映画『ラブバード』(2020)を紹介&解説。
映画『ラブバード』概要
映画『ラブバード』は、マイケル・ショウォルター監督(『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』)が、破局寸前のカップルが殺人事件に巻き込まれる一夜を描くロマンティック・クライムコメディ。別れを決意した直後に殺人事件を目撃した男女が、容疑者と疑われる状況から逃れようと真犯人を追い、次々と騒動に巻き込まれていく。
『ビッグ・シック』でもショウォルター監督と組んだクメイル・ナンジアニと、イッサ・レイが主演し、共演にポール・スパークス、アンナ・キャンプ、カイル・ボーンハイマーら。2020年5月22日にNetflixで配信開始された。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ラブバード』 |
|---|---|
| 原題 | The Lovebirds |
| 製作年 | 2020年 |
| 本国公開日 | 2020年5月22日(Netflix配信開始) |
| 日本公開日 | 2020年5月22日(Netflix配信開始) |
| ジャンル | コメディ/サスペンス/恋愛 |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 87分 |
| 監督 | マイケル・ショウォルター |
|---|---|
| 脚本 | アーロン・エイブラムス/ブレンダン・ゴール |
| 製作 | トム・ラサリー/オリバー・オブスト/マーティン・ゲーロ/トッド・シュルマン/ジョーダナ・モリック |
| 製作総指揮 | イッサ・レイ/クメイル・ナンジアニ/アーロン・エイブラムス/ブレンダン・ゴール/マイケル・ショウォルター/ベン・オーマンド |
| 撮影 | ブライアン・バーゴイン |
| 編集 | ロバート・ナッソー/ビンス・フィリッポーネ |
| 作曲 | マイケル・アンドリュース |
| 出演 | クメイル・ナンジアニ/イッサ・レイ/ポール・スパークス/アンナ・キャンプ/カイル・ボーンハイマー/ニコラス・X・パーソンズ/アンドリーン・ウォード=ハモンド/カトリーヌ・コーエン/バリー・ロスバート |
| 製作 | パラマウント・ピクチャーズ/MRC/3 Arts Entertainment/Quinn’s House |
| 配給 | Netflix(米国・日本/配信) |
あらすじ
アメリカ・ニューオーリンズ。交際4年目を迎えたジブランとレイラニは、些細なことでも口論になる関係に疲れ果て、ついに別れを決意する。しかしその直後、ふたりの車に警察官を名乗る謎の男が乗り込み、自転車で逃げる男性を追跡した末に殺害してしまう。
事件の容疑者と誤解されることを恐れ、その場から逃げ出したジブランとレイラニ。無実を証明するため、被害者の携帯電話を手掛かりに真犯人を探し始めるが、行く先々で危険な人物や奇妙な事件に遭遇してしまう。別れたばかりのふたりは、互いへの不満を抱えたまま、一夜の逃避行を乗り切ることができるのか。
主な登場人物(キャスト)
ジブラン(クメイル・ナンジアニ):レイラニと4年間交際している男性。理屈っぽく慎重な性格で、恋人とは些細なことでも意見が衝突する。破局を決めた直後に殺人事件に巻き込まれ、混乱しながらも無実を証明しようと奔走する。
レイラニ(イッサ・レイ):ジブランの恋人。自己主張が強く、行動力のある女性。ジブランとの関係に限界を感じているものの、事件に巻き込まれたことで再び彼と協力せざるを得なくなる。危機的状況でも大胆な判断を下し、事件の真相を追う。
ひげの男(ポール・スパークス):警察官を名乗り、ジブランとレイラニの車を奪って自転車の男性を追跡する謎の人物。2人の目の前で殺人を犯し、平穏だった日常を一変させる。事件の核心に関わる存在。
イーディ(アンナ・キャンプ):殺害された男性の携帯電話に連絡先が残されていた女性。ジブランとレイラニが事件を調べる過程で接触する人物で、思いがけない騒動を引き起こす。
ブレット(カイル・ボーンハイマー):エディの夫。妻とともにジブランとレイラニの前に現れ、事件を巡る複雑な事情に関わっていく。
マーティン刑事(アンドリーン・ウォード=ハモンド):殺人事件を捜査する警察の刑事。事件に関わったジブランとレイラニを追い、騒動の真相に迫っていく。
作品の魅力解説・レビュー
王道の巻き込まれ型サスペンスを軽快に描くドタバタ劇
