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修道女 × ホラー映画6選-『死霊館のシスター』シリーズから最新注目作『IMMACULATE』まで

『IMMACULATE 聖なる胎動』© 2024, BBP Immaculate, LLC. All rights reserved. COLUMNS
『IMMACULATE 聖なる胎動』© 2024, BBP Immaculate, LLC. All rights reserved.

“修道女(シスター)×ホラー”な映画を6本紹介。


7月18日(金)より、シドニー・スウィーニー主演の話題作『IMMACULATE 聖なる胎動』が日本公開される。神に仕えるはずの修道女が、想像を絶する“聖なる計画”に巻き込まれていく衝撃作だ。

修道女という存在は、ホラー映画の世界でしばしば“神聖さ”と“背徳”のあいだに引き裂かれてきた。宗教的権威、純潔の象徴、そして抑圧された身体。そのすべてを背負う修道女は、恐怖と背中合わせの存在として多くの監督たちに描かれてきた。
ここでは『IMMACULATE』の日本公開を記念し、2010年代以降に登場した“修道女ホラー”の注目作6本を製作年順に紹介する。

『死霊院 世界で最も呪われた事件』(2017)-実話ベースの“悪魔祓い殺人”を追う

2005年にルーマニアで実際に起きた「タナク悪魔祓い事件」を基に、修道女の死とその背後に潜む超常的現象を描いた実録ホラー。悪魔祓いの儀式中に若い修道女が死亡し、神父と修道女たちが殺人容疑で逮捕される。事件を追って現地に赴いたアメリカ人ジャーナリスト、ニコールは、現地の修道院で次第に説明のつかない恐怖に取り憑かれていく。

『死霊院 世界で最も呪われた事件』©2016 Crucifixion Holdings, LLC. All Rights Reserved.

『死霊院 世界で最も呪われた事件』©2016 Crucifixion Holdings, LLC. All Rights Reserved.

脚本は『死霊館』や『アナベル』シリーズを手がけたチャド&ケイリー・ヘイズ兄弟、監督はザヴィエ・ジャン。実際の裁判記録や報道資料を踏まえつつ、報道と信仰、科学と超常の狭間で揺れる人間心理を描き出す。主演ソフィー・クックソンは、取材者としての冷静さと精神の揺らぎを体現し、リアリティある恐怖を支えている。宗教ホラーとしての重層性を持つ1本だ。

『死霊館のシスター』(2018)-“ヴァラク”の誕生を描くゴシックホラー

『死霊館』ユニバース初のスピンオフとして製作された本作は、1952年のルーマニアを舞台に、修道女の自殺事件とその背後に潜む悪魔的存在“ヴァラク”の起源を描く。調査に派遣された神父バークと修道女見習いアイリーンは、古びた修道院で封印された地下墓所に足を踏み入れ、やがて不穏な儀式と血の痕跡に包まれていく。

『死霊館のシスター』© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

『死霊館のシスター』© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

ロケ地には実在の修道院や中世の城が使われ、撮影前には司祭による“セットの祝福”も行われたという。監督のコリン・ハーディは、伝統的なゴシックホラーへの敬意を込めつつ、視覚的に印象的な“修道女の恐怖像”を作り上げた。全世界興収は3億6,000万ドルを突破し、同シリーズ屈指のヒット作となった。

『ザ・コンヴェント』(2018)-英国産、17世紀修道院の血塗られた儀式

17世紀イングランド。魔女として火刑に処されかけた若き女性ペルセフォネは、謎めいた修道院長に救われ、敬虔な修道女たちが暮らす修道院へと導かれる。だがその場所には、悪魔的な儀式と死者の呪いが渦巻いていた──。

『ザ・コンヴェント』より

『ザ・コンヴェント』より

本作は、特殊メイクアーティスト出身のポール・ハイエットが監督を務めた中世修道院ホラー。過剰な宗教的抑圧、女性同士の権力関係、死者の復活など、“修道院”という閉鎖空間の中で展開される狂気を、低予算ながら緻密な美術と特殊効果で描いている。主人公が次第に“血の儀式”に巻き込まれていく様は、宗教的救済の裏に潜む暴力性をあぶり出す。

