ソニー・ピクチャーズが中国発トイブランド<ラブブ>の映画化権を取得し、開発初期段階の企画が始動した。
ソニー・ピクチャーズが、世界的な人気を集めるデザイナーズトイ<ラブブ>の映画化権を新たに獲得したことが報じられた。契約はまだ締結されたばかりで、監督や脚本、実写かアニメかといった制作体制は未定だが、成功すればフランチャイズ展開を視野に入れた大型企画となる見通しだ。現時点でソニー側からのコメントは発表されていない。
ラブブとは何か―中国発ブラインドボックスから世界的人気へ
香港出身のアーティストカシン・ルンが生み出したラブブは、北欧の森を舞台にした絵本シリーズ「The Monsters」に登場する小さな妖精モンスターだ。高く尖った耳とギザギザの歯が特徴で、外見は少し不気味ながらも“優しい心を持つ存在”として描かれる。
2019年に中国のトイメーカーPOP MARTが製造・販売を引き継いだことを機に知名度が急上昇し、アジアを起点に世界中で広く支持されるブランドとなった。
熱狂的ブームを生んだ仕組みとセレブリティの拡散力
ラブブの人気が爆発的に高まった背景には、POP MARTが導入したブラインドボックス形式の販売方法がある。中身が開封するまで分からない仕組みにより、希少種の存在や入手困難さが収集欲を大きく刺激し、オンライン市場や店舗では高額で取引されるケースも増えている。
2025年には、北京のオークションで高さ約131センチのラブブが約15万ドルで落札された例も報じられ、アート作品としての注目度も上昇した。
さらに、世界的セレブリティの影響も拡散を後押しした。BLACKPINKのLISAをはじめ、リアーナやキム・カーダシアンといった著名アーティストがバッグチャームやぬいぐるみを身につけた姿がSNSで広まり、TikTokやInstagram上で“アグリーキュート(日本でいうところのブサカワ)”なビジュアルがミーム的に共有されていった。東南アジアを起点にした人気はこの波に乗って世界規模へと拡大し、POP MARTの利益は前年から大幅に伸びたと報じられている。
玩具発の映画化が進む流れの中で広がる可能性
映画企画が進む背景には、近年強まっている“玩具から映画へ”という流れがある。2014年の『LEGO®︎ ムービー』は、事前のストーリーやキャラクター設定を持たない玩具ブランドから生まれた作品として高い評価と興行的成功を収めた。その後も『バービー』が世界興行収入で10億ドルを突破し、アカデミー賞に複数部門でノミネートされるなど、玩具を起点とした映画が確かな実績を示している。
こうした潮流の中で、ラブブが一過性のブームに留まるのか、あるいは映画化を契機に長期的なブランドへ成長するのかは、現時点では判断が難しい。ソニー・ピクチャーズによる今回の企画は開発初期段階だが、世界的ブームを背景にしたラブブがどのような物語として描かれるのか、続報が待たれる状況だ。
