪化しており、その修復を兼ねて一家でバカンスを計画する。
だが、全米最古のウォータースライダーが売りの何の変哲もないリゾート地は、実は巨悪組織を率い、薬物と汚職にまみれた警官たちを支配する、一切容赦のない女レンディーナ(シャロン・ストーン)の密輸ルートだった。地元保安官との些細なトラブルが、あっという間に巨悪組織とのド派手な全面戦争へとエスカレートしていく……。

『Mr.ノーバディ2』より © 2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
レビュー
前作『Mr. ノーバディ』の魅力といえば、自由度が高く勢いに満ちたアクション、そして何ともいえない中年男の哀愁だった。本作でもそのアクションと哀愁はたっぷりと、いやむしろ増量されて帰ってきている。前作では「なんでもない一般人に見える主人公ハッチが、実は凄腕で無双アクションを繰り広げる」というギャップこそが最大の魅力だったが、続編となる今回、観客はすでにその秘密を知っている。では、作り手はどう勝負するのか。答えはシンプルだ——彼が強いことについては、もう開き直ってしまおう。冒頭からハッチはその能力をフル稼働させ、裏組織相手に堂々と活躍してみせる。
だが、本作が用意したのは別の試練だ。それは「家族サービスが思ったようにうまくいかない」という、極めて現実的な悩み。せっかくのバカンスも結局トラブルに巻き込まれ、再び戦闘モードへ突入せざるを得ない——この構図によって、“冴えない父さん×殺傷スキル”という落差が、再びくっきりと浮かび上がってくる。前作とは異なる角度から、同じギャップの味わいを引き出す手法といえるだろう。

『Mr.ノーバディ2』© 2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
では、アクション面ではどう差別化を図っているのか。前作がバリエーション豊かなアクションを見せつけたからこそ、続編へのハードルは自然と上がる。だが本作は、アミューズメント施設を主戦場に選んだことで、アクションに新たな魅力を付け加えることに成功している。たとえばゲームセンターのもぐらたたきマシーンを暴力シーンに取り入れるといった具合に、その場にあるものを即興的に武器へと変えていくアクションが実に痛快だ。
過激さとバカバカしさを同居させた作風はそのままに、遊び心に満ちた新しいアイデアが次々と投入されている。主演ボブ・オデンカークのコメディ感覚を巧みに活かした格闘シーンの設計も見事で、笑いと迫力を両立させる演出が随所に光っていた。

『Mr.ノーバディ2』© 2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
さらに特筆すべきは、悪役にあのシャロン・ストーンを迎えたキャスティングだ。並々ならぬ存在感とカリスマ性を遺憾なく発揮し、楽しげに狂気を纏った悪役を演じきる彼女のエネルギッシュな演技が、本作の後半を一気にヒートアップさせている。

『Mr.ノーバディ2』より © 2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
正直なところ、前作が持っていた“意外性”という最大の武器を失った分、あの時の新鮮な驚きを再び味わうのは難しいかもしれない。だが、展開の工夫、舞台の工夫、アクションの工夫、そしてシャロン・ストーンという強力な燃料の投下——こうした様々な工夫を重ねることで、本作は十分に盛り上がり、十分に楽しめる続編として成立している。
『Mr. ノーバディ2』は10月24日(金)公開。エンタテインメント性に優れた正統派続編を、ぜひ劇場で体感してほしい。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