修道女ホラーの中でも、特にダークでサタニックな異色作だ。

『死霊館のシスター 呪いの秘密』(2023)-再び目覚める“ヴァラク”の呪い

『死霊館』ユニバースの前日譚第2弾となる本作では、1956年のフランスを舞台に、前作から4年後の修道女アイリーンの新たな戦いが描かれる。かつて封印したはずの悪魔ヴァラクが寄宿学校に現れ、かつての仲間モーリスを通じて再び恐怖を広げていく。

『死霊館のシスター 呪いの秘密』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

『死霊館のシスター 呪いの秘密』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

監督は『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』や『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』を手がけたマイケル・チャベス。テスト上映で観客の反応を受け、ゴア描写や視覚的恐怖が大幅に強化された。修道女たちの祈りと力を合わせたクライマックスでは、信仰と超自然のせめぎ合いがより明確に描かれている。

視覚効果や美術面でも評価を受けた一方で、プロットの既視感やジャンプスケアに頼る構成には賛否も。とはいえ、宗教的象徴性とスケール感を両立した“王道ホラー続編”として、シリーズファンの期待に応える1作となった。

『オーメン:ザ・ファースト』(2024)-“アンチクライストの母”となる修道女

名作『オーメン』(1976)の前日譚として製作された本作は、ローマの修道院を舞台に、若き修道女見習いが“反キリスト誕生計画”の陰謀に巻き込まれるさまを描く。主人公のマーガレットは、信仰に生きる純真な修道女だったが、やがて自身が“選ばれし存在”として妊娠させられていることに気づき、激しく葛藤する。

『オーメン:ザ・ファースト』©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『オーメン:ザ・ファースト』©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

監督は本作が長編デビューとなるアルカーシャ・スティーブンソン。主人公を演じるネル・タイガー・フリーは、身体的苦痛と精神的恐怖を巧みに演じきり、観客の共感と戦慄を同時に呼び起こす。物語は、信仰、女性の身体、教会の権力構造といった重層的なテーマを内包しながら、ジャンル的には70年代イタリアンホラーの影響も色濃い映像で展開される。

出産、流血、裏切り、そして宗教的“神話”の構造が崩れていくラストは、現代のホラーとしても特異な衝撃を残す。クラシックホラーの精神を継承しつつ、新たな視点で宗教と恐怖を描いた意欲作だ。

『IMMACULATE 聖なる胎動』(2024)-“神の子”を宿した修道女の孤独な抵抗

アメリカからイタリアの片田舎の修道院へとやってきた若き修道女シスター・セシリア。信仰に身を捧げようとした彼女は、ある日“神の奇跡”として妊娠を知らされる。しかしその裏には、教会ぐるみで進められる狂信的な計画が隠されていた──。

【動画】『IMMACULATE 聖なる胎動』予告編

主演・製作は『ユーフォリア』『恋するプリテンダー』などで知られるシドニー・スウィーニー。信仰と純潔を体現する修道女役に挑み、ラストにかけての壮絶な出産と反抗の演技は「ワンテイクで血まみれになった」と本人が語るほどの鬼気迫るもの。監督マイケル・モハンは70年代イタリアンホラーへのオマージュを込めつつ、女性の身体、信仰、抑圧といった現代的テーマを正面から描いた。

終盤には宗教と科学、身体の自律と暴力というテーマが一気に爆発し、賛否を呼ぶ衝撃的な幕切れへと突き進む。修道女ホラーというジャンルを更新する、最も挑発的な1本だ。


修道女という存在は、祈り、信仰、純潔、そして犠牲、そして女性の身体や信仰をめぐる現実世界の抑圧構造をも映し出す鏡かもしれない。

『IMMACULATE 聖なる胎動』は、そうした修道女ホラーの系譜に新たな一撃を加える作品だ。修道服の奥に潜む葛藤と暴力、そして希望。その深淵を、ぜひ劇場で目撃してほしい。

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