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【映画レビュー『ネバーランド・ナイトメア』】パロディホラーの水準を上げた? クレイジーな新解釈ピーター・パン物語

『ネバーランド・ナイトメア』より © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved. REVIEWS
『ネバーランド・ナイトメア』より © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

ついにピーター・パンもB級ホラーの世界へ降り立った。『ネバーランド・ナイトメア』が11月7日(金)に公開され、ホラーファンたちに新たな刺激を届けてくれている。

『ネバーランド・ナイトメア』あらすじ

ロンドンで彼氏との新生活を夢見て、移住を計画していた大学生のウェンディ。しかしある日、弟マイケルが突然、何者かに誘拐されてしまう。その犯人は、かつて世間を震え上がらせた凶悪誘拐犯——ピーター・パンだった。

妖精の粉を注射して街中を飛び回り、子どもの誘拐と殺人を繰り返すピーター・パン。子どもも、大人も、次々と夢の国“ネバーランド”へと旅立たせていく。弟を救うため、ウェンディはピーターの潜伏先を突き止め、単身乗り込む。するとそこには、かつて弟と同じように誘拐され、薬物中毒に陥ったティンカー・ベル、そして右手にフックをつけた男の姿も……。

弟がネバーランドへ連れ去られてしまう前に、ウェンディはこの悪夢を止めることができるのか——?​​​​​​​​​​​​​​​​

“プーニバース”に吹く新たな風

『プー あくまのくまさん』『子鹿のゾンビ』に続く著作権切れ作品を扱ったパロディホラーとして、本作は「ピーター・パン」をホラー映画化した一作である。ピーター・パンといえば、大人になりたくない願望、夢の島ネバーランド、妖精のティンカー・ベル、そして“ロストボーイズ”と呼ばれる孤児たち——これらおなじみの要素を巧みに取り入れつつ、現実世界を舞台に展開するB級スリラーエンターテインメントとして高い完成度を誇っている。

『ネバーランド・ナイトメア』より © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

『ネバーランド・ナイトメア』より © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

ディズニーアニメでもおなじみのワニや、ピーター・パンの影といったモチーフも随所に顔を覗かせており、原作に対する造詣が深ければ深いほど、より一層楽しめる構造になっている。​​​​​​​​​​​​​​​​

著作権切れ作品のパロディホラーシリーズに関しては『プーニバース』というクロスオーバー作品が計画されていることも報じられており、下手にネバーランドを異世界として描いてしまうとクロスオーバーの実現が難しくなるのではないか、という懸念もあった。

しかし本作は、“ネバーランド”という概念を虐待のトラウマを抱えるピーターの現実逃避先として、そして子どもたちを誘拐・監禁する動機として巧妙に再解釈することで、現実世界と「ピーター・パン」の世界観を違和感なく融合させることに成功している。殺人鬼と化したプーや、怪物となったバンビとピーターが共闘(?)する日を想像すると、今から胸が高鳴る。

また、本作においては“フック船長”の要素がそれほど大きくはフィーチャーされていないこともあり、今後のクロスオーバー作品や続編でその設定が掘り下げられる余地を残している点も興味深い。​​​​​​​​​​​​​​​​

『ネバーランド・ナイトメア』より © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

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容赦ないスリル

そして、このようなB級ホラー/スリラーに期待するのは、やはりバイオレンス描写やゴア描写だろう。その点においても本作は容赦ない描写でホラーファンの期待に応えてくれる。犠牲者の数は『プー あくまのくまさん』などと比較しても多く、テンポよくバイオレンスシーンが配置されている。

さらに一度バイオレンスシーンが始まると、そこからしばらくはさまざまな痛みの描写で観客を楽しませてくれるため、全体を通して退屈することなく鑑賞できた。​​​​​​​​​​​​​​​​

このジャンルの作品にありがちな、味方陣営も敵陣営も視野が狭く危機感に乏しいところ、あるいは流血量の割になかなか命を落とさない点などは、ツッコミを入れながら楽しむのが正しい鑑賞スタイルだろう。

しかし、主人公であるウェンディが非常にタフでたくましく描かれていることもあって、ウェンディvsピーター・パン、さらにそこにマイケルやティンカー・ベル(本来のイメージとはかけ離れているが)を交えた乱闘シーンは、予想以上に派手でエンターテインメント性の高いものに仕上がっていた。​​​​​​​​​​​​​​​​

『ネバーランド・ナイトメア』より © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

『ネバーランド・ナイトメア』より © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

“今求められるB級ホラー”

ピーター・パンも謎多き人物として登場するが、彼にもまた暗く痛々しい過去があることが示唆されており、その背景設定を考察・予想しながら鑑賞する楽しみも用意されている。

著作権切れ作品を題材にしたホラーも数が増え、観客の目も肥えてきた今、B級作品といえどもこれくらいのクオリティは必要とされる時代になったのかもしれない。そんな中で本作は、B級パロディホラーに期待されるハードルをしっかりとクリアしつつ、最後までテンポよく楽しめる一作に仕上がっている。

『ネバーランド・ナイトメア』は11月7日(金)より公開中。​​​​​​​​​​​​​​​​あなたの夢が、またひとつ絶望に包まれる。

『ネバーランド・ナイトメア』メインビジュアル © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

『ネバーランド・ナイトメア』メインビジュアル © 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.

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