別れ話の真っ最中に殺人事件に巻き込まれるという、最悪のタイミングから始まる『ラブバード』。本作の魅力は、次々と予想外の騒動に遭遇する巻き込まれ型サスペンスの王道を、テンポの良いコメディとして楽しめることにある。警察に事情を説明することすら難しい状況で、素人のふたりが真犯人探しに乗り出す展開は、行動するほどに事態が悪化していくドタバタ劇そのもの。緊迫した状況にもかかわらず言い争いを続け、場違いな冗談まで飛び出すふたりの姿が、サスペンスに絶え間ない笑いをもたらしている。事件の構造や物語の展開にはジャンル特有の定型的な部分もあるが、複雑な謎解きよりも、予測不能な状況に放り込まれた男女のリアクションを楽しむ作品としての魅力がある。
「ぴったり」ではないからこそ見えてくる、2人の相性
本作を単なるドタバタコメディに終わらせていないのが、主人公カップルの関係性だ。ジブランとレイラニは、性格も物事の捉え方もまるで異なり、意見が一致することはほとんどない。一方が真剣なときや気分が沈んでいるときには、もう一方が冗談を口にする。一方が慎重になれば、もう一方が大胆な行動に打って出る。表面的には、“相性の悪いカップル”に映るかもしれない。しかし、そのちぐはぐさこそ、互いに欠けた部分を補い合っている証とも言えるのではないか。
事件によって否応なく手を組むことになったふたりは、互いへの不満を抱えながらも、それぞれの長所を生かし、協力して危機を切り抜けようとする。誰よりも意見の合わない相手が、誰よりも頼れる存在になる。その関係性の妙が、本作に独自の味わいを与えている。
恋人同士だからといって、考え方も反応も常に一致している必要はない。「一緒」であることや「ぴったり」であることだけが、相性の良さを決めるわけではない。軽妙な騒動の数々を通して、そんな恋愛観が自然と伝わってくる作品だ。
クメイル・ナンジアニとイッサ・レイの掛け合いが生む笑い
『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』に続き、マイケル・ショウォルター監督と再びタッグを組んだクメイル・ナンジアニ。何気ない会話から笑いを引き出す彼の軽快な演技は、本作でも大きな魅力となっている。
理屈を並べ立てながらも状況に振り回されていくジブランを演じるナンジアニと、勢いよく反論し、ときに大胆な行動へと打って出るレイラニを演じるイッサ・レイ。ふたりのテンションが噛み合わないからこそ生まれる独特の会話のリズムが、作品全体を心地よく弾ませている。危機的な状況にあっても言い争いは止まらず、かと思えば絶妙な連携を見せる。息の合った掛け合いはもちろん、あえて息が合わない瞬間にまで笑いが宿る点に、このコンビならではの面白さがある。
サスペンスとしての意外性や脚本の完成度については評価が分かれそうなところもあるが、主演ふたりの掛け合いが本作随一の見どころであることは間違いない。恋愛関係のすれ違いを、そのままコメディの推進力へと昇華させた一本だ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:破局寸前のカップルが殺人事件に巻き込まれる
交際4年目のジブランとレイラニは口論が絶えず、ついに別れを決意。しかし直後、警官を名乗るヒゲ男に車を奪われ、彼が自転車の男を何度も轢き殺す現場を目撃する。殺人犯と誤解されることを恐れた2人は、その場から逃走する。
承①:無実を証明するための逃避行
被害者の携帯電話を手掛かりに真相を追う2人は、エディという女性と夫ブレットに捕まり、拷問されかける。その後、被害者の手下だった若者たちに接触するが、再び現れたヒゲ男が若者たちを射殺。2人は間一髪で逃げ延びる。
承②:事件の裏に潜む秘密結社
被害者が富裕層の秘密結社「サクラリウム」の会員を脅迫していたことが判明。2人は仮面をつけて秘密の乱交パーティーに潜入するが、正体を見破られてしまう。絶体絶命のところに警察が突入し、2人は保護される。
転:明らかになる真犯人の正体
実は殺人現場は監視カメラに記録されており、警察は最初から2人を犯人と疑っていなかった。しかし、2人を送迎する警官の正体は、あのヒゲ男だった。彼は秘密結社に情報を流す悪徳警官で、脅迫ビジネスの仲間だった被害者を報酬を巡る裏切りから殺害していた。口封じされそうになった2人は協力して反撃し、レイラニがヒゲ男を銃撃。駆けつけた警察によってヒゲ男は逮捕される。
結:命懸けの事件を経て復縁する2人
一連の事件を通して互いの大切さを再認識したジブランとレイラニは、キスを交わして復縁する。1年後、2人はかつて参加を巡って言い争っていたリアリティ番組『アメージング・レース』に、仲良く挑戦している姿を見せ、物語は幕を閉じる。
