ルーカスフィルム社長キャスリーン・ケネディが、映画音響編集者協会MPSEのFilmmaker Awardを受賞する。
ルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディが、映画音響編集者協会(Motion Picture Sound Editors/MPSE)より、2026年のFilmmaker Awardを授与されることが発表された。同賞は、音響分野の専門家ではない立場から、音編集の重要性を理解し、映画表現に大きな影響を与えてきた映画人を対象とするものである。
MPSE Filmmaker Awardとは何か
MPSE Filmmaker Awardは、音響コミュニティの外にいながらも、音編集が物語や映像表現にもたらす影響を深く理解し、その価値を支えてきた人物に贈られる賞である。技術的な功績そのものではなく、音の力を尊重し、映画制作全体の中で重要な要素として位置づけてきた姿勢が評価の対象となる。
MPSE会長のデヴィッド・バーバーは、今回の受賞について「彼女の先駆的な仕事は、世界中の数え切れない映画制作者たちにインスピレーションを与え、支え、影響を与えてきた」と絶賛。
さらに、「彼女がスクリーンにもたらしてきた物語を通じ、その芸術と文化への影響は、今後も長く残り続ける」と述べ、ケネディのキャリアが世代を超えて映画文化に影響を与えてきた点を強調した。
ルーカスフィルムを率いて築いたキャリアと影響力
キャスリーン・ケネディは2012年よりルーカスフィルムに在籍し、同社を代表するプロデューサーとして映画制作とスタジオ運営の両面を担ってきた。2015年に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、長年休止状態にあったシリーズを再始動させ、全米興行収入9億3600万ドル、世界興行収入約20億ドルを記録。同作は現在も北米歴代最高興収作品として知られている。
その後もケネディは、スター・ウォーズ・シリーズを映画作品にとどめることなく、配信作品へと展開を拡張した。ジョン・ファヴローが手がけたドラマシリーズ「マンダロリアン」は、同フランチャイズをストリーミング時代へと導く代表的な成功例となり、世界観や物語性を保ちながら新たな視聴体験を提示した。
こうした取り組みは、視覚的なスケールや物語構造だけでなく、音響表現を含めた総合的な映画体験の構築を重視してきた姿勢とも重なる。MPSEが掲げる「音編集の影響力を理解し、尊重してきた映画人」という評価軸において、ケネディのキャリアはその象徴的な例のひとつといえる。
音の表現を極めた功績―マーク・マンジーニも同時受賞
今回のMPSEでは、キャスリーン・ケネディのFilmmaker Awardに加え、音響編集分野で長年にわたり顕著な功績を残してきた人物に贈られるCareer Achievement Awardが、サウンドエディターのマーク・マンジーニに授与されることも発表された。同賞は、卓越した仕事やサービス、リーダーシップを通じて、音響コミュニティに大きな影響を与えてきた人物を対象とする。
MPSE会長のデヴィッド・バーバーは、マンジーニについて「マーク・マンジーニは、真の意味で音の巨人たちのひとりである」と述べたうえで、「キャリア60年に及ぶ彼は、創造性、革新性、そして感情的な響きを備えたマスタークラスに存在する」と、その長年の歩みを称えている。
さらに、「彼の仕事は、物語において音が成し得ることの限界を、常に押し広げてきた」と語り、音響表現の可能性を更新し続けてきた点を強調した。
マンジーニは、『DUNE 砂の惑星』『ブレードランナー2049』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』など、音響表現が作品世界の没入感を左右する代表作を数多く手がけてきた。今回の受賞は、音そのものを物語表現の中核として追求してきたキャリアが、映画音響界から改めて評価された形となる。
両賞は、2026年3月8日にロサンゼルスのエベル・シアターで開催される、第73回MPSEゴールデンリール賞授賞式にて授与される予定である。
