Disney+(ディズニープラス)が縦型動画とAI活用を軸に、AIネイティブ世代を見据えた新体験を計画している。
米ディズニーが、動画配信サービスDisney+(ディズニープラス)の強化に向けて新たな一手を打ち出した。同社は今後1年以内に、スマートフォンでの視聴を前提とした縦型動画体験をDisney+に導入する計画を明らかにしている。エンターテインメント作品のショートフォームに加え、ニュースやスポーツも含む構成で、モバイルを中心とした利用拡大を狙う。
この取り組みは、若年層、とりわけ「AIネイティブ世代」と呼ばれる新しい視聴者層の行動変化を強く意識したものだ。ディズニーは縦型動画と人工知能を組み合わせることで、従来の「見るだけ」の動画配信サービスから一歩踏み込んだ体験の構築を目指している。
ただし、米国で発表されたばかりのニュースであるため、日本での今後のディズニープラスがどのように変化するかはまだ確実なことは言えない。
Disney+が計画する縦型動画体験とは
ディズニーが構想する縦型動画プロダクトは、モバイル視聴を前提に設計された新たな体験だ。短尺コンテンツを中心に、同社が保有するエンターテインメント作品だけでなく、ニュースやスポーツといったライブ性の高いジャンルも取り込む。
この動きは、ESPNがアプリ内で導入した縦型動画機能「verts」に続くものでもある。ディズニーは、グループ全体で培ってきたライブプロダクトの強みをDisney+に統合していく考えだ。
プロダクトマネジメント担当エグゼクティブVPのエリン・ティーグはイベントの中で、「ESPNからABCニュース、Hulu Plus Live TVまで、当社のライブプロダクトをすばらしいものにしている最高の要素を、この統合された環境にすべて持ち込みたい」と語っている。さらに、「モバイルはDisney+をファンにとって真の日常的な目的地に変えるすばらしい機会であることを認識しており、まさにそれを実現するつもりです」と述べ、モバイルファースト戦略の重要性を強調した。
関心に応じて更新されるダイナミックな縦型フィード
Disney+で導入予定の縦型動画体験は、単なる短尺動画の集合ではなく、利用者の関心や行動に応じて進化するフィード型の構成を想定している。
ティーグは、「今後1年以内に、Disney+で縦型動画体験を導入します。必要なDisneyのショートフォームコンテンツがすべて1つの統合されたアプリに集約されることを想像してみていただきたい」と述べ、縦型動画をDisney+全体の中核に位置づける構想を明らかにした。さらに、「時間をかけて、さまざまなフォーマット、カテゴリー、コンテンツタイプのアプリケーションを探求しながら、これらの体験を進化させていきます」とし、段階的な拡張を前提としていることも示している。
フィードの更新方法についても言及があり、「スポーツ、ニュース、エンターテインメントなど、興味のあるコンテンツのダイナミックなフィードを、前回の訪問に基づいてリアルタイムで更新します」と説明した。視聴者はアプリを開くたびに、関心に即したコンテンツと出会う設計となる。
この仕組みは、受動的に作品を選択する従来型の動画配信サービスとは異なり、スクロールしながら発見する体験を重視したものだ。ディズニーは縦型動画を通じて、モバイル上での滞在時間や接触頻度を高めると同時に、ユーザーごとに最適化されたエンターテインメント環境の構築を目指している。
広告と制作領域で進むAI活用の強化
縦型動画体験の発表と並び、ディズニはプレゼンテーションの中で人工知能の活用を繰り返し強調した。とくに広告分野では、AI駆動の広告プランニングツールに加え、広告主がCTV対応の広告スポットを迅速に開発・展開できるAI動画生成ツールの存在が紹介されている。
プロダクトのデモでは、ディズニーの幹部であるトニー・ドノホー氏が、「これは単にAIモデルがクリップを作成するだけではありません」と説明した。さらに、「魔法は、我々が水面下で行っている作業と、人間による監視と想像力を備えた能力を構築する際に、ディズニーの技術的、創造的、運用上の専門知識を融合させることにあります」と述べ、AIと人間の役割分担を強調している。
ドノホー氏はまた、「我々は単一のエージェント型ワークフローで複数のモデルを連携させています」とし、制作工程におけるAIの使われ方にも言及した。「スクリプトを駆動し、ストーリーボードを作成するモデルがあり、オーディオや音楽を駆動する別のモデルがあり、そして動画を生成します」と説明し、それぞれの工程が連動していることを示している。
一方で、こうした自動化の中でも、「すべてがムード、トーン、スタイルに関するあなたのビジョンを考慮に入れ、あなたの監視と我々の監視のすべてを反映し、同時にIPを保護し、ガードレールとコンプライアンス要件を考慮します」と述べ、ブランドや権利保護を重視する姿勢を明確にした。ディズニーはAIを制作の代替手段ではなく、管理された環境の中で活用する加速装置として位置づけている。
OpenAIとの連携が示す今後のコンテンツ像
今回の発表では、ディズニーが人工知能を中長期的な戦略の中核に据えていることも改めて示された。AIはプレゼンテーション全体を通じた繰り返しのテーマであり、その背景として、ディズニーがOpenAIの動画生成モデルSoraに対し、多くのキャラクターや世界観を提供する契約を結んだことが挙げられる。この合意は、発表のわずか数週間前に明らかになったばかりだ。
ディズニーは、こうした取り組みを通じて生まれるユーザー生成コンテンツの一部を、将来的にDisney+へ導入する構想も描いている。既存のスタジオ主導の制作体制に加え、ファンが関与する新たな創作の形を模索していることがうかがえる。
ティーグは、「我々にとって、AIは加速装置。増幅装置です」と述べ、AIを人間の創造性に置き換えるものではないと強調した。そのうえで、「人間の創造性を尊重し、ユーザーの安全を保護しながら、よりインタラクティブで没入感のある新世代のファンダムを強化したいのです」と語り、OpenAIのようなパートナーとの協業が不可欠であるとの認識を示している。
ディズニーはAIを通じて制作や配信の効率化を図るだけでなく、ファンとの関係性そのものを拡張する手段として位置づけている。縦型動画やAI活用は、その入り口に過ぎないといえそうだ。
「見る」から「関わる」へ変化するエンターテインメント体験
ティーグ氏は、インタラクティブ性を次世代の視聴者にリーチするための重要な要素として位置づけている。彼女はジェネレーションアルファについて、「彼らは最初のAIネイティブ世代であり、興味深いのは、彼らがストーリーを自分たちに起こるものとして見ていないことです。その代わりに、彼らはより多くの主体性を期待しています」と語った。
さらに、「彼らはエンターテインメントとのインタラクションを期待しています」と述べ、視聴行動の変化に言及している。ティーグによれば、「ファンはもはや見るだけではありません。反応し、調査し、リミックスします」。たとえば、「父親と娘はマーベルの番組をただストリーミングするだけではありません。理論について議論するために一時停止し、スマートフォンで背景ストーリーを調べ、そして友人たちとクリップを共有しています」という。
ディズニーが縦型動画やAI、インタラクティブな要素に注力する背景には、こうした行動の変化がある。エンターテインメントを一方的に届けるのではなく、ファンが関与し、拡張していく体験へと対応することが求められていると考えているのだ。
日本のディズニープラスにどのように影響してくるかも含め、動向を見守りたい。
